FC2ブログ
元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第9回 税務会計の本質観(1) 法人税は何故損金不算入なのか?昔は損金算入時代もあった?!

「法人税の損金算入規定」
 武田昌輔監修、成道秀雄編、中央経済社、平成24年
法人税の損金不算入規定法人税の損金不算入規定
(2012/04/18)
不明

商品詳細を見る

[購入動機] 書名・内容
[コメント] 設立経緯や規定趣旨の変遷などのレビューが秀逸。H24の有難い本の一つ。
【今回の記事の目次】
 1. 法人税は何故損金不算入か?
 2. 「費用説」VS「利益処分説」~本書p164~p173の要約
 3. 昭和15年税制改正
 4. 感想等

1. 法人税は何故損金不算入か?
 本書は書名にあるように損金不算入規定、中でも「永久差異」である損金不算入規定を検討しようとものだそうです(本書序p1)。すなわち、「税務会計では永久的に損金算入を認めないということは、税務会計からの強力なメッセージ」であり、その解明等は、「税務会計の本質に迫る」ものという立ち位置から各規定を検討したもので、H21・22の税務会計研究学会特別委員会中間報告・最終報告としてまとめたものを、武田昌輔先生の監修の上、出版されたとのことです。(同p1)。
 
 その内容には大変興味を惹かれるものがいくつもありますが、「第8章 法人税額等の損金不算入規定」に意外?なことが記してあったので、今回取り上げたいと思います(尚、この第8章は、立教大学の坂本雅士先生が執筆されています)。
 
 法人税の各事業年度の所得計算において、法人税・住民税は損金不算入として取扱われます(法法38)。実務では当たり前にように損金不算入にしており、その理由など考えることも少ないと思います。一般書店で目にする書籍では、次の二つの理由が挙げられているものを多く見かけます。
(1) 所得処分説(利益処分説)
 法人税・住民税は本来その所得のうちから納付されることが予定されている(所得の性質に着目)。税率等も税込所得を基準として定められているため(金子宏著「租税法」など)。
(2) 所得波動説
 法人税・住民税を損金算入とすると、所得金額が減少し、循環的に波動が生ずる。これでは所得の変動以上に税収が年度によって変動し、租税政策上好ましくないため(谷口勢津夫著「税法基本講義」など)。
  山本守之先生の「法人税の理論と実務[平成24年版]」(中央経済社)では、この所得波動説を簡単な設例で説明しています。
第9回 図1
 
確かに、毎期30の課税の方が税収は安定する上に、取り分も多くなりそうですね。
 
 ただ、本書によれば、法人税の前身であった所得税法に規定する第一種所得税(法人所得税)までは、「費用説」と「利益処分説」間での論争が繰り広げられていたそうで、昭和15年税制改正により法人税法制定の機に、法人税額等の損金不算入規定が設けられたということです(利益処分説採用)。つまり、第一所得時代の明治32年(1899年)~昭和14年(1939年)までの約40年間は損金扱いであったということになります。興味深い話です。
 
2. 「費用説」VS「利益処分説」~本書p164~p173の要約
 日本における所得税の創設は明治20年(1887年)であり、当初は個人のみを課税対象としていましたが、明治32年(1899年)に法人税の課税が第一種所得(税率2.5%)として導入されます。同年の商法の準則主義採用を契機にしたようです。この際の所得税法第4条の条文は、下記の通りです。
明治32年所得税法第4条
 第一種ノ所得ハ各事業年度総益金ヨリ同年度総損金、前年度繰越金及保険責任準備金ヲ控除シタルモノニ依ル
 所得計算については、この規定のみで、その他の計算規定は置かれていなかったようです。そのため課税所得計算は商法上のPLに依存していくことになりますが、第一種所得税も租税という項目の一括りの中で、他の税目と同様、費用(損金)とされていたようです。
 損金算入時期は、納付事業年度の損金算入を原則としながらも、その取扱いが明示されておらず、当時は賦課課税ということもあり、課税庁側では、発生事業年度の見積による損金の控除も一部認められていたようです。
 当初は、第一種所得税の税収に占める割合も低かったので、素朴と申しますか、おおらかに取り扱っていたようですね。
 
 ただ、時代が所得税を中心とする租税体系への移行期に入ると、費用説への異論が散見されるようになります。議論が活発化したのが、大正時代の中頃―特に大正6年(1917年)以降だそうです。本書で紹介されている当時の議論の要点は下記のようになります。
第9回 図2
 ただ、これらの議論は平行線をたどり、集結を見なかったようです。
 
3. 昭和15年税制改正
 この年の改正は戦時体制化の改正であり、4大目標(①中央・地方の均衡、②経済政策との調和、③税収増と弾力性がある税制確立、④税制の簡素化)を掲げたものであったそうです。ここで法人税法が新設され、第4条第2項に次のように規定されました。
昭和15年法人税法第4条第2項
 法人ガ各事業年度ニ於テ納付シタル又ハ納付スベキ法人税及臨時利得税ハ前項ノ所得ノ計算上之ヲ損金ニ算入セズ
 当時の国会答弁でも櫻内大蔵大臣が下記のように趣旨説明しているそうです(S15.3.18貴族院本会議。p175)
「次に法人の所得の計算上、現行に比し二つの点において改正を加えることとしました。その第一は税金の控除に関してであります。御承知の通り、現行の第一種所得税につきましては、所得の計算上、所得税、臨時所得税等を損金とすることとなっているのでありますが、このような計算方法によりますと、法人の負担関係が至極明瞭を欠くのみならず、相当高くなった税率の下においては、税負担のために利益の著しい波動を生ずるような場合も生じますので、その際、法人税負担の適正明確を期するため、所得の計算上、法人税は損金として控除しないことに改めました。」 (以上、本書p175のカナ遣いを現代仮名遣いにしました。)
  本書では、「この改正により、法人の課税所得は相当増大することとなり、これはその後の税率引上げの余地を残すことができたという点で、弾力性がある税制を作るという昭和15年改正の趣旨に合致していたといえる」(p176)とし、沿革的には損金算入していた規定が不算入とされたため、この規定は創設的規定と見ることを相当としながらも、「費用説」対「利益処分」の論争経緯からも、確認的規定的なニュアンスも含まれるという説も紹介しています。
 また、立法趣旨としては、理論的な意味合いよりも、政策的立法であると指摘しています(p177)。
 
 そして、この法人税の損金不算入規定はシャウプ勧告前に定められたものなので、この制度の趣旨として法人税を所得税の前払として考えた場合に、個人所得課税において所得税が経費として認められないのだから、法人も損金の算入しないことが当然―というような議論にはならないと指摘しています(p178)

4. 感想等
 この本は非常に参考になります。これから、よく読み込んでいきたいと思います。
 法人税等の損金不算入規定については、当時の状況下では、増税の理由に使われてしまった感はありますが…。また、その裏面として「法人税の課税標準は税引前利益である」という根本的な変更であったような気がします。「波動説」も何故波動?と思っていましたが、国会(帝国議会?)でそのような答弁があったのですね。勉強になりました。 費目中で法人税額が一番金額が多いという会社さんも多いと思いますので、影響は甚大ですよね。
 この改正の狙い通り、計算が簡便となっていることは確かですね。現在でも、物税である事業税は税効果会計と受取配当等の益金不算入が絡んだ循環計算など面倒なところがありますし。
 また、個人的には、「利益処分説(所得処分説)」という言葉は、別表4の話よりも、別表5の話に非常に密接に絡んでくるように感じました。つまり別表5(1)の利益積立金下部の税額計算は一体何をしているのかと―それを絡めて次回はH24発売の「法人税の純資産」の気になるところを記してみたいと思います。
関連記事

テーマ : 会計・税務 / 税理士
ジャンル : ビジネス

2012-11-01 : 租税公課・別5 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

Pagetop
« next  ホーム  prev »
書籍・中古本購入サイト
Pagetop

プロフィール

kiyusama31

Author:kiyusama31
男性/神奈川県/乙女座/AB型

 ご訪問、ありがとうございます。
 税務・会計関係の『積読本』の山を崩したいと、日々研鑽中です。「書評」に至らぬ「感想文」レベルですが、長文(5,000字目途?)の記事を掲載していこうかと思っております。

※H25.9 税理士開業致しました!
飯田真之税理士事務所
http://iida-cpta.com/

応援よろしくお願い致します!


こちらはサイト用拍手です。
励みになります!
web拍手 by FC2

FC2カウンター

PR 中古本購入サイト他

カレンダー

08 | 2020/09 | 10
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ファイナンス
10位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
経理・会計
4位
アクセスランキングを見る>>

人気ページランキング

ミニ本棚(ブクログHPに飛びます)

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR