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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第10回 税務会計の本質観(2) 別表5(1)未納法人税の調整は一体何をしているのか。

「法人税の純資産」 法人税法施行令8条・9条の口述コンメンタール
 濱田康宏、岡野訓、内藤忠大、白井一馬、村木慎吾著、中央経済社、平成24年
法人税の純資産法人税の純資産
(2012/09/12)
濱田康宏、岡野訓 他

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[購入動機]書名と帯のコメント
[コメント]平成24年は面白い本ばかりですね。有難い本です。
【今回の記事の目次】
 1. 時期を同じくして施行令8条の本が2冊発売!
 2. 別表五(一)未納法人税の調理は一体何をしているのか?
 3. 別表4・5の検算式がなぜ成り立つのか(私見)
 4. 感想等

1. 時期を同じくして施行令8条の本が2冊発売!
 平成24年の時期をほぼ同じくして法人税法施行令第8条第1項各号ごとの解説をし、小口側にインデックス(印刷製本用語では「つめ」というらしいですが…)を付した書籍が2冊発売されましたね。1冊目は秋元忠人先生編法人税における資本金等の額―企業会計と法人税との調整(大蔵財務協会、H24.7)。2冊目が本書の「法人税の純資産 法人税法施行令8条・9条の口述コンメンタール」(中央経済社、H24.9)です。

 前者は、問答集形式ですが、施行令各号の扉に条文を掲載し、設例による会計仕訳、税務仕訳、別表調理が端的に示された処理確認のための書籍。実務のリファレンスとして活躍するであろうことが期待される本です。

 一方、本書は数値の流れというよりは条文理解について、施行令8条及び9条の各号に沿って条文の趣旨や考え方を、座談会形式の議事録のような体裁で記されたものです。本の帯にも「資本金等の額、利益積立金をネット座談会で読み解く」「結論だけでなく、思考プロセスを文書化」と印刷され、購買意欲をそそるもの。こちらは実務のリファレンスとしての用途のほか、読み物としてもOKです。この二冊を合わせて使えば鬼に金棒とばかりに、私の近所の大型書店では「抱き合わせ販売?」のごとく並べて平台に積んであります。
 
2. 別表五(一)未納法人税の調理は一体何をしているのか?
 この二冊の施行令8条の話は別の機会にさせていただくとして、注目したいのが本書の施行令9①一についてのやり取りの部分―別表五(一)の下部の未納法人税等の議論のところです。少し長いですが引用します。
 第10回 図1
本書P246より引用
(条文構造)
濱田 ところでこの条文では、留保していない額とマイナスして、受取配当等の益金不算入など社外流出のプラス項目だけを列挙していますね。どうして、このような構造なのでしょうか。単純に考えると、減算項目も列挙してもいいような気がするのですが。

岡野 それはできないのです。構造を考えてもらうとわかりますが、スタートが所得の金額であって会計上の利益の額でないので、このような計算しかできません。

村木 損金不算入項目は、所得計算の中ですでに含まれていますね。そのため、そのうち留保されていない部分だけを除けば、利益積立金の構成要素になる。ところが、社外流出した益金不算入額は、所得金額から除外されているわけですから、ここで別途加算してやらなければならないというわけです。
 第10回 図2


本書P248より引用
(ロ 受取配当の益金不算入等について)
内藤 つまり、所得計算上は課税されていないのですが、資産の流入があるので、課税済みの未分配利益額であると考えているのですね。仕訳の相手科目としては、利益積立金でよいかと。
 資産 100 / 利益積立金 100

岡野 実際には別表5(1)では、繰越損益金として表現されていますので、
 資産 100 / 次期繰越損益 100 と理解しておけばよいでしょう。

本書P256より引用
(未納法人税・住民税について)
濱田 まず対象としている税は法人税といわゆる法人住民税です。ただし、カッコ書きで法人税からは退職年金等積立金に対する法人税と還付加算金相当額が除かれています。つまり、ヌの対象となる法人税は、各事業年度の所得に対する法人税と各事業年度の所得に対する法人税です。我々が普通に法人税といっているものと考えればいいですね。

白井 法人税と法人住民税は納付すれば流出になりますので、利益積立金額が減少するのは当然です。何か特別な意味があるのですか。

内藤 注目して欲しいのは、「納付することとなる金額」という表現です。

岡野 納付していなくとも利益積立金から減少されるのですね。

内藤 そのとおりです。当期末における利益積立金の計算に当たって、当期に対応する法人税と法人住民税は、利益積立金の減少項目となるということです。

村木 これは、当期の所得に対する法人税と法人税住民税は当期末の利益積立金額に反映させるのが合理的という考えからでしょうね。

濱田 それはどうしてですか。

内藤 申告による租税債務の確定は翌期になりますが、流出することが確実なわけですから、当期末において、債務確定と考えているわけです。

村木 つまり、規定を置かなければ翌期控除となる法人税と法人住民税を、わざわざ、当期末における債務と認識しているものと理解しておけばよいですね。

白井 これに対し、事業税など損金に算入される租税公課は所得計算どおり、損金算入時期における事業年度で利益積立金額を減少させることになりますよね。事業税は、どうして債務確定分に取り込まなかったのでしょう。

村木 事業税は損金算入項目ですから、当期の損金に取り込んでしまうと、法人税など循環計算に陥ってしまうことに配慮したという考え方ができると思います。

濱田 納付していなくても利益積立金を減少させるということは、当然納付した時には利益積立金は減少しないのですね。

白井 それと、中間納付額がある場合における「納付することとなる金額」はいわゆる年税額のことを指すという理解でいいですよね。つまり、中間納付額が500あり確定申告により300還付される場合に200が納付することとなる金額ですね。

内藤 そうですね。年税額が同じなのに、中間納付の有無によって利益積立金額に違いがでるのはおかしいですからね。

※ 太字下線部は管理人が付けました。
 
3. 別表4・5の検算式がなぜ成り立つのか(私見)
非常に勉強になります。特に赤字の部分が含蓄があるなあ―と感じます。
私なりの理解で、この辺りの議論と別表五(一)で行われていることを記してみたいと思います。

(1)直感的な説明
会計ならば、株主資本等変動計算書にあるように、繰越利益剰余金の異動状況は、
繰越利益剰余金(当期末)=繰越利益剰余金(当期首)+当期純利益(税引後)
で表現されます。
一方、税務の利益積立金については、岡野先生がおっしゃる通り「スタートが所得金額」となっています。
同じようなことを法人税の利益積立金で考えると、 
利益積立金(期末)=利益積立金(期首)+所得金額(税引前)
となります。
もともと所得金額は、損金経理法人税、損金経理住民税や損金経理納税充当金は調整され、「税引前」の金額となっています。会計との平仄を合わせることや、元々これら法人税等が所得から支払われることを念頭に置かれているとすれば、「税引後」の金額で法人税法上の純資産額が増加していることが望ましい。村木先生のおっしゃるように「当期の所得に対する法人税と法人税住民税は当期末の利益積立金額に反映させるのが合理的」ということになります。そこで、
利益積立金(期末)=利益積立金(期首)+所得金額(税引前)納付することとなる法人税等
とした―ということになります。内藤先生のご発言通り「納付することとなる」というところがミソです。 岡野先生の言う「納付しなくても利益積立金が減少する」という制度の建て付けにした―ということです。
尚、この調整は別表4に連動する「所得金額」を通じて行われませんので、別5(1)単独の調整を入れることになります。

(2) 第9回の「利益処分説」を援用した説明
 違う側面として、
前回の「法人税の損金不算入規定」のときに触れました、法人税等の「利益処分説」を援用した形で説明してみます(前回の論点はシャウプ勧告前の議論ですが、今回は法人擬制説を用います。その点はご容赦下さい。)

 法人擬制説の立場に立てば、最終的には個人で課税されるものとして、(第一段階)法人課税、(第二段階)配当収受により個人課税という流れになります。

 ここで利益積立金は第一段階の法人税課税が「課税済み」で、個人への移転が行われていない利益である「課税済み留保金額」と言えます。とするならば、法人課税がされた段階での「利益積立金」が取り崩される場合の行き先は、国等(法人税等の支払)か、株主(配当)しかないということになります。つまり「利益積立金/現金」とされるのは、法人税支払いと配当のみというのが、前回の「利益処分説」の立場になります。

 そこで実際に税金納付の際(翌期)に「利益積立金/現金」としても良いのですが、内藤先生のおっしゃるように、「納付することとなる金額」を利益積立金から減算する法人税法上の建て付けにしたので、「利益積立金/未納法人税」と調整を入れる―というのが別表5(1)の末尾で行われていることです。これが岡野先生の言う「納付しなくても利益積立金を減少させる」ということになります。

 翌期に支払いが行われて会計で、その分の法人税額が流出したとしても、前期処理のReverse「未納法人税/利益積立金」が行われ、会計処理+税務調整で、濱田先生のおっしゃる通り「納付したときには利益積立金は減少しない」ということになります。
 
 税金の別表調理が別5単独調理で、別4を通して行われていないことがあまり意識されないのは、おそらく申告書作成ソフトでは別表5(2)を入力すれば、別表5(1)が自動転記されてしまうからですかね。
 ここで、別表5の欄外に記載されている検算式
期首現在利益積立金額+別表四留保金額又は欠損金額-中間分、確定分法人税県市民税の合計額=期末現在利益積立金額
は単に、「別表4に連動する金額(留保)+別表5単独調理のもの」の異動があるよ―と言っているにすぎません。つまり、税金の支払いも他の別表5だけで調整されるもの(合併により利積受入、みなし配当による異動、グループ税制の寄附修正等)と同列ということになります。

4. 感想等
 少し拙い「言い換え」になってしまいましたが、本書の法令9の議論となったときに、前回の「法人税の損金不算入規定」の法人税等の「利益処分説」が思い浮かんだので、つい書いてしまいました(もう少し整理しないとダメですね。反省です)。
 今年発売の書籍は、本当に勉強になるものが多いですね。ただただ感謝です。

 あと本書のカバーの見返しには、議論に参加した5人の先生方のお写真と事務所所在地などが書いてあります。
 最後の項目に「法人税法2条12号の9」「所得税法59条」「法人税法69条」…と条文番号が書いてありました。何のことかなと思ったら各先生の「好きな条文」だそうです…。随分とマニアックな感じですね。
 ちなみに私の好きな勘定科目は「現金」と「賞与」です。

【参考】税研情報センター/勘定科目占い
http://www.zeikenjc.co.jp/top/uranai/uranai_top.php


[脱字修正] 2012/11/5
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2012-11-02 : 租税公課・別5 : コメント : 1 : トラックバック : 0
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おめでとうございます
すごく質の高い記事の集まりですね。

官報見ました。
圧倒的な
能力が適正に評価されてうれしいです。

この度ごていねいにありがとうございます。
お顔拝見できず残念です。
2012-12-10 22:55 : 小池 康夫 URL : 編集
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プロフィール

kiyusama31

Author:kiyusama31
男性/神奈川県/乙女座/AB型

 ご訪問、ありがとうございます。
 税務・会計関係の『積読本』の山を崩したいと、日々研鑽中です。「書評」に至らぬ「感想文」レベルですが、長文(5,000字目途?)の記事を掲載していこうかと思っております。

※H25.9 税理士開業致しました!
飯田真之税理士事務所
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