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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第11回 税務会計の本質観(3) 適格組織再編成―課税が繰延べられる理由を知りたい!

「企業組織再編成と課税」
 渡辺徹也著、弘文堂、平成18年
企業組織再編成と課税 (租税法研究双書)企業組織再編成と課税 (租税法研究双書)
(2006/09)
渡辺 徹也

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[購入動機] 書名・立ち読み
[コメント] 良書だと思います。あまり根本的なところを考えたことがなかったので…。
【今回の記事の目次】
 1. 課税繰延の理論的基礎は何なのか―H12「基本的考え方」とアメリカ税法の影響
 2. アメリカ法の組織再編税制
 3. 「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」(2000年)
 4. 日米の各基準の比較検討
 5. 感想等

1. 課税繰延の理論的基礎は何なのか―H12「基本的考え方」とアメリカ税法の影響
 会計分野での企業結合等は、国際会計基準とのコンバージェンス推進との兼ね合いから、2006年、2008年、2011年等の改定の経て、日本基準で従来認められていた「持分プーリング法」は制度としては廃止され、「共同支配企業の形成」「共同支配下の取引」以外の企業結合については、「取得」としてパーチェス法を適用することとなりました(H22.4.1以後の企業結合より適用)。

 この2011年企業結合会計改正に対応して日本の法人税法での改正等を行うということは、特になかったようです。会計と同様に「取得」と「持分の継続」という概念をもっており、この二つの判断が相対的で難しいため、「対価の種類」と「支配」という観点から判定していくという「似たような」プロセスを持っていましたが、特に税法での概念構成を変えることはしませんでした。
 ※ 2006年あたりの議論については
第1回「組織再編成におけるのれんの税務」等参照。

 H13とH18の組織再編税制の税制改正で、割とガッツリとカタめたからなあ―と個人的には感じております。そのH13の導入時の「考え方」を示そうとしたものが、平成12年10月の税制調査会(政府税調)で報告された
「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」(以下「基本的考え方」)です。ただ、こちらを含めて我が国の組織再編税制は「多分にアメリカ法の影響を受けて作られている」(本書はしがきⅰ)とのことです。 この分野の研究者である渡辺徹也先生の、それまでの論文等の成果を再構成したものが本書になります。

 「実定法上の各要件の基礎となる課税繰延の理論的基礎とは何なのか、なぜそのような理由が必要なのか」「日本における課税繰延の理論的根拠を探り、それが実体法においてどのような形に現れているか」(本書p126)とあるように、大きなテーマを扱っているところが、本書に好感が持てる理由なのかな―と思っております。

2. アメリカ法の組織再編税制

 アメリカの組織再編税制は、1918年歳入法以来、90年以上の歴史を持っており、一般に組織再編成(reorganization)と呼ばれる取引は、原則として歳入法典(IRC)368条(a(1)(A)に規定されるA型組織再編成から368条(a(1)(G)に規定されるG型組織再編成までの7つに368条(a)(2)(D)及び(E)に規定する順三角合併と逆三角合併の9つとされています(p28)。

【参考】
(a) Type A : Statutory merger or consolidation
    (A型 州法に基づく吸収合併または新設合併)
(b) Type B : Exchanging voting stock for control of another corporation's stock
   (B型 株式交換)
(c) Type C : Exchanging voting stock for substantially all another corporation's property
   (C型 株式と資産の交換)  ※本書p126 税法における「事実上の合併」(州法上の合併でないもの)
(d) Type D : Transfer of assets to controlled corporation
   (D型 会社分割)
(e) Type E : Change in capital structure (recapitalization)
   (E型 資本の再編成)
(f)  Type F : Change in identity, form, or place of organization
   (F型 名称・形態・設立州等の変更)
(g) Type G : Insolvency reorganization
   (G型 破産・更生等による他者への資産の譲渡)
※米国公認会計士試験実戦問題集 ビジネスロー・税法、中央経済社、H17より

 これらが課税繰延とされる適格組織再編成となるためには、上記歳入法典(IRC)368条等の制定法上の各要件に加えて、以下に示す3つの判例上の要件―事業目的原理投資持分継続性(COI)、事業継続性(COBE)を満たさなければならないとしています(p31)。

(1) 事業目的原理(business purpose doctrine)
 適格組織再編成の要件として条文に明記されていない「事業目的」を要求する原理
 Gregory事件最高裁判決により示され、現在は財務省規則などに取り込まれている。

(2) 投資持分継続性(continuity of interest, COI)
 適格組織再編成において、旧法人株主は、当該旧法人に対して有していた一定の投資持分を、新法人においても継続しなければならないという考え方。現行法のいくつかの規定は、この考え方を反映。

(3) 事業継続性(coninuity of business enterprise, COBE)
 適格組織再編成といえるためには、取得法人(acquiring corporation)が対象法人(target corporation)事業内容を継続すべきであるという考え方。
 元来は歳入庁の見解。1961年Bentsen判決において否定されたが、その後変遷を経て、現行財務省規則には、取得法人が①対象法人の従前の事業(historic business)を継続するか、あるいは、②対象法人の事前の事業資産(histric business assets)の重要な部分を取得法人の事業に使用するかのいずれかを満たせば、COBEは満たさせるという内容となっている。         (本書p31-32)


3. 「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」(2000年)
 
一方、日本におけるH13組織再編税制導入に際しての基本方針は、本書「第5章 税法における適格合併」(p125~187)において、この「基本的考え方」の要点がまとめられています。

 適格組織再編成になると、法人段階(移転資産の含み損益課税)・株主段階(手放した株式の含み損益課税)の2つの課税繰延の扱いを受けます。その理論的根拠は、この「基本的考え方」中に示された 「支配の継続性」「投資の継続性」です。「基本的考え方」では次のように記されています。
「基本的考え方」第一(3) 本書p129より引用。下線も本書著者によるもの。
 会社分割・合併等の組織再編成に係る法人税制の検討の中心となるのは、組織再編成により移転する資産の譲渡損益の取扱いと考えられるが、法人がその有する資産を他に移転する場合には、移転資産の時価取引として譲渡損益を計上するのが原則であり、この点については、組織再編成により資産を移転する場合も例外ではない。

 ただし、組織再編成により資産を移転する前後で経済実態に実施的な変更が無いと考えられる場合には、課税関係を継続させるのが適当と考えられる。したがって、組織再編成において、移転資産に対する支配が再編成後も継続していると認められるものについては、移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べることが考えられる。

 また、分割型の会社分割や合併における分割法人や被合併法人の株主の旧株(分割法人や被合併法人の株式)の譲渡損益についても、原則として、その計上を行うこととなるが、株主の投資が継続していると認められるものについては、上記と同様の考え方に基づきその計上を繰り延べることが考えられる。
 「経済的実態に実質的に変更が無い場合には課税しない」という一種の「実質主義」により、法人段階の「移転資産に対する支配の継続性」、株主段階の「投資の継続性」が課税繰延の一般根拠になっているということです(p129)。そして、本書p129では次の点を指摘しています。
 もし、この理解が正しいとすれば、適格扱い(課税繰延べ)は優遇措置ではないことになる。組織再編成を促進するというよりは、むしろ課税によって不当に阻害してはならないといった趣旨であろう。したがって、組織再編税制とは、適格・不適格の選択を納税者の選択に委ねるべきでないといえる(本書p129-130)。
 だから、措置法でなく、本法で規定されている―ということになりますかね。本書で指摘もありますように、適格が有利と限りませんしね。


4. 日米の各基準の比較検討
  著者は「適格組織再編成に課税しない理由の根幹には、日米双方とも実質的の考え方がある」(p34)とし、「制度の核心部分について、両者は共通している」(同頁)と指摘しています。 

 また、米国では会社法は州法であるため、連邦法である税法が日本と違い依拠しづらい点(p42)や、日本側では、米国法では「従業者引継要件」はなく、日本法独特なもので、これが「移転資産に対する支配の継続性」や「株主の投資の継続性」にどう関わっているか不明瞭な点(p36)、また米国と違い日本が株主(特に個人株主)を前提とした議論が少ない点(株式継続保有要件も実は法人段階課税での議論)など(p37)など、日米の制度上の違いなどにも言及しています。

 以上の大枠を示したところで、著者の論点は、これがいかに日本国内法に具体的に適格要件規定に落とし込まれているかというところに移りますが、実定法上の適格要件のいくつからは「基本的考え方」は一致していないところがあり、「基本的な考え方」の内容には不明確な点があることを指摘しています(p158)。 例えば、 
・ 資産負債引継要件、従業者引継要件・事業継続要件は「支配の継続」から直接要請されるものではない。「組織再編成」と「売買」を区別するために設定されたものと読める(p132)。

・ 株式交付要件(金銭等不交付要件)も、同様に「売買」と区別の意識があり、「支配の継続」の審査と同義かどうかは明らかでない(p133)。

・ 事業関連性要件・事業規模要件・役員引継要件は、「支配の継続」から直接要請されるものではない。共同事業再編成になるための要件の設定のように読める(p134137)。

 別のところでは、

・ 事業規模要件と役員引継要件は、共同事業再編成の場合、どちらか一方を満たせば良いとされている。この2つの要件が相互に補完性を有するものか明らかでない。また、事業関連性要件を含めた3要件が、仮に租税回避行為の観点から設定されているとしても、具体的にどうのような租税回避を想定しているかは、条文から予測することは困難(p38

等の指摘をしています。


5. 感想等

 ただただ勉強させて頂きました―という感じです。私のようなウカツ者は、適用要件をただ諳んじては悦に入っておりました(H24税理士試験のことです)。そもそも何故、課税が繰延されるのか、また適用要件はその要請されるところに適っているのか―という本質的な話を考えたことがなかったので、参考になりました。本書でも引用がありましたが、金子宏先生の「租税法 第17版 (法律学講座双書)」でも「この分野におけるわが国の税制は急速にアメリカ税制に近づきつつある」とありますね(第17版ですとp403)。この辺りのことは本書の説明により、よく分かりました。「従業員継続要件」が日本独特なものという御指摘には―やっぱりそうでしたか…という感想です。日本の税法は雇用継続80%基準が本当に好きですよね(相続税の非上場株式等の納税猶予等)。 また、本書刊行後、H22にはグループ法人税制が導入されていますので、そちらを絡めて渡辺先生の御本が出版されたら、おそらく買ってしまうだろうな―と思います。
 次回は、この本を読んで、私が少し考えたことを記してみたい思います(※ごく簡単な論点整理です)。
 
[加筆修正] 2012/11/6
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