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第12回 税務会計の本質観(4) 組織再編税制は「できあがり」に着目!

「企業組織再編成と課税」
 渡辺徹也著、弘文堂、平成18年

企業組織再編成と課税 (租税法研究双書)企業組織再編成と課税 (租税法研究双書)
(2006/09)
渡辺 徹也

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[購入動機] 書名・立ち読み
[コメント] 些末なところより、大きな視点が大事ということですかね。 

【今回の記事の目次】
 1. 組織再編成の「できあがり」による論点整理

 2. 各組織再編成の「できあがり」 と税制改正
 3. 感想等


1. 組織再編成の「できあがり」による論点整理

 前回は、適格組織再編成は、「経済的実態に実質的に変更が無い場合には課税しない」という一種の「実質主義」により、法人段階の「移転資産に対する支配の継続性」、株主段階の「投資の継続性」が課税繰延の一般根拠になっているというお話でした。
 つまり、税務ではよくある話ですが、組織再編後の「できあがり」に着目している―ということになります。

 日本公認会計士協会が平成15年12月に公表した「組織再編税制の国際的側面について」(租税調査会研究報告第10号)のアメリカ税制についての言及においても、

 A型は「会社法上の合併」と定めており、私法に依拠した定義となっているが、B型、C型及びD型は再編の手続及び「できあがり」の着目して私法上どう取り扱われるかにかかわらず、税務上、一定の要件を基に「組織再編」として独自に定義している(p14)。
とあり、アメリカ税制への接近が顕著である日本の組織再編税制においても、その観点は踏襲されている可能性もあります。

 現に日本の法人税法においても第2条について「適格合併」「適格分割」「適格分割型分割」「適格分社型分割」等 は定義をおいていますが、「合併」「分割」等々については、「会社法上の合併」「会社法上の分割」といった表現は用いられておりません。内国法人、外国法人の区別もないため、外国の法律上の組織再編成も、日本の適格要件を満たす限り、日本の法人税法上の適格組織再編成として取り扱われる―という指摘もあります(新日本アーンストアンドヤング税理士法人著、「組織再編成の税務ガイダンス」、中央経済社、2007年、p313) 。

 また、
そもそもの平成13年組織再編税制の導入についても、「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」(以下「基本的考え方」)第一(2)において、
 企業組織再編成に係る法人課税のあり方を検討するに当たっては、以下の点から、現行の現物出資、合併等に係る税制を改めて見直し、全体として整合的な考え方に基づいて整備する必要がある。

 第一に、会社分割には、現物出資、合併等と共通する部分があり、例えば分割型の吸収分割と合併では法的な仕組みが異なるものの実質的に同一の効果を発生させることができる。同じ効果を発生させる取引に対して異なる課税を行
うこととすれば、租税回避の温床を作りかねないなどの問題がある。

 第二に、現行の税制においては、営業譲渡により企業買収を行う場合には、資産の時価取引として譲渡益課税が行われるが、他方、合併により企業買収を行う場合には、課税が繰り延べられるなどの問題がある。
とあるように、同一の経済的効果をもたらす取引について、異なる税務的な取扱いがあることを問題視しています。このような点は、正に「実質主義」の発想と言えますが、今回は、本書の内容を、再編後の「できあがり」による論点整理を簡単に行いたいと思います。


2. 各組織再編成の「できあがり」 と税制改正
 私が書いた簡単な例で申し訳ないのですが、まず組織再編成前の形を
第12回 image1 
とします。
これに、ごく単純なケースの再編成後の「できあがり」を示すと下記の通りになります。
 
第12回 image2 

 組織再編税制は、支配関係・完全支配関係の判定上は様々なプレイヤーが出てきますが、課税関係を考える段階になれば、「株主」「譲渡法人」「譲受法人」の三者が当事者(プレーヤー)となります。適格組織再編成においては、この三者間での「支配の継続性」「投資の継続性」を審査することになりますが、これらの、いわば「直列つなぎ」や「並列つなぎ」のパターンは、上図のような三者なりのヴァリエーションでしか現れないという形となります。

 また、会社法においては、現在では、分割型分割はなくなってしまったので、「分社型分割+現物分配」により行われますが、上図分社型分割のA社が保有するB株株式に現物分配すれば、分割型分割の形になります。

 ここで、上記の株式交換・株式は資産の移転が行われないのにかかわらず、組織再編税制に組み込まれています。これらはH18年税制改正において、措置法の課税繰延規定から、本法の組織再編税制の組み込まれたのですが、翌年5月から合併対価の柔軟化による三角合併が解禁になることが見えていたところにもよるのではないでしょうか。

第12回 image3 
【追加】上記の例は「被合併法人A社の資本金等の額=B社がA社株主に交付する合併法親人C社株式の帳簿価額」と仮定しての設例になります。 B社の増加資本金等の額=合併により受入れた資産及び負債の純資産価額(被合併法人A社の資本金等の額) -合併親法人C社株式の帳簿価額=0という仮定です。


 上図を見ればすぐにお分かりと思いますが、「できあがり」の形は株式交換と三角合併は同じようなものになります。「できあがり」が同じなのに、株式交換は旧措置法規定下では、本書p109の指摘にもあるように事業関連性を要求されていなかったため、異なる課税上の取扱いを受けることになります(現に三角合併解禁以前も、事業関連性要件回避のために、株式交換が選択された例もあるようです)。このような会社法の改正が見えていたため、、資産調整勘定等の大改正もなされたH18年税制改正に盛り込んだのであろうなと個人的には感じております。

 また、 H22年改正の適格現物分配も、「できあがり」という観点から見れば、合併と変わりはありません。大きな枠組みで考えて、適格組織再編成に組み込まれたと考えられます。


3. 感想等
  法形式等々の細かい点をいえば、株式交換・移転や現物分配は、果たして組織再編税制という枠組みに入れてしまっていいのだろうか―という疑問もなくはないのですが、「できあがり」という大きな枠組みの中での、実質性の見地から税制改正が行われてきたのだろうな―と思います。どうしても、組織再編成というのは合併処理や仕訳等の説明等に意識が行きますが、「入口」と「出口(できあがり)」というところが本質なので、このあたりの説明ができるように意識しなければならないとは常々感じております。
 とは言っても、やはり難しいですね(笑)。

[追加修正] 2012/11/7 三角合併・図に前提追加
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2012-11-06 : 組織再編成 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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