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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第14回 株式評価の周辺(1) 保有割合25%超でも株式保有特定会社に該当しないとした判決―その理由と近年の海外子会社株式の問題

実践解説 事業承継プロジェクト―問題解決の選択肢とケーススタディー
 KPMG税理士法人大阪事務所 清文社 2009
実践解説 事業承継プロジェクト―問題解決の選択肢とケーススタディ実践解説 事業承継プロジェクト―問題解決の選択肢とケーススタディ
(2009/09)
KPMG税理士法人大阪事務所

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[購入動機] 書名
[コメント] 比較的大規模な会社の事業承継の進め方や論点整理をした本。分かりやすい!

【今回の記事の目次】
 1. 東京地裁24.3.2判決―保有割合25%超でも株式保有特定会社に該当しない
 2. 株式保有会社の近年的問題―海外子会社(中国など)の業績が良い場合
 3. 中国会社の純資産価額評価-BSの土地使用権って何?
 4. 感想等

【参考】
国税速報 第6229号 平成24年9月3日
 「注目判例紹介 保有割合が25%以上でも株式保有特定会社に該当しないとした判決〔東京地裁平成24年3月2日判決(全部取消し)〕」

【参考
海外不動産の評価
 下﨑寛著 大蔵財務協会 平成20年
海外不動産の評価
海外不動産の評価
(2008/10)
下崎 寛

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1. 東京地裁24.3.2判決―保有割合25%超でも株式保有特定会社に該当しない
 こちらは判決当初も一部報道もありましたが、9月に入って国税速報、TKCローライブラリーでも判例の紹介がされています。国税速報第6229号によれば、本件では、大会社である評価会社の株式保有割合が25.9%の法人でしたが、「類似業種比準方式を用いるべき前提を欠く株式保有特定会社に該当するものとは認められない」(国税速報第6229号p8)という判断を示し、課税処分を全部取り消したというものでした。現在は控訴中であり、その控訴審の行方も注目されます。

 ここで、株式保有特定会社とすることの合理性についての議論が興味を惹かれました。

 この株式保有特定会社の規定が財産評価基本通達に設けられたのが平成2年のことになりますが、この当時、法人企業統計を基として算定された資本金10億円以上の全業種(金融業・保険業除く)の営利法人の株式保有割合は、

 平成元年度 7.38%
 平成2年度 7.88%
 であり、大会社25%として、一律に株式保有特定会社とすることに一定の合理性はあるように見えます。

 しかし、本件相続開始時(平成16年2月)までには、H9独占禁止法改正により持株会社が解禁され、旧商法でも株式交換・合併制度の合理化・会社分割創設など組織再編成のツールも揃ってきて、H2の評基通改正時の会社の株式の保有状況が大きく変化してしまいました。
 本件相続開始時を含む調査期間を含む平成15年の法人企業統計では同株式保有割合は、
 
 平成15年度 16.31%
となっており、大会社の株式保有特定会社の判定基準25%というのは、それほど高い数字には見えなくなってきた―ということのようです。
 
※営業権の超過利益金額の算式改正の際にも、似たような議論がありました。
第8回 営業権・のれん考(8) リーマン・ショック直前の評基通・営業権問題の検証
(2) H20財産評価通達の営業権評価方法の改正の項参照
 
 もっとも、こちらの会社さんは、総資産価額2,000億円、売上高1,800億円、従業員5,000名で上場会社に匹敵、ないしは、時価総額では上場会社を上回るぐらいの会社であったようで、原則的評価方式と特定会社の評価方式との評価額の開差を利用した租税回避行為を危惧するような状況でもなく、そのような実態面を総合的に判断した側面もなくはないとは思います。

【追加情報】 2013/4/17  
[追加] 第14回追加情報 平成25年4月2日 パブリックコメント募集~評基通189(2)改正!大会社株式保有割合「25%」→「50%」へ! 
 その後、H25.2.28東京高裁は、上記地裁判決を支持し、国側の控訴を棄却。国側も上告せず、判決が確定しました。これを受けて、国側は大会社の株式保有割合を50%とする財産評価基本通達改正のパブリックコメントを募集しています(H25.4.2~25.5.1)。詳しくは上記リンク先の記事をご参照ください。



2. 株式保有会社の近年的問題―海外子会社(中国など)の業績が良い場合
 こちらの記事を目にして、思い出したのが本書の海外子会社の業績が良い場合のケーススタディです。
 本社もグループ会社も順調に成長した結果、本社が大会社に該当してしまい、大会社として株式保有割合が25%以上となってしまったというケースです。特に海外に事業展開を行って成功を収めていることによって、結果的に日本の本社が株式保有特定会社に該当してしまったために、そのオーナー一族の事業承継での対応に苦慮しているというケースが近年増加しています(本書p24)
 
そういうことも有り得るのかなと―と思います。

 評価の側面でいえば、取引相場のない外国法人株式の評価は、類似業種比準価額の標本会社が日本の上場会社であることから、外国法人株式の評価について用いるには相応しくない―ということで純資産価額方式で評価されることになり、業績のよい会社の純資産価額は類似業種比準価額と比してかなり高額となる場合も多く、これも株式保有割合を大きくする要因の一つとなります。
 
国税庁HP 質疑応答事例 国外財産の評価-取引相場のない株式の場合(1)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hyoka/15/12.htm
 
 ただ、本書発行の頃には、かなり有望な対策が打てるようになりました。平成21年度税制改正の「外国子会社の配当等の益金不算入」と用いて、剰余金の配当を行い、海外子会社の純資産価額を減少し、株式保有割合25%未満をクリアして、株式保有特定会社を回避する―という対策です(p124~125)。かなり有望な対策ですね。
 
 ここで少し目配りしておかなければならないのが、剰余金の配当の類似業種比準価額への影響です。本書発行時(2009年8月)には取扱いが明確かされていなかったのですが、これは後年、国税庁HP質疑応答事例に取扱いが公表されました。
 
国税庁HP質疑応答事例 1株当たりの利益金額-外国子会社等から剰余金の配当等がある場合
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hyoka/07/08.htm
 
 結論的には、受取配当等の益金不算入と同様に処理します―ということになります。よって、この部分については、課税所得に足し戻して比準要素(1株当りの利益金額)を計算することとなりますね。とりあえず株式保有特定会社が回避できれば…といったところだと思います。
 
 また、外貨の換算方式は「1株あたりの純資産価額」を外貨ベースで算出した後に、TTBを用いて換算することを原則としています。ここでも株式保有割合を大きくするものとして「為替リスク」が存在することになります。本書でもこの部分は、予測できない部分がどうしても残ると記しています(p125)

国税庁HP 質疑応答事例 国外財産の評価-取引相場のない株式の場合(2)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hyoka/15/14.htm
 
そう考えると、配当をするにしても「実施のタイミングに注意が必要」(p125)ということになりそうですね。
 

3. 中国会社の純資産価額評価-BSの土地使用権って何?
  業績の良い海外子会社とは、具体的には中国の現地法人などを念頭に置いたお話でしょうかね。
 中国の会社のBSには、「土地使用権」というものが計上されていることがあります。中国は一応、社会主義国家体制ですので、土地そのものが所有できず、代わりに期限付きの土地使用権を取得するようです。
下﨑寛先生の「海外不動産の評価」(大蔵財務協会、平成20年)によれば、
 中国では「土地使用権」を取得し、土地を利用する。中国では「土地使用権価格」を一般に「土地価格」と呼んでおり、土地についての評価対象は「土地使用権」となる。
 土地、建物は別個の不動産として考えている。土地は原則国家の所有となっているため土地使用権として使用される。
土地使用権の区分  居住用土地 70年
             工業用土地 50年 (上海40年)
             商業用土地 40年 (上海20年) (「海外不動産の評価」、p48)
 
 上記のものが、会計上、償却されている―ということもあります。
 
 この土地使用費算定の目的のために、土地管理局による土地等級の制度があり、用途と地理的位置の相違により地価格差はあるようです。日本の公示価格にあたる「基準地価」を1986年から測定しているとのことです(p49)。
 
 評価については、日本の不動産鑑定士に相当する「土地評価師」という国家認定資格があるようで、こちらの方に評価を依頼して鑑定評価はして頂けるようです。
 「海外不動産の評価」p50によれば、
 一般的な手法としては、市場比較法、収益還元法、土地原価法が挙げられる。
など、地価は床面積地価/㎡×容積率で表現されるが、政府から使用権が譲渡された際に各地方の土地管理局が評価する価格が第一次市場価格となる。また、建物が付随した場合には、地価+建設費用・公共建設関連費用+市政関連費用+各種税負担、で不動産価格が形成されることとなる(p50)。
 
とのことです。難しいそうですね。
 
 中国会社の株式の純資産価額に評価に際しても、これらは一応売買の対象となる経済価値があるため、もちろん評価しなければならないのですが、財基通5-2(国外財産の評価)の注書きにあるように、課税上弊害がなければ、「取得価格×時点修正」の簡易なやり方も認められています。このときの価格変動のドライバーとして上記の「基準地価」が用いられればよいのですが、日本の公示価格制度と違って毎年改定されない?という話も聞きます。中国は相続税がない国でもありますので、その評価額の援用ということも難しそうですし…(固定資産税(房産税)の導入の話もどうなっていることか…)。想像もつかない話ですので、私には、かなりの勉強が必要そうですね。

国税庁HP 財産評価基本通達5-2(国外財産の評価) 
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/01/01.htm#a-5_2
 
4. 感想等
 上記のとおり、株式保有特定会社の問題は特に大会社の「25%」というところが、よく引っかかってしまうところです。しかも大会社ですから、大会社なりの複雑な状況になっており、さらに今日的には海外子会社の状況が絡んできますので、厄介なところです。
 
 さらに本書発行後ですが、平成22年税制改正において、非上場株式等の納税猶予について、もともと外国会社や医療法人が適用を受けることができないことに合わせて、認定会社が有する外国株式等の価額は、納税猶予の基になる税額の計算上は考慮しない―という改正が入りました(純資産価額では、その外国法人分の評価額を除外して、類似では比準要素の年利益C・純資産Dから外国法人分を除外するということらしいです)。となると、本税自体は「株式保有特定会社」の高い評価額で課税され、納税猶予の計算上は、計算ベースからは外国法人株式を除くため一般会社と判定され、「類似業種比準価額」の低い価額で納税猶予額が計算されてしまうという事態になってしまう???ということなんでしょうかね…。もしそうであるならば、非上場株式等の納税猶予の使いづらさに更に拍車がかかっているような気がしないでもありません。
 
 あと本書はこの論点の他にも興味深いご指摘が沢山ありました。特に経営承継円滑化法の援用も単に相続・承継対策というよりも、その際に検討した「事業承継計画書」などは結果的に適用しないことなっても、自社の問題を浮き彫りにする契機となれば経営にはプラスであるし、新経営者への「経営権の委譲」という面で重要なイベントとなる―という前向きな提案が良かったです。大手税理士法人さんの著作ということもあり、ここでいうプロジェクトも比較的大規模の法人さんを念頭に置いたものではありますが、勉強させていただきました。
 
 下﨑先生の本も、よくよく勉強させて頂きます。

[全文追加] 2012/11/9 ※記事が全文削除されてしまったため、再投稿しました。 
[追加記事] 2013/4/17 東京高裁判決およびパブリックコメント募集の追加記事のリンクを貼付しました。
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