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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第15回 株式評価の周辺(2) 類似業種の標本会社が判明!?―ドトールとスタバはどの業種でしょう?

新版 詳説/自社株評価Q&A              
 尾崎三郎監修、竹内陽一、掛川雅仁編著、清文社、平成21年

新版 詳説/自社株評価Q&A新版 詳説/自社株評価Q&A
(2008/12)
竹内 陽一、掛川 雅仁 他

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[購入動機] 書名・立ち読み
[コメント] かゆいところに手が届く本です。それより「付録」がインパクトあります。
【ブログ目次】
 1. 業種目別標本会社名簿?!
 2. この会社は類似業種では何業になるか?― ドトールとスターバック
 3. それでは業種目別標本会社名簿を当たってみました!
  【追記】 「純粋持株会社」の類似業種比準価額の業種目
 4. 感想等
【参考】
デューデリジェンスのプロが教える企業分析力講座
 山口揚平著、日本実業出版、2008年
デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座
(2008/10/09)
山口 揚平

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1. 業種目別標本会社名簿?!
 本書は著作陣が著名な先生ばかりで、取引相場のない株式の評価の細かいところまで配慮が行き届いた内容のある本です(例:持ち合い株式計算、資本金等がマイナスの場合の類似計算ほか)。実務の場面でも非常に重宝させていただいたものなのですが、初めて手に取り目を引いたのは、付録の「業種目別標本会社名簿」です。
 
 この「名簿」がどういうものかと言うと、国税庁が公表する「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」の計算の基になっている上場会社(評基通182)のリストになります。
 
 前回の日本標準分類の改定(第12回。H20.4施行)により平成21年分の業種目の見直し等があった場合に公表された「類似業種比準価額計算上の業種目及び類似業種の株価等の計算方法等について(情報)」(H20.6.9)の「2. 類似業種の株価等の計算の基となる標本会社」において、その対象となる会社を次のようなものとしている―との説明があります。
(1)金融商品取引所に上場しているすべての会社(内国法人。(2)を除く)
 東証(一部・二部・マザーズ)、大証(一部・二部・ヘラクレス)、名証(一部・二部・セントレックス)、福証(福岡、Q-Board)、札証(札幌、アンビシャス)、ジャスダック(JASDAQ、NEO)  ※平成20年当時

(2)標本会社から除外する会社
 イ H20年中に上場廃止が見込まれる会社
    …毎日最終価格の各月平均が12月まで求められないため
 ロ 前年中途(H19.2以降)に上場した会社…前年平均株価が求められたいため
 ハ 1株当たりの配当金額、1株当たりの年利益金額及び1株当たりの純資産価額の
   いずれか2以上が0又はマイナスの会社…比準要素の過半を欠く会社は不適当なため
 二 資本金等の額が0又はマイナスの会社
    …これらの会社を標本に含めることは不適当なため
 ホ 設立後2年未満の会社…1株当たりの配当金が2年分の配当データを要するため
 【参考】
国税庁H20.6 類似業種比準価額計算上の業種目及び類似業種の株価等の計算方法等について
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hyoka/080609/01.htm
 
 その標本会社の一覧が本書の付録として掲載されていました。例えば卸売業から抜粋すると、
第15回 image1
 
というような感じです。上段の会社数は39ありますが、標本会社は30とあります。おそらく会社名の前に“*”が付されたものが、上記の理由などより標本会社から除かれた会社ではないかと推察します(管理人が赤字にしています)。
 
 これは国税庁の中の資料ではないのか…と思ったのですが、本書p18によると「業種目別標本会社名簿は、情報公開法による行政文書開示請求(請求先 国税庁)により入手できます」とのことです。その手続きに従って入手されたようです。
 
 そんな方法があるとは露知らず…。ネットで見てみると国税庁HPに手続きの仕方が掲載されていました。

【参考】
国税庁HP 情報公開 開示請求の手続き

 しかし、このリストはこの後出版物としては目にしませんが、不開示になってしまったのかしら…誰か、またやってくれると良いのですがね(自分でやれと言われそうですが…)。

※業種目の標本会社の具体的な数値データの不開示については第16回「2. 類似業種比準価額の本質を争った事例―神戸地裁S55.4.18判決」の「1」の裁判所の判示をご参照下さい。

※【追加2013/1/9】追加情報 三訂版/自社株評価Q&Aが2012年末に発売されました!
【追加】第15回 追加情報 「自社株評価Q&A」の三訂版発売!―標本会社数約400社減少です
 

2. この会社は類似業種では何業になるか?― ドトールとスターバック
 このようなリストがあるのなら、「この会社はどこに入るのかな?」と気になっていたものがありました。
 
 今日の企業分析でよく比較される、ドトールとスターバックです。私が大学生の頃は「ダイエー対イトーヨーカドー」が定番でしたが、時代の流れを感じます。
 
 現在、ドトールコーヒーは上場廃止され、持株会社のドトール日レスホールディングスが上場していますので、ドトール事業単体のデータなどで直接比較できないのですが、よく売れていた山口揚平著「企業分析力養成講座」(日本実業出版社、2008年)には、ちょうど統合直前の状況で両社の比較をしています。今読み返すと、数値のいくつかの根拠(一体いつ決算の利益?)が分からないラフな作りの本なので、決算短信を取り揃えると、どうやらドトール統合直前のH19.3期の数値らしいので、再構成してみますと次の通りになります。
 
第15回 image2
ドトールコーヒー 決算短信(連結) H19.3期
http://www.doutor.co.jp/ir/jp/report/tanshin/19/200704_ann_cons.pdf
 
スターバックス・コーヒー・ジャパン 決算短信(非連結) H19.3期
http://www.starbucks.co.jp/assets/images/ir/images/library/000062007.pdf
 
 この期は両社とも、営業利益以下の売上比率がほぼ同じで、最終の当期純利益もそろって3.2%ですが、売上原価と販売管理費の率の構成が全く異なります。この辺りのことは有名ですからご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ドトールが「卸売業」で、スタバが「飲食業」だからです。
 「企業分析力養成講座」p30では、スタバはほぼすべての店舗が直営店で、ドトールはフランチャイズが主体であると記されています。これは現在のドトールHPの店舗構成(H24.9時点でFC1,079店、直営323店。直営の約半分がエクセルシオール)でも、変わっていません。
 
ドトールHP ドトールグループ総店舗数
http://www.doutor.co.jp/about_us/ir/report/fcinfo.html
 
 現在(H24.2期)のセグメント情報の説明では
 「カフェ事業」は、直営店におけるコーヒーチェーンを経営しており、コーヒー豆の仕入れ、焙煎加工及び店舗における販売までを事業活動として展開しております。

 「卸売事業」は、主にフランチャイズシステムによるコーヒーチェーンを経営しており、コーヒー豆の仕入れ、焙煎加工の上、フランチャイズ加盟店への卸売りやロイヤリティ等の収入、また、コンビニエンスストア等へのコ-ヒー製品の販売を事業活動として展開しております。
 とあります。
 
  つまり、ドトールは、直営の「飲食業」主体でなく、フランチャイズに下ろす仕入商品の販売が主体ということ意味で「卸売業」ということになります。実際、ドトールの東証の業種区分も「卸売業」でした。
  このH19.3期の連結のセグメント情報によれば、上記のドトールの売上68,596百万円の構成は下記の通りになっています。
 小売事業    27,788百万円(40.5%)
 卸売事業    41,232百万円(60.1%)
 その他     1,124百万円(1.6%)
 消去又は全社 ▲1,549百万円(▲2.2%)
 ここまで、売上原価・売上総利益の数値の違いは、「飲食業」と「卸売業」の違い―ということは読み取れましたが、販管費の数字の違いは何でしょうか。これはスタバ側に外資系企業の特徴がある―ということによります。

 「企業分析力養成講座」p31によると、当時のスタバは、米国本社(親会社)との関係がもたらす業績配分の問題があり、①ライセンス料、②出店ノルマ、③利益還元の問題を抱えていたということらしいです。有報にも、このライセンス条項の記載があり、売上の5.5%が設定されているとともに、それに上乗せした手数料も発生。また米国本社との間に「出店ノルマ」契約があり、この時期は出店を急ぎ過ぎているのではという報道もあった程なので、収益性が悪くなっているのかもしれません。また、コーヒー仕入先なかりでなく、コーヒーカップ等も米国本社経由のため、ライセンス料とともに販売管理費を大きくさせていた―ということのようです(p35)。

3. それでは業種目別標本会社名簿を当たってみました!
 少し話が脱線しましたが、この2社がこの標本会社リストでどの業種に収まっているのか、当たってみました。 本書はH16版にH15年分の標本会社、H21版にH19年分の標本会社が掲載されていますので、各々について調べてみました。
スターバックス・コーヒー・ジャパン
 平成15年分 
  業種番号90(小売業>飲食店業) 標本会社数38社 
 平成19年分 
  業種番号89(小売業>飲食店業) 標本会社数75社

ドトールコーヒー
 平成15年分 (統合前:ドトールコーヒー) 
  業種番号15(製造業>食料品製造業>その他の食料品製造業) 標本会社数106社
 平成19年分 (統合後:ドトール日レスHD)
  業種番号116(その他の産業) 標本会社数3512社
                     (※このその他産業は、全標本会社の数)
 類似業種の標本会社としては、ドトール(統合前)は、コーヒー豆をただ卸していたとは見ていなかったようですね。確かにロースター企業として見れば加工はしているとは思いますが…(H15のこのカテゴリーには、日清製粉グループ本社、サッポロビール、伊藤園、味の素等が区分されています)。

 統合後はもはや「純粋持株会社」と見られていて「事業持株会社」
とは見られていなかったので、「その他の産業」(全産業の平均)と区分けされたと想像します(H19のこのカテゴリーは、日清製粉グループ本社、サッポロビールHD、日興コーディアルグループ、KDDI、よみうりランドなどが区分されています)。

 あと、ドトール日レスが区分された「その他産業」は、どうも標本会社の全数の平均のようです。とするとH15標本会社2,239社からH19標本会社3,512社となっていますので、1,273社(+56.9%)も標本会社が増えているということになります。

【加筆】「純粋持株会社」の類似業種株価の業種区分(私見) 2012/11/21
 平成21年分以後の類似業種株価については、「日本標準産業分類」の第12回改定(H20.4)を受けて、業種目が改正されています。この「日本標準産業分類」の改定では、統計データの継続性、統計利用上の利便性の向上を図るなどの観点から、これまで企業グループ内の主たる経済活動と同一としていた「純粋持株会社」を分離して、小分類「経営コンサルタント業、純粋持株会社」及び細分類「純粋持株会社」を新設されています。

(参考)統計局ホームページ
http://www.stat.go.jp/index/seido/sangyo/19-1.htm

ここで日本標準産業分類の分類項目と類似業種の業種目対比表で、728の「純粋持株会社」はどのような記載になっているかというと

【会社規模区分】 小売・サービス業
【類似業種目】 105 専門サービス業(純粋持株会社を除く)

と記されています。

(参考)国税局HP
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hyoka/090608/02.pdf

純粋持株会社は、大抵は株式保有特定会社になるので、類似業種のインパクトは少ないと思いますが、それでもS1+S2計算があり、使わないわけではありません。上のように「専門サービス業(純粋持株会社を除く)」と記されてしまうと、どうしたものか…と悩んでしまいます。

私見ですが、下記のような考え方から、今のところ「その他の産業」でいいのではないかと思っております。

(1)他の業種目の用例からの類推
(2)平成19年分の標本会社からの類推


(1)他の業種目の用例からの類推
 純粋持株会社のように業種目対比表で「○○業(△△は除く)」とあるものが、あと3業種あります。「4 建築工事業(木造建築工事業を除く)」、「109 食堂レストラン(専門料理店を除く)」と「117医療、福祉(医療法人を除く)」です。
・ 木造建築工事業は、日本標準産業分類上も、「064 建築工事業(木造建築工事業を除く)」、「065 木造建築工事業」と区分されていますので、類似業種上は図の構成上からも「5 その他の総合工事業」が受け皿の類似業種目となっていることが推定されます。
・ 専門料理店は「110 専門料理店」と別の独立した類似業種目が設けられており、受け皿の業種目となっています。
・ 一方、医療法人は特に独自した類似業種目は設けられておらず、図の構成上からも、隣接業種目に受け皿の類似業種目があるわけではありません。
 医療法人はもともと上場しているものもありませんが、「その他産業」で類似業種を適用されることが一般です。この用例に従えば、「純粋持株会社」は、隣接業種に受け皿となる業種もなく、さらに独自した単独の類似業種目も設けれていないため、医療法人の扱いと同様に「その他の産業」として差し支えないのでは―と個人的には感じております。

(2)平成19年の標本会社表からの類推
 一代前の業種目分類なのですが、本書の平成19年の「その他産業」の標本会社には上述のようにドトール・日レスが区分されています。他にも本書pp412~413の2頁の中途まででも

マルハニチロホールディングス、ウエストホールディングス、サムシングホールディングス、国際石油開発ホールディングス、ジェイオーグループホールディングス、コムシスホールディングス、ビーアールホールディングス、日清製粉グループ本社、ユナイテッド・テクノロジーホールディングス、フジスタッフホールディングス、EJホールディングス、SJホールディングス、オックスホールディングス、夢真ホールディングス、SBSホールディングス、総医研ホールディングス、ウェッジホールディングス、塩見ホールディングス、ヒューマンホールディングス、博報堂DYホールディングス、バルクホールディングス、ACKホールディングス、サッポロホールディングス、寳ホールディングス、カワニシホールディングス、日本マクドナルドホールディングス、JPホールディングス、アルフレッサ・ホールディングス、DCMジャパンホールディングス、あいホールディングス、マツモトキヨシホールディングス、富士紡ホールディングス、プロジェ・ホールディングス、野村不動産ホールディングス、三交ホールディングス、JFE商事ホールディングス、リンク・セオリー・ホールディングス、セブン&アイホールディングス、三協立山ホールディングス、ワコールホールディングス、特種東海ホールディングス、豆蔵OSホールディングス、ジェイ・エスコムホールディングス、SRAホールディングス、アーティストハウスホールディングス…(この調子で、本書p415まで続きます。詳細は本書をご参照ください。)

の純粋持株会社と思しきものが、ここに業種目として掲載されています。上のドトールが、事業会社から持株会社化した際に、この区分に移されたように、この区分に純粋持株会社の標本会社が区分されているものと推定されます(もちろん平成21年以降分の標本会社一覧を入手しなければ正確なところはわかりませんが…)

※【2013/1/9追加】 2012年末に三訂版の自社株評価Q&Aが発売されていますので、そちらをご参照頂ければと存じます。
【追加】第15回 追加情報 「自社株評価Q&A」の三訂版発売!―標本会社数約400社減少です

もし、こちらをお調べで当ブログにお立ち寄りでしたら、御参考になれば幸いです。
(「純粋持株会社 類似業種目」などのキーワード検索のアクセスが突出していたので、追加加筆しました。) 


4. 感想等
 このようなことをわざわざ確認したくなるのは、理由があります。「業種って、そんなに客観的に定まらないんじゃない?」という実感があるからです(日本標準分類の建前があるとしてもデス)。実際の類似業種比準価額を計算する際に、評価会社の業種の判断に非常に迷うケースが、少なからずあります。上述の例は、標本会社の中の話でありますが、こちらのリストを見ただけでも、「?」と思える業種目の会社もあり、見た目だけでは分からない部分もありますが、業種株価Aが異なるだけで、類似業種比準価額は全く異なる評価額になりますので、本来は相当慎重に見なければならないところなのでしょう。

 また、別の話ですが、大会社の該当するような会社では、非上場であっても多事業展開している会社も少なくなく、食品リスク、金融リスク、中国リスクなどにリスクへの感応度により、主要事業が前年と当年で全く違ってしまうというケースもない訳ではありません。そのような時の類似業種比準価額の評価は、本当に1業種に絞ってしまってよいのか―と感ずることもあると思います。

 業種目の判定は「侮ることなかれ!」というところでしょうか。

[誤字修正] 2012/11/9
[誤字修正] 2012/11/11
[修正] 2012/11/13
[加筆] 2012/11/21
[追加修正] 2013/1/9
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ジャンル : ビジネス

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