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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第17回 株式評価の周辺(4) なんと!会社規模区分の大会社の数値は40年変わっていない?!

徹底解明/相続税財産評価の理論と実践
 品川芳宣、緑川正博共著、ぎょうせい、平成17年

徹底解明 相続税財産評価の理論と実践―財産評価基本通達の歴史から現行の取扱い、活用までを完全バックアップ徹底解明 相続税財産評価の理論と実践―財産評価基本通達の歴史から現行の取扱い、活用までを完全バックアップ
(2005/10/01)
品川 芳宣、緑川 正博 他

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[購入動機]  書名・著者
[コメント] 非常にアグレッシブな対談集。評基通の問題点に無自覚だった…と反省させられます。
【今回の記事の目次】
 1. 最近までは税務関係の「対談本」といえばコレでした!
 2. 会社規模区分の大会社の数値―S47から40年間改正されていない?
 3. 感想等

1. 最近までは税務関係の「対談本」といえばコレでした!
 本書は、「速報税理」において平成13年5月から39回にわたり連載された品川先生と緑川先生の対談集で、平成17年10月に出版されました。内容は財産評価基本通達の沿革(S39制定~H16改正までの22回の改正)のレビューと財産ごとの評基通評価の問題点などについて議論したものです。

 本書は、現在では手に入りにくい状況なのが非常に残念ですが、つい最近までは一般書店に並んでいる税務関係の「対談集」といえば、こちらでしたね(今日では第10回で取り上げたネット座談会というニューカマー、法人税の純資産―法人税法施行令8条・9条の口述コンメンタール」が出版されましたが…)。
 
 今読み返してみても、「ここまで言いますか…」というくらい非常にアグレッシブな議論ばかり。お二人の個性も所々に現れていて興味深く読ませて頂けるものなのですが、自分がいかに「時価」というものに向き合わず、何も考えずに通達を眺めていたか―反省させられます。
 
 今回のブログでは、取引相場のない株式―特に会社規模の議論を取り上げたいと思いますが、長年、取引相場のない株式の評価に携わっていらっしゃったお二人は、
「既に40年余りの月日が経過しているわけですが、当時のほうが、最近の通達改正よりも、時価とは何かという基本に基づいた評価方法がとられていたように思われます。
 昭和39年の通達が制定されていたバックグラウンドにおいて、時価とは何かということに対する純粋な議論に裏づけられていたように読み取れるわけです」
(品川。P21)

昭和39年当時の考えの方が現在にマッチしていると思いますね」(緑川。P194)
と共通の認識をお持ちのようです。
 
 つまり、昭和39年評基通の導入時には「時価」「適正評価」を標榜していた取引相場のない株式の評価は、事業承継において政策的に評価を下げる改正が重ねられ、今見ると評価体系は崩れてしまっている―ということのようです。品川先生が仰られるように、「株式の時価とは何か、通常、取り引される価額とは何かという理屈よりも、どうしたら事業承継にかなうような株式評価ができるかという角度からの議論がかなり強調」(p33)されるに至り、徐々に変質してきたということなのでしょう。緑川先生に至っては「(評基通は、)もう、客観的交換価値という考え方は捨てて、課税価格であると割り切ったらどうでしょう」(p196)とまで仰られています(実際には、そう思われている方がほとんどだと思います…)。
 
 現在、広義には「事業用宅地」「農地」「非上場株式」について事業承継税制が手当され、三者三様の取扱い(小規模宅地等の減額、農地等の納税猶予、非上場株式等の納税猶予)が設けられています。ただ経緯から見ると、「非上場株式」については本格的な立法で手当しようというよりも、通達改正により評価額を下げるという形で、その都度対処してきた―ということでしょうかね。
 
 
2. 会社規模区分の大会社の数値―S47から40年間改正されていない?

評基通の会社規模区分規定の沿革
昭和39年
取引相場のない株式の評価方法整備
昭和47年改正会社規模区分の改正
 経済の成長に合わせてS39年基準の資産基準・取引基準を約8年間で倍に引き上げる。
平成10年会社規模区分における「小売・サービス業」の新設(評基通178)
 取引相場のない株式を会社規模に応じて評価するに当たり、その会社規模を判定する際の業種区分を「卸売業」、「小売・サービス業」及び「卸売業、小売・サービス業」以外の3区分とし、「小売・サービス業」について、その金額基準を定める。
平成12年 会社規模区分における小会社の従業員基準の設定(10人から5人へ(評価基本通達178、179、189(3))
 
 「元々、類似業種比準方式は、上場会社と類似する評価会社の株式を上場株式との価額と比較しようとするものです。今でも、竹中工務店とかサントリーとかいつでも上場できる会社があるに関わらず、会社の経営方針として上場しない会社があるわけですが、そういう会社について上場株式に準じて評価しようとしているわけです。(緑川p32)
 昭和39年当時の類似業種比準方式については、公開の時につける値段と同じような価格でなければならないという、そういう理念が通達の中にあったと思います。」(緑川p33)

 「昭和39年を振り返りますと、取引相場のない株式の評価があります。これについては、まず、会社の規模区分が現在の取引金額あるいは総資産価額の大体半分くらいで設定されました。これは、当時の上場会社の最低水準であったようですが、それが後述するように、昭和47年に大体倍くらいに引き上げられたわけです。
 昭和39年のその他の基準、大会社に区分するためのいわゆる資本金1億円基準もあるわけです。この基準は、当時の上場基準とマッチしていたわけです。
 要するに、上場基準とマッチされるということは、類似業種比準方式を適用するにあたって、大会社は上場会社と同じという想定で、理論的に整合性が保たれていたわけです。
 その考え方では、金額的にも上場基準を非常に意識していたことが指摘できようかと思います」(品川p20-21)
 
とお二人が指摘されているように、S39導入時は大会社=上場会社規模というシンプルな思想があり、それに見合った会社規模区分が規定された―ということのようです。評価方式自体も非常にシンプルで、「考え方」と採用される評価方法の整合的に説明できた―というのは確かだと思います。「資本金1億円基準」というも、それくらいあれば当時は上場ができた―というものであったらしいです。
 
 この会社規模区分の数値は、8年後のS47に、名目経済の成長に合わせて資産基準や取引基準を倍に引き上げられます。この時点までは、昭和39年の考え方が踏襲されていると言えますね。
 
 しかし、この会社規模区分の数値は、昭和47年から現在まで全く変えられていません。むしろ平成10年にはサービス業・小売業などは引き下げる改正が入っています。このように会社規模区分は放置されたままで、平成6年には、従業員基準が設けられます(趣旨としては「ペーパーカンパニーを排除することによって、事業活動している会社にのみ類似業種比準価額を適用させよう」(品川P185)というもの)。
 
 このあたりは、「財産評価基本通達逐条解説」(大蔵財務協会)にも掲載されていますね。
 確かに大会社区分の卸売業(取引金額80億円以上、総資産価額20億円以上)、それ以外(取引金額20億円以上、総資産価額10億円以上)はS47から変わっていなですね。

第17回 差替image1
 
 ここでH6改正の「資本金1億円基準の廃止と従業員100人基準の導入」については、逐条解説では下記のように記されています。
 会社規模は企業として社会的に機能し、活発に営利活動を行っている状態の大きさを意味するが、従来の資本金1億円という基準は、このような企業活動の実態を適切に反映するものとはいえないものとなった。
 そこで、資本金1億円基準に代えて、企業活動の実態を適切に反映するよう従業員基準が導入された。従業員数は、既に中小企業基本法において「中小企業」の定義として使用される従業員基準が導入され、この場合の従業員規模は、資本金が概ね1億円である会社の平均従業員数が概ね100人強と認められることから100人とされた。
 なお、法人企業統計をみると、資本金別の平均従業員数は次表のとおりとなっていた。

第17回 image2
  もはや「資本金1億円」の意味が、S39の「上場会社相当」という意味から、かなり変質していますね。この会社規模区分によれば、類似業種比準価額の上場会社の株価の比準という本来の意味は、今日ではかなり後退していると言えると思います。
 
 S58に小会社にL=0.5の併用方式を認めたことは、品川先生は「客観的評価に対し大きな挫折」p54)とまで位置づけています。この当たりのお二人の議論が面白かったです。
(緑川) 私はちょうどその頃(S58改正)から、評価通達を読み始めた年代なのです。当時、事業承継税制ということでマスコミ等も騒ぎ、自分なりにも興味を持っていました。
 しかし、出てきたものは小会社に類似業種比準方式を採り入れて、類似業種価額のほうで何でもいいように評価を変えて、評価額が下がったからいいでしょう、というだけの税制でしたらか、何だったのかな、という感じはしていました。
 先ほどから指摘しているように、本来、事業承継のことを考えるのであれば、純資産価額について小規模宅地と同じように措置法に規定して政策的に評価減をしていけばいいのではないか、というように単純にみていたわけです。
 しかし、逆の問題が出てきたということです。要するに、類似業種比準価額は会社区分に関係なくどうでもいいよ、というようなことが見えてきた。ここら辺が評価体系を崩した根幹となっているのではないかと思っております。

(品川) そうですね。要するに、中小企業においても儲かっている会社と儲かっていない会社があるわけです。同じ純資産でも、上向きの会社は純資産価額でも問題はありませんが、右下がりの会社については、今純資産がいくらかあるからそのまま評価するというのではだんだん資産を食い込む状態にありますから、その収益性を織り込むべきだとういう趣旨は分かります…。
 だからと言って、本来、いつでも上場できる大会社に適用している類似業種比準方式をそのまま認めることには問題はあるわけです。その類似業種比準方式の中に、利益や配当とかという比準要素があることに着目して、そこに収益力が反映されているからといって、本来、大会社に適用すべき類似業種比準方式をそのまま小会社にも半分認めてしまうということは、類似業種比準方式の制度からみても非常に問題があるわけです。
 大会社にも認めるのだから、小会社に対しても認めればよいではないか、という議論もありますが、評価論からいうと、ここは非常に大きな問題を抱えています。小会社の株式評価が厳しいというのであれば、本来、純資産価額方式の中で修正すべきであったのではないでしょうか。
 この改正は一件何でもないように見受けられますが、非常に大きな転換となるもので、同じ収益力を織り込む場合にこういうイージーなやり方でよかったのかどうか、非常に問題があるわけです。
 恐らく、この通達改正が一つの転機になって、評価通達における「時価」とは何か、という客観的評価に対して大きな挫折を与えたのではないかと、そういうふうにも考えられるのですが…。

(中略)

(品川) ここでは、類似業種比準方式を本来適用してはいけない会社すべてに認めたことに問題があるわけです。つまり純資産価額方式と類似業種比準方式の哲学の垣根がなくなってしまったことが、非常に大きな転機となりました。さらに、類似業種の株価も前年のものでよいとか、あるいは業種区分も非常に弾力化され、できるだけ評価額を安くなるような考え方がとられたわけです。その中でも、小会社に対して類似業種比準方式を認めたということは非常に大きな問題です。
 他所でも、類似に斟酌割合に0.5(小会社)を採るというのは、もはや「比準」とは言えない―とか、会社規模区分自体やめてしまえばよいのに―とか中々アグレッシブな議論が出ていました。


3. 感想等
 確かに会社規模区分の数値規定が40年近く変わっていないという指摘はショッキングですよね…。
 会社規模区分規定が放置される一方で、類似業種比準方式の適用範囲がぶれていった―という御指摘は、非常に本質的なところで、勉強になりました。DCFなどいろいろな手法での株価評価手法が出てきている中で、評基通の評価額は一体、何を表しているのか―と考えさせられます。

 とはいえ40年近く会社規模区分が変わっていないと言っても、現在の状況ですと「マザーズ」や「JASDAQクローズ」みたいな上場基準が緩いところや、比較的アーリーステージにある企業も「上場」できる制度もありますので、評基通の基準でも上場できない訳ではないみたいですね。

 実際、下記のサイトで検索してみますと
企業価値検索サービス Ullet
http://www.ullet.com/search/group/26/page/16.html#ranking_title

卸売業(東証1部・2部、マザーズ、大証1部・2部、JASDAQ、ヘラクレス、地方市場)で352社(2012/11/13現在)のうち、
売上80億円未満会社…50社(14.2%)
 : 東証2部、大証2部、名証2部が各2社。他はJASDAQ・東証マザーズ、名証セントレックスなど
総資産価額20億円未満の会社…18社(5.1%)
 : すべてJASDAQスタンダード・クローズ、東証マザーズ、名証セントレックス銘柄
と評基通の大会社(卸売業)の基準の取引金額80億・総資産価額20億の基準に満たない会社もあるにはあるようですね。
 (東証1部は売上高の最下位は、日本エム・ディ・エムが81億円、総資産の最下位は、エスケイジャパンの32億)

 そう考えると、100人基準を大会社からはずれば、実際のものと隔たりがなさそうなイメージもなくはないですね(ただ最近IT企業など100人未満の上場企業とかありそうですけれども…)。

一方で、
売上高TOP3(卸売)    豊田通商5.9兆、三菱商事5.5兆、三井物産5.2兆
総資産価額TOP3(卸売)  三菱商事12.5兆、三井物産9兆、住友商事7.2兆
と評基通の大会社基準から見て、売上で700倍、総資産で6000倍以上の格差がある会社が、この卸売業の上場企業群にはいる訳で、上場会社の中でもピンからキリまであるものを業種株価Aとして類似業種は出している―しかも、第15回で記したように、上記の取引金額80億・総資産価額20億に達しない会社は、標本会社から除外されている可能性もなくはないですよね。 評基通の大会社基準で比準できるのかな…と思わない訳にはいかないですよね。

 今まで何の抵抗感もなく、小会社の併用方式(L=0.5)を計算していましたが、このような会社等の数値を比準して、零細企業の株価を計算してしまうというのは、不思議といえば、不思議ですね。とはいえ、全会社の株価を収益還元的に考えたり、類似会社を選定するのは不可能。評価の基本的な考え方というのは、本当に難しいですね。

 次回は、今回書ききれなかった、本書における類似業種比準価額の問題点を記してみたいと思います。

[図表 誤字差替] 2012/11/14
[誤字修正] 2012/12/7
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2012-11-13 : 取引相場のない株式 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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