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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第22回 株式評価の周辺(9) 相互持ち合い株式の計算事例―私もエクセルの「行列式」でも検算してみました!

平成20年版 事業承継に活かす非上場株式の評価の仕方と記載例
 松本好正著、大蔵財務協会、平成20年
事業承継に活かす非上場株式の評価の仕方と記載例〈平成20年版〉事業承継に活かす非上場株式の評価の仕方と記載例〈平成20年版〉
(2008/06)
松本 好正

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[購入動機] 相互持ち合い株式の計算例があったので、思わず買いました!
[コメント] 新版が出ています!そちらでお求めを!

【今回の記事の目次】
 1. H24.3.2東京高裁でも争点となっていた「相互持ち合い」
   ―本書では数値を入れた具体的計算例あり!
 2. 本書における「株式の持ち合い計算」の計算例
 3. 別解―エクセルの行列で解いてみる!(私見)
 4. 持ち合い株式計算上の留意点(私見)
 5. 感想等
【参考】
Excelの極意[3] 「関数」を極める
 早坂清志著、毎日コミュニケーションズ、2008年
Excelの極意(3) 「関数」を極める Excel 2007/97~2003対応 (Excelの極意 3)Excelの極意(3) 「関数」を極める Excel 2007/97~2003対応 (Excelの極意 3)
(2008/02/20)
早坂 清志

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※こちらも新版が出ております。

1. H24.3.2東京高裁でも争点となっていた「相互持ち合い」
   ―本書では数値を入れた具体的計算例あり!
 「第14回 株式評価の周辺(1) 保有割合25%超でも株式保有特定会社に該当しないとした判決で」取り上げた東京地裁(平成24年3月2日判決)では評価会社が株式保有割合に該当するかの争いがありましたが、この裁判では実は「もう一つ争点」がありました「株式の相互持ち合い」のケースの計算方法が争点となっていたのです。TKCローライブラリーの平成24年9月11日解説によれば、下記のとおりです。
 被告国が、相互に株式を持ち合う関係にある2つの株式保有特定会社を評価するには、連立方程式を用いなければ適正な株価を算定できない主張したのに対し、Xらは、納税者が申告において採用した合理的な評価方式を排除してまでその適用を強制されるべきではないと主張した(p2)。
結果としては、
 裁判所は、争点1(※評価会社が株式保有特定会社に該当するかという争点)につきA社は株式保有特定会社に該当するに足りないと判断し、そのため、争点2(相互持ち合いの計算手法)の連立方程式を用いるべきか否かについては判断する必要がないとした(p2)
 とのことです。おそらく、評価会社が類似業種比準方式と判断されたため、検討することはない―ということなのでしょうか。
 
 株式を相互に持ち合っている場合の純資産価額方式の計算については、特に財産評価基本通達上に明記がある訳ではありません。会計においては、同様の観点から連結会計の少数株主損益の計算について、1999年3月17日付で日本公認会計士協会が、会計制度委員会報告第7号(追補)「株式の間接所有に係る資本連結手続に関する実務指針」で、その計算手法を例示したことがあります。ここでも連結方程式による解法が示されておりました。
 
参考】
日本公認会計士協会HP 専門情報 株式の間接所有に係る資本連結手続に関する実務指針
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/main/post_802.html
※その後改定が入っています。
 
 株式評価の税務実務書においても、2社持ち合い、3社持ち合いの連立方程式を紹介している本がいくつか出版されておりますが、その具体的な計算例は記載されていないことが多く、「表計算ソフトで持ち合っている評価会社の純資産価額を循環計算させる方が無難ではないか」というコメントが付されていることが通常です。
 
 ところが本書では、2社ばかりでなく、3社持ち合いのケースについても数値を付した例題が示されています。著者の松本先生は不動産鑑定士でもあり、数学に強いのですかね。本当に有難い本です。

 
2. 本書における「株式の持ち合い計算」の計算例
 本書(2008年の旧版。以下頁も旧版のものでご容赦下さい)では、P231~249の紙幅を割いて、「会社が相互に持ち合いをしている場合の株式の評価」を説明しています。評基通の「純資産価額」の評価の際、評価会社が複数ある場合に株式を相互に持ち合っている場合には、株価が相互に影響し合って、計算が連鎖してしまいます。これを連立方程式として同時決定してしまう―という論点です。
 
 まず、本書では2社間持ち合いの基本的なパターンを5つに類型化しています。
第22回 image1
 第22回 image2
 本書では2社持ち合いの例として「A社及びB社とも小会社」「A社が中会社でB社が小会社」、3社持ち合いの例として「3社とも小会社」の場合の計算例を記載しています。
 
 ここで2社持ち合いの「A社及びB社とも小会社」の計算例(pp235~237)は下記のとおりです。
第22回 image3 
 この他に計算留意点として「株式保有特定会社」の判定場面について、二点言及しています(p231)。ここでは循環計算をしているうちに大会社でいえば25%ラインを上下する可能性もあり数回の判定が必要でないかという懸念が一つ。もう一つは、「S1+S2」計算への対処です。前者については、ある程度の簡便的に考えて「最初の判定で「株式保有特定会社」と判定されない限り、あえてA株式を「純資産価額」で評価し直して特定会社に該当するか再判定する必要はないと考えられます」(p234)とし、後者については、次のように述べています。
 このような場合(※再判定しない場合)には、A社株式について、「特定の評価会社」を判定する場合の評価方法(判定は、類似業種比準価額を用いて判定します。)と実際の評価額を算定する評価方法(実際は、純資産価額方式又はS1+S2方式により評価します。)が異なることとなりますが、①非上場株式の株式は、その会社規模に適した評価方式で評価することが原則であること、②株式保有割合の計算はあくまでも適用すべき評価方式を判定するためのものであり、直接評価(株価)の算定に使用するためのものではないことから、ある程度簡便に処理することも許容されると考えられること、③簡便性に考慮してA社、B社双方を「純資産価額方式」で計算することも考えられますが、評価会社が保有する取引相場のない子会社、関連会社等の株式の評価については、「類似業種比準方式」、「併用方式」の適用を認めていることとのバランスから適当でないことから、原則として「株式保有特定会社」の判定は、会社規模に応じた原則的評価方式で行い、結果として非該当の場合には、当該価格をもって当該会社の実際の株式の評価額とし、「株式保有特定会社」に該当している場合には、原則として「純資産価額方式」により再計算した価額をもって実際の評価額とするのが相当と考えます。
 ただし、課税時期において評価会社の所有する資産のうちに株式等の占める割合が高く、相互持合株式を除いて株式保有割合の判定をした場合であっても「株式保有特定会社」と判定される場合などは、はじめから「純資産価額方式」により評価するものと考えられます(本書p234~235)。
※は管理者が加筆したものです。
  評価の簡便性を尊重すべし!―という意見ですね。もちろん、こちらは「一般論」としてのご意見ですので、どうしても「S1+S2方式」や「会社規模判定」を組み込みたいということならば、がっちり表計算ソフトに組んで循環計算させるということになりそうですね。私もある程度の割り切りみたいなものは必要になるのかな―とは思っております。
 
 
3. 別解―エクセルの行列で解いてみる!(私見)
 私も人から教わったので、偉そうなことは何も言えませんが…連立方程式は、行列で計算するという手法があります。教えてもらったものをここで掲載してしまうというのもどうかと思ったのですが、上場会社や監査法人では、上記の少数持分損益の計算などで用いている方もいらっしゃるようですので、比較的「一般的」な手法として、上記算式の別解としてエクセルを用いた行列による解法を掲載したいと思います(もともと、行列自体が連立方程式を求めるために作られたようなもの―ということみたいですけれどもね)。
 
 エクセルの関数としては、今回はMINVERSEMMULTを用います。
 「Excelの極意(3) 関数を極める」(早坂清志著、毎日コミュニケーションズ、旧版2008)によると、
MINVERSE(配列)
 「配列」に指定した正方行列の逆行列を求めることができる。あらかじめ行列の大きさのセル範囲を選択しておいて、「Ctrl」+「Shift」+「Enter」キーで配列数式として入力する。
MMULT(配列1, 配列2)
 「配列1」と「配列2」の行列積を求めることができる。計算結果は、「配列1」の行数×「配列2」の列数の大きさの配列として求まるので、あらかじめこのような大きさセル範囲を指定しておいて、「Ctrl」+「Shift」+「Enter」キーで配列数式として入力する。
 行列をエクセルで扱うときは「Ctrl」+「Shift」+「Enter」キーを同時に押して「行列数式」とする―というのがポイントのようですね。
 
 もともと数列は下記のような連立方程式の解を求めるように出来ています。例えば連立1次方程式が2つの場合に結論だけかい摘んで記すと、下記のようになります。
第22回 image4
 ここで逆行列はエクセルが計算してくれるので、理論的なことは「連立方程式 行列」でググってください。つまり、結論だけを得るだけならば、MINVERSEで逆行列を作って、MMULTで行列の掛け算をすれば良いわけです。
 
 上記2の設例を用いならば、まず、評価会社の資本等式を作成します。つまり、
(A社) 
(A社のA株保有数×A社の株価(X))+(A社のB株保有数×B社の株価(Y))+(その他資産-各負債)  = 発行済株式総数×A社の株価(X)
(B社) 
(B社のA株保有数×A社の株価(X))+(B社のB株保有数×B社の株価(Y))+(その他資産-各負債)  = 発行済株式総数×A社の株価(Y)
  
  具体的な数値を入れると、
  (A社) 0株×(X)+21,000株×(Y)+(15,600,000-680,000)=40,000株×(X)
      ⇒ 整理すると 40,000X + 21,000Y = ▲14,920,000
  (B社) 10,000株×(X)+0株×(Y)+(19,200,000-9,240,000)=60,000株×(X)
      ⇒ 整理すると  10,000X + ▲60,000Y = ▲9,960,000
 となります。これを行列化してエクセルで入れれば、下記のようになります。
第22回 image5
※このエクセル例はA社の株価自体をX、B社の株価自体をYと置いています。2の計算では、A社の有するB社株式の株価(総額)を「X」、B社が有するA社株価「Y」と置いていますので、XとYが逆なっていますが、その点ご容赦下さい。

 「行列式」はエクセルの入力に癖があるので、上の例で逆行列の算定式を入力する場合、①「E7:F8」で範囲指定した上で、②=MINVERSE(B7:C8)」と入力し…③「Ctrl」+「Shift」+「Enter」キーを同時に押すという形になります(慣れないと難しい?ですかね)。行列積の入力も上の例で言えば、、①「D13:D14」で範囲指定した上で、②=MMULT(D10:E11,G10:G11)」と入力し…③「Ctrl」+「Shift」+「Enter」キーを同時に押すという形になります。
 
 この行列式の場合は、2社持ち合い、3社持ち合いだけでなく、5社でも10社でも、それ以上の持ち合いとなった場合でも、上のイメージで行列を作れば、求められてしまう(5社持ち合いなら「5×5」、10社持ち合いなら「10×10」の行列を作れば良い)のがメリットですかね。エクセルでT勘定ベースものを循環計算させている場合ですと、どうしても「この関数本当なのかしら?」「セルの飛び方は合ってるのかしら?」ということで、ワークシートの正しさを証明や検算がなかなか面倒ですから、行列式の場合は、確認箇所が少なくて済みます。ただ、税法計算上の端数の切り捨て等を組み込むのは弱いですかね。
 上記は、小会社の純資産価額の持ち合いの計算例でしたが、これが併用方式の会社や配当還元方式の会社が混じってしまっても、グループ全体として行列を作ってしまえば、面倒はありません。併用方式の算式を上記X、Yに代入すれば結局、類似業種比準価額部分は定数化するので、「×+Y=A」まで式を整理して、連立方程式にして並べれば良いことになります
 
 
4. 持ち合い株式計算上の留意点(私見)
 加えて、持ち合い株式の計算について、若干の留意点があると思います。
 
(1)議決権停止株式について
  会社法308条には、いわゆる「相互保有の議決権制限」の制度が置かれています。これは相互保有の場合に、一方の会社が議決権25%以上の株式を保有していた場合に、もう片方の会社の議決権が制限されるという制度です。
【参考】 大和総研 2006/1/23 相互保有株式の議決権と会社法の法務省令案Q&A
http://www.dir.co.jp/souken/research/report/law-research/commercial/06012301commercial.pdf
 
 このような場合には、同族株主の判定上、議決権0として判定することになります(評基通188-4に「会社法308条1項」の適用がある株式等について直接の言及があります)。
 
【参考】 国税庁HP 
財産評価基本通達188-4(議決権を有しないこととされている株式がある場合の議決権総数等)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/08/04.htm#a-188_4
 
 ただし、この評基通188-4は「188(同族株主以外の株主等が取得した株式)の(1)~(4)」の同族株主以外の株主等の判定上での考慮だけですので、「1株当たりの純資産価額」の除数とする「発行済株式等」からは控除されるとは記されていません。議決権のない種類株式と同様に、自己株式のような取扱いは行わず、発行済株式等から控除せずに計算するものと、個人的には感じております。まあ同族株主判定については、大抵の場合「がっつり」と相互保有状態になっているケースでは、原則的評価方法と判定されるケースがかなり多いようにに想像しております。
 
(2) 法人税法の「寄附修正」の取扱い
 また相互持ち合い等のケースで気になるところが、法人税法で導入された「グループ税制」における「寄附修正」の取扱いですね。これは国税庁HPの質疑応答が公表されています。
 
【参考】国税庁HP 
1株当たりの純資産価額D)-寄附修正により利益積立金額が変動する場合の調整
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hyoka/07/10.htm
 
 まず、類似業種比準価額の計算上は、(D)の数値は法人税の取扱いのままの数値で計算するようですね。純資産価額の計算上の帳簿価額についても、もともと「評価差額に対する法人税相当額」を計算するものですから、そのベースとなる帳簿価額は、法人税法を処理どおりに考えて良いのではと思います。

 
5. 感想等
 今回は本書の「相互持ち合い」の記述にスポットを当てました。具体的な計算例は、なかなか他の書籍ではお目にかかることはなかったので、ご紹介しましたが、本書はp22の「中心的同族株主の判定表」など、他の記述においても、「後で計算・判定のトレースができること」をかなり意識して記されているな―と個人的には感じました。「相互持ち合い」の計算例をわざわざ付したのも、著者の松本先生の、そのような「意識の高さ」の現れではないでしょうか。

 ただ、「相互持ち合い」は一見して合っているのか、合っていないのか検算も難しいもの。「行列式」のよるものは、算出した評価額の「検算」や、贈与前などのシミュレーションにおける「簡易計算」の位置づけでも、役に立てるものではないのかな―と思っております。あんまり書籍で紹介しているものがなかったので、今回、こちらの本の設例を用いて、「関数を極める」の力をお借りしながら試してみました(本当はエクセルでやってみたかっただけです…。お許しを!)。 とりあえず、最終値(単価)が合って良かったです(笑)。

 そういえば、2012年から「行列」は高校数学(理系の「数学C」?)で扱わなくなったようです。まあ、私のような文系(学内で「バカ商」と言われていた笑学部)は良いですが、理系は流石にまずくないっすかね?!

上記2冊の新版はこちらです。
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[記事修正] 2012年11月25日
[一部加筆修正] 2013年1月28日


いつも長くてすみません。最後までご覧頂きありがとうございました。
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※H25.9 税理士開業致しました!
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