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第26回 株式評価の周辺(13) 自社株対策の目的適合性と効果―初期段階の論点整理にはオススメの本

Q&A 事業承継をめぐる非上場株式の評価と相続税対策 [第5版]
 税理士法人トーマツ編、清文社、2008年
Q&A 事業承継をめぐる非上場株式の評価と相続税対策Q&A 事業承継をめぐる非上場株式の評価と相続税対策
(2008/05)
トーマツ

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[購入動機] 書名
[コメント] 「Ⅱ自社株対策編」がオススメ。「Ⅲ応用編」にも興味が惹
かれるQAあり。
※最新版は第6版となります。
【今回の記事の目次】
 1. 自社株対策の「初期段階の論点整理」にはオススメ
 2. 自社株式対策の「目的適合性」と「効果」
 3. 持株会社の形態と相続対策上の効果と留意点
 4. 感想


1. 自社株対策の「初期段階の論点整理」にはオススメ
 非上場株式の評価に関する本には、制度や法令の解説、Q&Aのようなレファレンスとなるものの他、具体的な対策手法、事業承継のタイプに応じた判断基準や考え方などを紹介したものもあります。
 
 本書の「Ⅱ 自社株対策編」においては、そのような自社株対策の考え方や具体的手法(主に10の手法)を記載しております。自社株対策の基本方針として①評価引下げ、②株式減少、③納税資金確保を挙げて、10の自社株対策の手法(生前贈与・譲渡・増資・従業員持株会・持株会社・事業譲渡等・合併・自己株取得・財団寄附・その他)を、基本方針との「目的適合性」「株式対策上の効果」の観点から評価するとともに、その運用上のポイント等を上手く整理した本となっています。
 
 内容も典型的な手法をカバーしていますので、株式評価の本を読んでは見たが、「何をしてよいのか分からない」「どういう点に気をつけたら良いのか分からない」という方、又は、会計事務所の方ならば、株価対策の「初期段階の論点整理」の良いヒントになるものとして、本書の第Ⅱ編はオススメです。以下、私の手許にある第5版をベースにその概要を記しておきます。
 
 
2. 自社株式対策の「目的適合性」と「効果」
 .本書では、自社株対策は「経営面(会社支配権)からの視点」「財産面(承継資産)からの視点」の両面からの検討を要するとし、その基本原則として下記の4つを掲げています。
[自社株対策基本原則]
1. 経営権を確保し、株式承継者を明確にする
  スキームの大前提。自社株対策といっても、後継者を誰にするかによって配慮する点が異なってくる。
2. 評価額の引下げを図る
  株式評価の仕組みを理解し、現況の自社株評価を行った上で、高株価となっている原因を追求する。評価額の積極的な引下げ限界があるような場合には、評価の上昇を抑制する対策が重要となる。
(留意点) 経営合理性に反するような対策は要注意。直前対策にこだわらず、長期的視点から株価引下げの仕組みを構築する。
3. 持株数を減少させる
  株式数の分散は経営権確保の目的と矛盾するが、全株を持っていないと経営権が確保できないというわけではない。経営権の確保(現在・将来の株式安定化)に配慮しながら、持株の承継・譲渡をすすめる。
(留意点) 親族であっても、直系以外の孫・遠戚への株式分散は、将来の後継者に多大の負担あり。安易な名義株利用も避けるべきで、現在の名義株も早急な回復が必要。
4. 自社株の現金化により相続納税資金を確保する。 
 相続財産の大半が自社株であれば、相続税の納税資金が問題。株式以外の財産であれば、第三者・会社への譲渡により資金捻出が可能だが、非上場株式の場合には容易ではない。
(本書pp172~175)
 
 この①評価引下げ、②株式減少、③納税資金確保の観点から、10の自社株対策の手法のうち「その他」を除いた9手法についての「目的適合性」「効果」を各手法の扉のページで「◎」「○」「△」「×」と評価したものを示しています。これらをまとめたものが下記の表になります。
26-image1.jpg
 
 本書では、これらの評価を先に示しながら、その「効果」を達成するための前提条件や、「落とし穴」など、その運用について話を進めていきます。そのような書きぶりで、極端にアグレッシブなことも書かれていないので、「株価対策の初期論点整理」には良い―と感じた訳です。
 
 全体的には、これらの手法は、株価を極端に下げるという策よりは、株価上昇を抑えるという「次善策」と、「納税資金作り」が現実的な落としどころになる―ということでしょうかね。それには、まず現状で計算した場合の株式評価を行い、相続税額ないし実効税率を下回る株式の移動の手法を考えていく―つまり、この暫定的に算出した、いわば「無対策」の現況の実効税率より低い税率下で株式が動かせれば、それはそれで効果が認めれれる―という訳で、それは贈与税・所得税・相続税(場合によっては法人税)の各分野の論点を総動員して対応するということになります。

 
3.  持株会社の形態と相続対策上の効果と留意点
 持株会社等は古くからある手法ですが、平成以降の税制改正でかなり評価減の手法が封じ込められてきました(H2株式保有特定会社、保有株式の法人税相当額控除の不適用、H6現物出資受入差額の法人税額相当額控除の不適用etc)。ただ、類似業種比準価額が高くて使いづらい、高収益な会社のため今後の株価上昇も見込まれるという状況ならば、直接保有から間接保有にすることで含み益に対する法人税等42%控除の効果は大きいものがあり―本書p210の指摘のとおり「短期的で租税回避的な対策に対しては効果はなくなりましたが、長期的な株式保全・承継対策としては持株会社対策は現在でも有効な株式対策」と言えると思います。また、持株会社が「事業持株会社」の場合はともかくとして、「純粋持株会社」の場合の資金調達はクリアしないといけません。持株受入れを譲渡にするにしても、現物出資とするにしても個人側は譲渡所得(20%)ですが、これに対する対応も少し記されています(p214)。

本書p213 持株会社の形態と相続対策上の効果と留意点
持株会社の株主による区分
オーナーが主要株主後継者が主要株主
純粋
持株会社
【効果】
1. 42%控除による株式評価減への効果
2. オーナー所有株譲渡による自社株の現金化
3. 相続時の自社株買取りの受け皿

【留意点】
 自社株買取資金の原資対策が必要。従って、資金対策上、純粋持株会社は劣る。
【効果】
1. 自社株譲渡価額による株式評価固定効果
2. 自社株上昇による後継者への財産移転
3. オーナー所有株譲渡による自社株の現金化
4. 相続時の自社株買取りの受け皿

【留意点】
 自社株買取資金の原資対策が必要。従って、資金対策上、純粋持株会社は劣る。
事業
持株会社
【効果】
1. 42%控除による株式評価減への効果
2. 持株会社株式の類似業種比準価額適用に伴う事業会社株式評価の切断効果
3. オーナー所有株譲渡による自社株の現金化
4. 相続時の自社株買取りの受け皿
5. 自社株買取資金の原資は事業利益で対応可能
【効果】
1. 自社株譲渡価額による株式評価固定評価
2. 自社株上昇による後継者への財産移転
3. 事業会社利益の持株会社への移転による事業会社株式評価軽減効果
4. オーナー所有株式譲渡による自社株の現金化
5. 相続時の自社株買取りの受け皿
6. 自社株買取資金の原資は事業利益で対応可能
 
 一方、増資や従業員持株会の狙いは、税務上の株価の「希薄化」狙いです。第三者割当増資の場合、税務観点からは、非同族ならば配当還元価額による増資を行っても問題にならないケースもあります(もちろん会社法観点からは「有利発行」ですから特別決議要)。従業員持株会については、労務関連での制度設計やナーバスな問題も絡んできます。このあたりの詳細は牧口先生、齋藤先生の事業承継に活かす従業員持株会の法務・税務〈第2版〉(中央経済社)の第2版が最近出ましたので、ご参考にされると良いと思います。 

4. 感想

 本書の「株価引下げ」「株数減少」「納税資金」の項目別に「目的適合性」と「効果」を示すやり方というのは、プレゼンテーションの参考になります。となると、自社株対策の「入口」―現況での株価評価による要因分析がやはり大事ですね。経営計画やシナリオ策定などの能力も必要となるので、また勉強が必要です。最近は事業承継の「入口」と「出口」(親族承継・親族外承継など)の位置づけをしっかり書いた本がちらほら出てきているので、そちらも目を通したいと思っています。

 また「経営の承継」側―後継者選定も経営者の専決事項でナーバスな問題で一様な回答がないものですので、「関わり方」を考えていかなくてはなりませんね。

 本書のように大手事務所の書いた書籍は、論理的に内容が整理されて、流石だな―と思える本も数多くあり、勉強になります。規模が大きな話(例:上場会社との合併等)が割と出てくるのも特徴ですが、まあ、そのようなことが念頭にある読手を想定しているのでしょうね。6版出版後、最近は一般書店でも見かけませんが、新版も見たいですね。


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