元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

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第27回 株式評価の周辺(14) 「有益費」か「造作」か―純資産価額計算上の建物附属設備の資産性

Q&A 株式評価の実務全書
  OAG税理士法人編、ぎょうせい、平成20年
Q&A 株式評価の実務全書Q&A 株式評価の実務全書
(2008/09/13)
OAG税理士法人 資産税部

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[購入動機] 書名
[コメント] 非上場株式の税務上評価の判例・裁決例のまとめてあるところが有難いです。
【今回の記事の目次】
 1. 本書のオススメ部分
   ―非上場株式評価に関する判例・裁決例がまとまっている

 2. 建物附属設備の資産性の判定―「有益費」が附属設備で計上されている場合
 3. 建物附属設備の資産性の判定―「造作」が附属設備で計上されている場合
 4. 固定資産税上の取扱い―特定附帯設備
 5. 感想等

 しばらく記事が更新できず、申し訳ございませんでした。少しペースが落ちるかと思いますが、また気を取り直して、「積読本」を消化していきたいと思います。

1. 本書のオススメ部分―非上場株式評価に関する判例・裁決例がまとまっている
 本書は、非上場株式の税務上の評価についてQ&A方式で記されたものです(全155問)。そのQ&Aでは、評価方法関連(類似業種・純資産価額等)については一般的な事例を取り扱っていますが、第6~8章において通達制定の契機となった判例・裁決例をまとめたものが紹介され、この点が本書の特徴となっています(第6章 法人税関連7件、第7章 所得税関連13件、第8章 相続税関連 28件)。
 
 
2. 建物附属設備の資産性の判定―「有益費」が附属設備で計上されている場合
 私が気になったところでは、少しマイナーな論点ですが、第8章の相続税関連の判例として紹介されていた「133 建物附属設備の資産性の判定」(pp475~476)についての裁決例です。
133 建物附属設備の資産性の判定
Q 当社は、事務所を第三者から賃借していますが、賃借後、設置した空調及び電気設備があります。当社の株式を純資産価額方式で評価する場合、これらの設備の評価はどのように行えばよいでしょうか。

A 賃借した建物に設置した設備は評価対象とならない場合があります。
 
次の事例が参考になります。
 有限会社の出資の評価に当たって、賃借人である評価会社が賃借建物に設置した附属設備は、工事内容及び賃貸借契約からみて有益費償還請求権を放棄していると認められから、資産として有額評価すうことは相当でないとした事例(一部取消し)(昭和60年分相続税・平成2年1月22日裁決)
  こちらは国税不服審判所HPに「公表裁決事例要旨」の一つとして紹介されています。
 
【参考】 国税不服審判所HP
http://www.kfs.go.jp/service/MP/04/0703000000.html
 
裁決事例集 No.39 - 380頁 
 
有限会社の出資の評価に当たって、賃借人である評価会社が賃借建物(工場)に施した附属設備の工事内容は、壁及び床の断熱工事、塗装工事、電気工事、水道工事、ホイストのレール工事等であるが、これら附属設備は、賃借建物の従たるものとしてこれに付合したことが明らかであり、かつ、それ自体建物の構成部分となって独立した所有権の客体とならないから、評価会社の資産として計上することはできないというべきである。もっとも、そうすると本件建物の所有者は、本件附属設備相当額を不当利得する結果となるから、評価会社は、建物所有者に対し有益費償還請求権を有するはずである。本件賃貸借契約によれば、建物内部改造費、造作、模様替えについて、借主は貸主に対してその買取り請求を一切行わないこと、原状回復は借主の費用負担において行うことが定められているので、評価会社は、有益費償還請求権を放棄したといえるから、本件附属設備の相続税評価額の計算に当たり、有益費償還請求権を有額評価することは相当でない(平成2122日裁決)。

 不動産の賃貸借契約で、「有益費」と「造作」かの判断が法律上の問題となることがありますが、「取引相場のない株式」の純資産価額の評価においても、その区別が必要となる場面があることを示す裁決例です。
 
 民法では賃貸契約中に賃借人が支出する費用で償還しうるものを、「必要費」「有益費」に区分し、その償還の金額やタイミングについて、異なる取扱いを置いています(ただし、賃借人からの費用償還請求権を放棄する特約は有効であるものとされています)。
(1)必要費(民608①) : (賃貸)目的物の保存・維持・管理に通常必要な費用
 (費用償還)
 
賃借人が必要費を支出したときは、直ちに賃貸人に対し、その費用の全額を償還請求できる。

(2)有益費(民608②) : (賃貸)目的物の価値を増加させる費用
 (費用償還)
 
賃貸借契約終了時に、「賃貸人」が①賃借人が事実上支出した金額、 ②目的物の価格の現存の増加額のいずれかを選択して償還請求する
 民法では、このような必要費・有益費の区分を、占有者による費用償還請求(民196①②)、留置権者による費用償還請求(民299①②)にも置いています。
 
 上記の賃貸人による「必要費」と「有益費」は、①請求のタイミングが異なること、②「有益費」は目的物(すなわち建物)の価値増加が前提であること②請求しうる額が異なること(「必要費」は支出額全額を請求しうるが、「有益費」は、「賃貸人」の選択のため、結果としては、支出額と現存の価値増加額のいずれか低い方の価額を請求することとなる)―が相違点となっています。
 
 ここで「有益費」の目的物(建物)の価値が増加するということは、その有益費の支出によるものが、建物の構成物として一体となっており(付合)、その所有権は「賃貸人」に属することとなります。
民法242条(不動産の付合)
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。
ただし、権原によってその物を付属させた他人の権利を妨げない。
 この民法242条を従として付合した物の元の所有者も、民法248条の償還金請求権を有することとなります。
 
 上記の裁決では、「有益費」として施工した建物附属設備は、賃貸建物に付合して、賃貸人の所有する建物と一たちとなり、賃貸人の所有に属することとなるため、賃借人の有する「建物附属設備」ではなく、賃借人は、その負担した「有益費」を賃借人に費用の償還を請求することとなるので、本来、その「未収請求権」を賃借人である評価会社の純資産価額の計算上、資産として計算することとなるのですが、本件では、賃貸借契約に特約で、その「有益費償還請求権」を放棄する旨があることから、「未収請求権」は純資産価額の計算上、考慮する必要はない―ということのようです。
 
 
3.  建物附属設備の資産性の判定―「造作」が附属設備で計上されている場合
 この有益費償還請求と似たものが、借地借家法に規定されています。それが「造作買取請求権」です。
 この買取請求の対象となる「造作」とは、下記のように観念されています。
買取請求の対象となる「造作」(最高裁判所/昭和29年3月11日判決)
 : ①建物に付加された物件で ②賃借人の所有に属し、
   かつ、③建物の使用に客観的便益を与えるもの
   ※賃借人がその建物を特殊の目的に使用するため特に付加した設備は含まない
   
 建物と付合したものと異なり、独立性があるものとされているようですね。賃借人は、この「造作」を行った場合に、賃貸人に買取を請求することができます。それが「造作買取請求権」です。この場合、その「造作」は、賃貸人の許可を得て設置した造作であり、請求のタイミングは契約終了時、買取の請求額は時価となります。なお、この造作買取請求権も、当事者の合意(特約)により排除することは可能です。
 
 このように、賃貸契約期間中に建物に付加した部分の費用を、その契約終了時に請求するものとして、「有益費」と「造作」があるですが、「有益費」は「賃貸人」の所有に属するもの、造作は「賃借人」の所有に属するものと区分されます。ただ実際には判断が難しい場面がでてきそうですね。法人税や所得税では、耐用年数取扱通達1-1-3(他人の建物に対する造作の耐用年数)が規定されています。
(他人の建物に対する造作の耐用年数)
1-1-3 法人が建物を貸借し自己の用に供するため造作した場合(現に使用している用途を他の用途に変えるために造作した場合を含む。)の造作に要した金額は、当該造作が、建物についてされたときは、当該建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積った耐用年数により、建物附属設備についてされたときは、建物附属設備の耐用年数により償却する。ただし、当該建物について賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る。)で、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として償却することができる。(昭46年直法4-11「1」、平23年課法2-17「一」により改正)
(注) 同一の建物(一の区画ごとに用途を異にしている場合には、同一の用途に属する部分)についてした造作は、その全てを一の資産として償却をするのであるから、その耐用年数は、その造作全部を総合して見積ることに留意する。
 ここでの「造作」は、上の買取請求の対象となる「造作」という限定もないため、広義に観念されるものと思われます。但書きの書きぶりからも、有益費請求や造作買取請求ができない場合には、どちらも契約終了時までの償却期間を認めているところからも、両者についての同質性も認めながら、減価償却資産として計上することを念頭に置いているようです。
 
 純資産価額の計算上では、「造作」を、どのように考えるのでしょうか。
 これについては第15回 株式評価の周辺(2) 類似業種の標本会社が判明!?―ドトールとスタバはどの業種でしょう? で取り上げた新版 詳説/自社株評価Q&Aでは、「内部造作」の純資産価額の評価上の取扱いについて、次のように記載されています。
 
Q123 賃借人が附属させた内部造作の取扱い
評価会社である賃借人が附属させた内部造作は、財産性があるものとして、別途、評価の対象とするのでしょうか
A
 建物自体を所有せず、評価会社が賃借建物にした造作(建物附属設備として処理)であっても、独立して財産を構成し、取引の対象となっているものについては、別途、相続税評価額を算定する必要があります。
(解説)
 相続税基本通達11の2-1にいう「財産」とは、独立して財産を構成し、取引の対象となるもの解されています。したがって、評価会社が賃借建物にした造作(建物附属設備として処理)は、建物に附合したからといっても、賃借人である評価会社がその権原に基づいて賃借建物に附属させているものであって、賃貸借契約が終了するまでは、取外し、撤去等が自由にでき、建物から分離して取引の対象となり得るものであれば、それは「動産」であり、相続税法上の「財産」に当たります。したがって、権原を有する者に付加した附属設備が財産性を有する場合には、これを建物と別に評価することになります。
 また、固定資産税評価に当たり、建物附属設備が建物と一体評価されているからといって、相続税評価に当たり、権原を有する者の付加した附属設備が財産性を有する場合には、これを建物と一体として評価すべきものでもないと考えられます。
 上記のような賃借人が付加した建物附属設備の評価方法は、建物附属設備の一般的評価方法を定めた財産評価基本通達92(1)のように、建物附属設備を家屋の価額に含めて評価するのでなく、同通達に評価方法が定められていない財産として同通達5により、財産評価基本通達に定める評価方法に準じて評価すべきでしょう。
 具体的には、上記のような建物附属設備は、結局、動産と考えられるので、同通達129に定める一般動産の評価方法によるものと思われます(pp253-254)
  ここで民法の付号の考え方を下敷きにした説明のようですね。不動産から独立したものとして「動産」として捉えていますが、これを評基通上の「動産」と同一視してよいか―はさておき、上記2の「有益費償還請求権」を放棄した建物附属設備と異なり、有額評価の必要性があるものとしています。
 
 
4. 固定資産税上の取扱い―特定附帯設備
 ここで固定資産税では「特定附帯設備」を連想された方もいらっしゃるでしょう。
 建物に付合した「特定附帯設備」については、民法上、建物の所有者の所有に属することから、固定資産税の「所有者課税の原則」から建物の所有者に「建物」として課税すべきところを、その「特定附帯設備」を取り付けた者を「所有者」としてみなし「償却資産」として課税するという制度です。
 
 群馬県HPに非常に分かりやすい説明(改正時)があったため引用させていただきます。
 
【参考】地方税法第343条第9項の規定の創設について
https://www.pref.gunma.jp/07/a4900073.html
 
Q(質問).家屋の所有者以外の者が取り付けた附帯設備に対する固定資産税の課税の取扱いについて、次のことを教えて下さい。
1 新たに創設された制度概要について
A(回答).家屋の所有者以外の者(以下「テナント」といいます。)が家屋に取り付けた附帯設備については、原則として民法第242条「不動産の附合」(※文章ママ)の規定により付合の状態を判断し、家屋に属する部分は家屋として当該家屋の所有者にそうでない場合は当該附帯設備が事業の用に供し得る場合に限り、償却資産として当該テナントに対して固定資産税が課税されます。しかし、課税の現場において不動産付合の法理に即して判断することの困難さ、また、家屋の所有者にとっては課税の原因が自らに起因せず、その使用収益はテナントに帰属することから、納税者意識と合致しない等の課題がありました。
 そこで、平成16年度の税制改正において地方税法第343条第9項が創設され、テナントがその事業の用に供するために取り付けたものであり、かつ、付合により当該家屋の所有者が所有することとなった附帯設備(「特定附帯設備」といいます。)については、
当該取り付けた者をもって当該附帯設備の所有者とみなし(=「みなし所有」)、
・当該附帯設備のうち家屋に属するものを償却資産とみなして(=「みなし償却資産」)、固定資産税を課することができることとされました。


2 適用にあたっての留意点について
A(回答).本項の適用にあたっては、市町村の条例に規定を整備する必要があります。地方税法においては、平成16年4月1日以後に取り付けられた特定附帯設備が対象となり、遡及適用もしない趣旨であることから、条例に規定する場合には適用日等に十分留意する必要があります。また、不動産取得税における取扱いと異なることから、県と市町村間においては従来以上に家屋評価事務等の協力関係が必要となり、市町村においても適正な課税に資するため、家屋・償却資産の担当者間における特定附帯設備に関する情報等の共有が必要になります。
 適用対象は公平性の確保から、当該市町村内の全ての家屋及び特定附帯設備について一律に行われなければならず、対象者に対して、本制度の趣旨や内容等について十分周知するとともに、課税対象の範囲が拡大するものではないことについても周知が必要です。


3 「特定附帯設備」について
A(回答).償却資産としてテナントに課税することができる特定附帯設備は、次の全ての要件を満たす必要があります。 
(1)特定附帯設備が条例の適用日以降に取り付けられたものであること
 家屋本体の建築年月日はいつであってもかまいません。条例の適用日より前に取り付けられた附帯設備については、原則どおり民法第242条の「不動産の附合」の規定に基づいて当該附帯設備が家屋にあたるか否かを判断することとなります。
(2)当該附帯設備ついて家屋の所有者以外の者が所有していること
 家屋の所有者が所有している場合は、原則どおり家屋として評価・課税することとなります。
(3)当該附帯設備が事業の用に供することができる資産であること
 テナントが所有する附帯設備であっても、その事業の用に供することができる資産でなくなった場合は、当該附帯設備が付合により家屋に属するときは家屋として評価・課税し、家屋に属しないときは固定資産税の課税客体に該当しないこととなります。
 なお、特定附帯設備には、機器としての独立性が認められる附帯設備(電気設備、給排水衛生設備、冷暖房設備などの建築設備等)のほか、家屋の主体構造部に附着しておりこれを分離復旧することが事実上不可能であるか、毀損に著しく費用がかかると認められるもの(木造家屋については外壁、内壁、天井、造作、床又は建具並びに非木造家屋については、外周壁骨組、間仕切骨組、外部仕上、内部仕上、床仕上、天井仕上、屋根仕上又は建具)も含まれますので、ご注意ください。
 
4. 感想等
 このような裁決があったのですね。純資産価額方式が清算処分時の時価純資産を志向しているので、「有益費」の負担としてBS上建物附属設備として計上されていても、資産の所有権もなく、費用請求権もないということであれば、このような判断もあるだろうなと思います。実際に「有益費」の「造作」であるかの判断や、「付合」の程度の判定は、実際には契約書等の約定や工事内容から個別に判断するところであり、難しいところでありますが、本来は賃貸目的物件を使用収益させるために、賃貸人たるオーナー側が負担すべき修繕・支出したものを負担しているであるか―というのが判断のポイントなんでしょうね。したがって、通常の内部造作のようなケースでは、「新版 詳説/自社株評価Q&A」の例にように評価対象と考えることが多いであろうと思います(民法上は独立した部分として「動産」と観念されますが、評基通上の「動産」で評価するというのが、引っ掛からないではないですが…)。固定資産税の特定附帯設備のスタンスは、賃借人側では相続税法上の評価関係に絡めない―というのも、課税目的・評価目的を考えるとそうなるところですが、反対にオーナー側の処理が気になりました。いずれにせよ、うっかりしそうな論点でもあるので、勉強になりました。


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