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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第28回 株式評価の周辺(15) 「国税速報」第5528号見解から、その後―合併後に課税時期がある場合の類似業種比準方式の適用関係

平成19年版 株式・公社債評価の実務
 鬼塚太美編、大蔵財務協会、平成19年
株式・公社債評価の実務―自社株の評価のために〈平成19年版〉株式・公社債評価の実務―自社株の評価のために〈平成19年版〉
(2007/06)
鬼塚 太美

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[購入動機] 書名
[コメント] 国税担当者が執筆。国税サイドの見解として参考になります。平易で分かりやすい。
※新版(2011年版)が出版されています。

【今回の記事の目次】
 1. 本書の特徴―国税局職員の私見等が記されたもの
 2. 「国税速報」第5528号のインパクト
   ―合併後に課税時期がある場合の類似業種比準方式の適用関係
 3. 合併の前後で会社実態に変化がない場合とは?
 4. 感想(私見)

1. 本書の特徴―国税局職員の私見等が記されたもの
 本書は昭和53年初版以来、数度の改訂を重ねてきた税務上の株式評価―特に取引相場のない株式の評価の定番の実務書です。解説部分も平明で分かりやすいですが、設例、質疑応答部分が豊富で、何よりその見解が国税庁職員の私見であることが特徴です。本書の「はしがき」には、次のように記されています。
「本書は、東京国税局課税第一部資産評価官の職員が休日等を利用して執筆したものですが、文中意見にわたる部分は、個人的見解であることを念のため申し添えます(はしがきp2)」
 質疑応答については、国税庁HPにも記載されるようになったものも多々見受けられますが、課税サイドの判断傾向が垣間見れるものとして参考となります。
 
 
2. 「国税速報」第5528号のインパクト
  ―合併後に課税時期がある場合の類似業種比準方式の適用関係
 国税庁職員の私見ということで近年思い出されるのが、「国税速報」第5528号―財産実務上の重要事項(8)において当時の課税部資産評価企画補佐の方の解説―合併直後の類似業種比準方式の適用は制限される―です。
 それ以前の合併直後の株式評価について、類似業種比準方式を適用する際には、「合併前の合併法人+被合併法人」の比準値の基礎数値を合算(「合算方式」)したものを使用することが多かったのですが、この「私見」が公表されてからは、合併後1~2年間は類似業種比準方式による評価の否認リスクもあるので、この「あくまでも私見」として公表された当見解をクライアントに説明した上で、贈与等のタイミングを相談するケースが増えたと思います。
 
 本書も、国税庁職員が執筆した―という触れ込みですので、平成19年版には、この私見をベースにした質疑応答が記載されています(本書pp238~241)
本書pp238-239(※一部簡記しています)

[質疑7] 合併後に課税時期がある場合の類似業種比準方式の適用関係
(問)次の吸収合併が行われた場合、各課税時期(X期、Y期、Z期)ごとにA社株価算定において、類似業種比準方式の適用関係はどのようになるでしょうか。

28-image1.jpg

(注)X,Y,Zは、それぞれ課税時期を示します。また、A社及びB社はいずれも大会社であり、同種の事業を営むものとします。

(答)合併後に課税時期がある場合に類似業種比準方式により取引相場のない株式の評価ができるかどうかは、個々の事例ごとに、直前期末(あるいは直前々期末)における比準3要素について、合理的な数字が得られるかによりますが、一般的な整理としては次の通りとなります。

28-image2.jpg
 この「単体方式」と「合算方式」の比準要素の検討を受けて、pp239~p240の解説では次のように解説されています。
 
 取引相場のない株式を類似業種比準方式により評価することについての合理性が担保されるためには、評価会社における各比準要素が適切に把握されなければなりません。しかし、合併直後に課税時期がある場合には評価会社の営む主たる業種や利益・配当当の会社の実態が大きく変化することがあり、評価通達183《評価会社の1株当たりの配当金額当の計算》に定める数値が適切に把握できない場合も生じます(本書pp239~240)

(中略)

 これらの結果(※注 「単体方式」と「合算方式」の比準要素が適切に得られるかの検討)をみると、課税時期Zにおいては、単体方式でも合算方式でも比準3要素の数値は原則として同一となり、かつ、合理性を有することから、どちらの数値であっても類似業種比準方式の適用に問題はありません。しかし、課税時期X及びYにおいては、単体方式で比準要素をみた場合には、比準要素について合理的な数値を得ることができず、また、合算方式であっても、合併の前後で会社の実態に変化がないと認められる場合を除き、比準要素について合理的数値を得ることができません。したがって、課税時期X及びYにおいては、合併前後においても会社の実態に変化がない場合以外は、類似業種比準方式の適用の限界があるものと認められ、同方式以外の妥当な方法により株式を評価するのが相当です。
 なお、妥当と考えられる評価方法については、次ページ(※下記の表[参考])のとおりです(本書pp240)。

28-image3.jpg 
 
3. 合併の前後で会社実態に変化がない場合とは?
 では、合併の前後で会社実態に変化がない場合とは、どのようなケースが想定できるのでしょうか。「国税速報」第5528号にその例の列挙があるようですが、新版 詳説/自社株評価Q&A(※この本の引用が多くなってしまいますが…)pp210~211には次のように記されています。
同書pp210-211
合併の前後で会社実態に変化がないかどうかは、もっぱら事実認定に属する問題です。例えば、次の①~④をみたす場合には、これに該当すると考えられます。

①合併比率を対等(1:1)とし、合併が適格合併である場合
②合併の前後で会社規模や主たる業種に変化がない
[注]例えば、合併により主たる業種が変わってしまう場合には、類似業種株価通達における適用すべき業種目が変わってしまい、問題があります。
③合併当時会社双方の利益、配当が黒字であり、純資産が欠損でない。
④合併前後の1株当たりの配当、利益、純資産価額に大きな変動がない。
[注]例えば、合併により利益が倍増したような場合には、合併後の会社の実態を的確にあらわしているとはいえないと思われます。
 同書では、①について法人税法上の適格合併が挙がっていることについては、H13改正前の合併の場合、合併法人における資産当の受け入れが旧商法の時価以下主義により、税務上は簿価以下でも受け入れられたことから被合併法人の資本の部(当時)が合併法人の資本の部(当時)に引き継がれるとは限らなかったことが、H13改正後の適格合併ではその点が解消されたことが念頭におかれていること(同書p212。当見解公表はH15)、①の「1:1」については、合併比率が類似業種比準価額ベースで計算され、合併法人・被合併法人が同業種目ならば、個々の株主の評価額は同じと推定されるが、そんなことも少なかろう(純資産価額方式を考慮することが一般)と思われるので、例えば、①合併新株が発行済株式総数の1:1以内の増加、②増加純資産価額が評価会社の合併前の純資産価額に対して1:1以内の増加という基準も考えられるのではないか―という指摘をしています(同書p213)。まあ、元々適格組織再編成は「事業の継続性」「投資の継続性」を念頭に置いたものでしたが…(参考 第11回 税務会計の本質観(3) 適格組織再編成―課税が繰延べられる理由を知りたい! )。
 
 
4. 感想(私見)
 全くの私見ですが、これは類似業種比準価額の計算が「1会社=1業種」とされてしまっていることによる弊害だと思っています。
 非上場でも複数事業を抱えている会社もない訳ではないので、そのような会社は「主たる業種」のみで類似業種比準方式が適用され、例えば「A事業部の業種目×○%+B事業部の業種目×△%」というような計算は許容されていません。
 ただ、市場や技術トレンドの変化が激しい今日では、そのような外部環境の変化に対応しなければならないため、評価会社の「主たる業種」もドラスティックに変化していくということもあるはずです。先の例なら売上比・資産比 A事業部60%・B事業部40%の会社が、2年後にはA事業部30%、B事業部70%となってしまうこともあろうかと思います。そのような会社についても類似業種比準方式が適用できない―というのは少し言い過ぎのような気もします(※「自社株評価Q&A」p163~164では、主たる業種目や会社規模が2~3年で変化している会社は類似業種比準方式の適用が制限される可能性もない訳ではないとの指摘をしていますが…)。もし、このような会社でも現状で1会社=1業種としての計算を許容するのであれば、他業種間の合併による「合算方式」が認めらないのは不公平な部分があると思います。
 ただ、1会社について複数業種の組み合わせによる類似業種比準価額の計算を認めてしまえば、課税の公平性・簡便性を著しく損するケースも出てくることも容易に想像できますし、何より非上場会社で事業部門管理している会社でもPLまでは区分しても、BSまで区分している会社も少なかろう―と思われるので、現状では、説得力がある計算手法を確立するには、実務的な練度が不足していると言えるでしょう(DCF方式等は、特定事業部の事業価値計算とかするんでしょうけどね…)。
 言いづらいですが、「国税速報」第5528号の私見の乗り越えられず今日まできてしまった感じですネ。その上で連結納税やグループ税制など、相次ぐ法人税法上の改正が、評基通上の評価に大きく影響を与えている部分ですので、今後もいろいろな論点が出てくるのかな―と感じております。
 
 また合併の時期に関しては次のような裁決例もあるようですね。
 
【参考】国税不服審判所HP
課税時期が合併契約締結後合併期日までの間にある場合において、課税時期における株式の価額は、合併後の会社の純資産価額に影響されないとした事例
http://www.kfs.go.jp/service/JP/57/32/index.html
 

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