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第3回 営業権・のれん考(3) 営業権と資産調整勘定の重複

「税経通信」 20079月号
 「営業権と資産調整勘定について」
 企業税制研究所(当時) 池田祐介氏

 

税経通信 2007年 09月号 [雑誌]税経通信 2007年 09月号 [雑誌]
(2007/08/10)
不明

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[購入動機] 題名
[本書の効用等] 「表」が直観的に分かりやすい! 本制度の理解の一助になりました。

【今回の記事の目次】
 1. 資産調整勘定の資産性について―制度の批判的検討

 2. 感想等

※こちらの論考については、
日本税制研究所HP中段の「法人税法等の解釈研究」にてPDFの閲覧ができます。
http://www.zeiseiken.or.jp/zeihou/2007/index.html


 前回の関連情報として、こちらも簡記しておきたいと思います。

[1] 資産調整勘定の資産性について―制度の批判的検討

 こちらもタイミングとしては、平成18年税制改正を受けてのものですが、前回のような自己創設営業権等に絡めた話ではなく、純粋に法律論として、「差額概念として創設した資産調整勘定及び負債調整勘定に関しては、その資産性や負債性について十分な検討が行われていない」(本稿p169)として、本制度の検討をしています。

 要約すると下記の検討を行い、資産性の「内容と性質の吟味」が十分とされていないと指摘しています(p175)。

1. 資産調整勘定の資産性―調整勘定の内容と性質の吟味が不十分

2. 制度上の立て付け営業権の償却と資産調整勘定の取崩の重複等

3. 組織再編成の場面における資産調整勘定の「資産性テスト」整合性がない


1.
 資産調整勘定の資産性―調整勘定の内容と性質の吟味が不十分

第3回 図1


 資産調整勘定等の規定が適用される非適格分割、非適格現物出資、事業の譲受けは直前において営まれている事業で、その事業に係る主要な資産・負債のおおむね全部が移転するものに限定されていますが、この点について、合理性がなく、不徹底なものとの指摘しています。

「資産を個別に取引した場合と一体で取引した場合とでは、さまざまな事情によりプレミアムやディスカウントが生ずることがあり、(中略)、資産等の一体取引を行った場合の資産等の個別価額の積上げ金額と一体取引の価額とに相当額の開差がある場合に資産調整勘定や負債調整勘定を計上するという仕組みであればまだしも、事業を半分取得した場合には、資産調整勘定はなく、事業を全部譲渡した場合には資産調整勘定があるというような取扱いに合理性があるとは思えない。このように資産調整勘定に関しては、その内容・性格と認識する場面の検討を十分に行わずに創設した中途半端な制度という印象を免れない」(本稿p171


2.
 制度上の立て付け営業権の償却と資産調整勘定の取崩の重複等

第3回 図2


 会計基準を参考としながら、現在の法令の規定を文言通りに解釈を行うとすると、上図のとおり「独立した資産として取引される慣習」のないものについてグレーゾーンがあり、「営業権の減価償却と資産調整勘定の取崩の重複」と「営業権の減価償却が行われる一方で、資産等超過差額は取り崩せないという矛盾が生じる」状況が考えうると指摘をしています。

 これは文言解釈からの帰結であると思われます。



3. 組織再編成の場面における資産調整勘定の「資産性テスト」整合性がない。

 これが一番ユニークに感じるところですが、資産調整勘定の資産性ないし資産観を、営業権・資産調整勘定がある場合の組織再編成税制上の取扱いを通じて検討してます。

第3回 図3

(資産の部) 

 適格合併の場合には、営業権は法法622による簿価引継ぎ。資産調整勘定は法法629①による簿価引継ぎ(法法622の「資産」とは見ていない)。ただし簿価引継ぎという点では別段の差異はない。

 適格合併以外の適格分割型分割や非適格組織再編成では、営業権・資産調整勘定で取扱いが異なる。

 適格分割型分割では、営業権は簿価引継ぎ(法法622①)、資産調整勘定は引継ぎ規定がないため、分割法人側で取崩が継続されるもの解される(法法628④⑤)。

 非適格合併の場合は、営業権は時価譲渡(法法62①)、資産調整勘定は分割法人側で残額取崩(法法628④⑤)

(資本の部(当時))

 適格合併の場合には、資本金等増加額=移転資産-移転負債 で、営業権はこの(移転)資産に含まれる。資産調整勘定がこの(移転)資産に含まれるかどうかは、法令8①五では明らかではない。ただ、税務上の貸借を合わせようとすると、資産調整勘定は法法629で簿価引継ぎしているため、この(移転)資産の中に資産調整勘定を含めてなければ、貸借は合わない。よって法令8①五の適用上では「資産」と見ている。

 適格分割型分割の場合には、資産調整勘定がそもそも分割承継法人に引き継がれないので、法令①六の資産には含まれない。

「(上述のとおり)資本の部(※当時)を見ると、資産調整勘定を創設したことに伴う規定の整備が適切に行われていないことがわかる。(中略)これらは制度上の不備に止まらず、資産調整勘定の資産性をどのように考えるかという資産調整勘定のそもそもの内容と性格の吟味を十分に行わずに、資産調整勘定を単なる差額概念と捉え本制度の創設が行われているということが示されている」(p175

としています。


4. まとめ

 上記の検討をすすめた上で本稿の先生は、次のようにまとめています(p176)。

 ・  営業権と資産調整勘定は重複があり、二重に損金計上される懸念がある。ただし、二重に損金計上するという大胆な納税者はいないであろうから、実際上、営業権・資産調整勘定のいずれか選択となる。

 ・  この選択に関しては、償却と取崩の額には大差がないとしても、今後の組織再編成や連結納税への展開を考えると、取扱いに差があるため、慎重にならざろう得ない。

 ・  また、営業権について厳密な資産性が求められる一方で、資産調整勘定は単純な差額なので、土地等の時価を低く見積もり、資産調整勘定を多く計上しようというバイアスがかかるのは問題がある。

 ・ 制度ができれば、できたなりに有利利用を考えるが、制度論としては、営業権の内容と範囲の明確化、資産調整勘定との制度の重複は是正が必要。

[2] 感想

 厳しいご指摘―という印象でした。ざっと拝見した限りでは、文章は明確で分りやすく、上手く論点整理をしていただいたという印象です。特に、差し込まれた図表が直観的にわかりやすく、ロジックが弱い私には、とても助かりました。

 ただ、上記[1]2の営業権と資産調整勘定の重複は、文理解釈上はそのような理解になることが分かりましたが、具体的にどういうものが重複するのかは、この論考からですと、少しイメージできませんでしたね(これは前回の佐藤先生の指摘でも同様ですが…)。 


 こちらの先生のおっしゃるように営業権と資産調整勘定が実質的にいずれかの選択となるならば、現実的には、全てを営業権とするか、全てを資産調整勘定とするか―になってしまうように想像します(一部を営業権、一部を資産調整勘定とすると疎明するのが大変そう)

 また、資産調整勘定の説明に際しては、条文上の「非適格合併等対価額」や「時価純資産」という術語をできるだけ避けて、努めて「一体取引の価格」「個別資産・個別負債の積上げ金額」という言い方をしているように感じました。察するに実務感覚に訴えた書きぶりにしたかったのではないでしょうか。個人的には「実務感覚から言っても、違和感のある規定となっている」ということを伝えることに成功しているとは思います。ちょっとしたことですが、非常に参考になりました。

 

 佐藤先生同様、「営業権の内容と範囲の明確化、資産調整勘定との制度の重複は是正が必要」という結びでしたが、本稿の先生のお見立てから6年経っても、さっぱり進展がないんじゃないかなあ…という感じです。(だから、私は、この記事が未だ捨てられないのですが…)

 
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2012-10-25 : 営業権・のれん : コメント : 0 : トラックバック : 0
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