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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第33回 私の実務必携本(3) 棚卸資産(その2)―税務でも「月別」総平均法=「月別」移動平均法?

法人税実務問題シリーズ/棚卸資産(第4版)
 森田政夫著、中央経済社、2008年
棚卸資産―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ)棚卸資産―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ)
(2008/02)
森田 政夫

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[購入動機] 書名・内容
[コメント] 今回は私とクライアントさんとの間の笑い話です。
【今回の記事の目次】
 1. 会計では初歩的論点ですが…
   税務でも「月別」総平均法=「月別」移動平均法?
 2. 感想等

前回では収まらなかったものを、今回は少しだけ記したいと思います。
 
1. 会計では初歩的論点ですが…税務でも「月別」総平均法=「月別」移動平均法?
 会計ではごくごく初歩的な論点であっても、税法ばかりを考えていると、すっかり抜け落ちてしまう…私はそんな残念な人です。以前、新たに付き合いを始めた新規のクライアントさんとの間で、下記のようなやり取りがありました。
管理人kiyusama31 (以下「管」):
「棚卸の資料を拝見させて頂きましたが、月毎に丁寧なものをお作りのようですね。エクセルで作成された棚卸表を見たところ総平均法を適用されているようですが、届出書は提出されていますか?」

クライアントさん (以下「ク」):
「何を言っているんですか?!ウチは創業当時から移動平均法で計算してますよ!届出もそれで出しています!」

管:
「え!これはどう見ても総平均法じゃないですか!」

ク:
「言っていることが分からない。移動平均法でキチンとやってますよ!注記にもあるでしょう!」

管:
「?!」

ク:
「?!」
 もうお分かりの方がいらっしゃると思いますが、両者はそれぞれ「月別」総平均法「月別」移動平均法という認識で話をしているのです。この場合、どちらも計算ロジックは同じで、同じ額が計算されるはずです。実に不毛な会話なのですが、実際にあった話です(笑)。
 
 では、税務では、この辺りをどのように整理されているでしょうか?
 本書では、それを明快な図表で示しています(本書p137)。
【引用】 本書p137
 総平均法および移動平均法の期間のとり方を、税法および法人税基本通達に従って示すと、次の図のとおりとなる。
33-image1.jpg

(注)上図に示すように、月別総平均法と月別移動平均法は同じものである。これを法人税基本通達5-2-3において並記しているのは、評価方法の選定届出の手続に関係するからである。すなわち、月別の平均原価法を月別総平均法だけとしておくと、移動平均法を月別総平均法に変更しようとする場合に、逆に月別の平均原価法を月別移動平均法だけとしておくと、総平均法を月別移動平均法とする場合に、それぞれ棚卸資産の評価方法の変更として所轄税務署長の承認を受けなければならない。このため総平均法または移動平均法を選定している法人は、いずれも棚卸資産の評価方法の変更手続きをすることなく、月別の平均原価法を採用することができる。
 
 上のクライアントさんとは少し緊張関係が生じましたが、上の図表を見て一緒に笑ってしまいました(とりあえず、ホッ!)。
 
 この図では「総平均法」と「移動平均法」の2つの評価方法が示されていますが、算出される金額は①期別総平均法、②6月ごと総平均法、③月別総平均法、④月別移動平均法、⑤その都度移動平均法の5つがあることになります。そのうち③と④は計算ロジックが同じで同額となります。

 ただし、これらの税務上の「評価方法」としては、「期別」「6月ごと」「月別」「その都度」等の期間の別は問われておらず、期間が別であっても一の「評価方法」として認識されます。設立時等に提出する「棚卸資産の評価方法の届出書」には、期間の記載は特に要求されていません(記載要項参照)。
 
 従って、法人が算出方法を①②③の間で変更したり、又は④⑤の間で変更したとしても、「総平均法」又は「移動平均法」の枠内の異動に過ぎないため、税法上の「評価方法の変更」にも当たらない―どうも、そういう事のようです。
 
 そのような前提から、上の注書きでは、①②⑤から③又は④に変更する分には、③=④であるため、税務上の評価方法の変更手続きをしなくとも、「実質上」変更が可能である―例えば、会計上「⑤その都度移動平均法」→「③月別総平均法」という変更があったとしても、税務上「⑤その都度移動平均法」→「④月別移動平均法」の変更(移動平均法の枠内での変更なので変更申請なし)というスタンスで対応できる―ということを述べているのです。
 
 う~ん。そう言われれば、そうなんでしょうねえ…。
 
 では、会計上ではどのようになっているか。
 企業会計原則では、評価方法として「平均原価法」を「取得した棚卸資産の平均原価を算出し、この平均原価によって期末棚卸品の価額を算出方法」(注解21)と規定しています。その上で「平均原価は、総平均法または移動平均法により算出する」とし、「総平均法」と「移動平均法」は、評価方法としての「平均原価法」の下位概念とされていものと読めます。これは「棚卸資産の評価に関する会計基準」でも同様の規定ぶりです(同基準6-2(3))。上の引用部分の最終行の「月別の平均原価法」という表現もそのあたりを意識してのものでしょう。
 ただ、会計慣行上ないしは連続意見書等では「総平均法」と「移動平均法」は別個の評価方法と位置づけられており、その変更は「会計方針の変更」に当たるものとして取り扱われています(本書p140)。それでも、月別・期別等の期間についての区分までには、言及されていないようですね(有報等を見ると「総平均法(月別)」と記載している会社もない訳です)。過年度遡及会計の絡みもあるので、少し気になるところではあります(重要性の原則が働き、大勢に影響しないケースが多そうですが…)。
 
 
2. 感想等
 上記のようなエピソート(笑い話?)があったので、その後はすっかり、この本に頼るようになりました(笑)。
 ホント、上手くできた図表だと思います。
 
 図表中の「6月ごと総平均法」(法基通5-2-3の2)は、法人税では仮決算による中間申告との平仄を合わせて容認されていると思いますが、ただ、最近は会計で四半期決算が要請されているので、できれば「3月ごとの総平均法」も認めて欲しいところですけどね(まあ在庫管理上では、そんな甘々ではダメだとは思いますが…)。
 
 また、「移動平均法」というのは具体的には「その都度」ぐらいしかイメージできないのですが、本書を読み返してみると、同通達(注)に「6月ごと移動平均法」というのは、税務上の「移動平均法」とは認めない―という記載があることを初めて知りました…(逐条解説では「6月ごと総平均法」と認識されるとのことです)。
 
【参考】法人税基本通達5-2-3の2(注)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/05/05_02_01.htm
 
 
 また、棚卸資産の書籍を読んでいると会計では「評価基準」「評価方法」という概念分けをして説明されていますね(「評価基準」は原価法(基準)・低価法(基準)、「評価方法」は先入先出法、総平均法…)。注記でいえば、
33-image2.jpg

という感じでしょうかね。
 
 税務では「評価基準」という語はなくて、まとめて「評価方法」です。届出書の記載要項の書き方に準ずれば、上の注記は
33-image3.jpg
 
 と届出書に記載することになりますね。「~基づく低価法」という「まどろっこしい言い方」を昔からしてたかしら?と思いましたが、法人税法施行令第28条の言い方を意識した表現ではありますね。
 
 今回は税務観点から、本書をオススメ本として推しましたが、実際の低価法の運用や仕組み作りとなると、やはり会計本の方が示唆が多いです(システムやマニュアル作り等)。今後は、このあたりも勉強していきたいです。


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2013-01-10 : 棚卸資産 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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