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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第36回 税理士試験・へそ曲がりの過去問解答(2) 第62回(H24)法人税法 受取配当―評価損は2度問われていた!

問答式 法人税事例選集 平成24年10月改定版
 森田政夫著、清文社、平成24年
問答式法人税事例選集〈平成24年10月改訂〉問答式法人税事例選集〈平成24年10月改訂〉
(2012/11/07)
森田 政夫

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[購入動機] 書名など
[コメント] マニアックな論点も扱っていて面白いです(造成団地、企業支配対価など)。
 ※記事中では手許にあるH18版の頁を参照しています。

【参考】
「意識の量」を増やせ!
 齋藤孝著、光文社新書、2011年

「意識の量」を増やせ! (光文社新書)「意識の量」を増やせ! (光文社新書)
(2011/07/22)
齋藤 孝

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【今回の記事の目次】
 1. 第62回(平成24年度)法人税法の教訓―「意識の量」を増やせ!
 2. 第62回法人税法 第二問 問6 受取配当等の益金不算入
 3. へそ曲がりの解答(そのニ)
   ― 控除負債利子(原則)の分母に前期のP株評価損否認13,200,000円を加算
 4. 感想等

1. 第62回(平成24年度)法人税法の教訓―「意識の量」を増やせ!
 齋藤孝先生の著書に「意識の量」を増やせ! (光文社新書)」(2011年)という本があります。日本語のエキスパートである先生の本ですので、「書名」でもう内容を言い尽くしているようなものですが…期待に違わぬ良い本でした。ただ、税法ばかり読んでいたせいか、「結局「意識の量」って、しっかりと定義していないよね?」と意地悪なことが、つい頭に過ぎってしまいます。直接的には説明されていませんが、「気働き」「意識の線の張り巡らし方」(p43)というあたりの意味でしょうか。「意識の複線化」とか、「意識の中に同時に何本の列車を走らすことができるか」(p88)とか、「多くのことを同時に意識し、その意識配分を間違わないこと」(p89)とも表現しています。
 例え話として、小澤征爾さんが24歳のときにブザンソン国際指揮者コンクールに入賞したエピソードが記されています。
【引用】 pp77~78
 オーケストラを指揮するときの指揮者の意識量は膨大だ。鋭敏な感覚をとぎすませながら、大河のような水量で意識を張り巡らす。その基本が、部分に分けて細分を強化すること(引用者注:師匠の桐朋学園・斎藤秀雄先生のメソッド)だというから興味深い。
 このコンクールの予選でどんな課題が出されたか。
 その一つが、フォーレの「タンドレス」という曲について、あらかじめ60人編成の各パートの譜に、赤インクで間違った譜が書き込まれている。ホルンとトロンボーンの音が入れ換えてあるとか、バイオリンが違うというような12箇所の誤りがある。それを5分で発見して、完全なオーケストラに仕上げる、というものだったそうだ。
 まさに、意識の量を見る試験。譜面を見ながら、60人の音を一つひとつ聴き分け、指揮しながら、間違いを指摘するのだ。指揮者に求められる意識量のすごさたるや人間ワザではない。
  レベルは違いますが、税理士試験会場での受験生のアドレナリンのようなものですかね(笑)。「意識の量」―それを試させられたような気がしたのが、第60回(平成22年度)の法人税、第二問計算の問6でした。
 
 
2.  第62回法人税法 第二問 問6 受取配当等の益金不算入
 第62回(平成24年度)の法人税法の有価証券の評価損と受取配当益金不算入の問題です。
【問題】 第62回(平成24年) 税理士試験 法人税法 第二問 問6
〔第二問〕―50点― (一部抜粋)
 内国法人である甲株式会社(以下「甲社」という。)は、X県Y市に所在し、電子部品製造業を営む3月末決算の法人であり、毎期継続して青色申告書を提出している。
…当期(平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度)…

問6 有価証券に関して、次の(1)から(3)までの問いに答えなさい。
(2) 当期の受取配当等の益金不算入額を、計算過程及びその理由の要点を示しつつ算定しなさい。

〔資料6〕 有価証券に関する事項
1 甲社の当期における株式の保有状況及び関連する情報は次のとおりである。P株式及びQ株式は、法人税法第23条第5項及び第6項に規定する完全子法人株式等及び関係法人株式等のいずれにも該当しない。甲社は、前期及び当期を通じて、これら以外の株式等及び証券投資信託の受益権を保有していない。
銘柄
区分
取得価額
(取得単価)
当期末の時価
(終値)
受取配当
の額
丙社
株式
売買目的外有価証券
(非上場株式)
10,000,000円
(評価額を算定せず。)
360,000円
(注)
P株式
売買目的外有価証券
(上場株式)
24,000,000円
800円)
9,000,000円
300円)
0円
Q株式
売買目的外有価証券
(非上場株式)
37,000,000円
(評価額を算定せず。)
560,000円
(注)

(注)源泉徴収された後の振込入金額であり、決算書原案にはこの金額が反映されている。(非上場株式の配当には、20%の税率による源泉徴収(国税のみ)が行われる。)。他に受取配当の額はない。

(1) P株式は、前々期に取得したものであり、前期中に時価が大幅に下落し、前期末の時価が10,800,000円となったので、取得価額と時価との差額について株式評価損を計上した。しかし、株価の回復可能性がないことについて合理的な判断基準を得るに至らなかったので、申告調整により株式評価損を否認した。
 当期末においてさらに株価が下落した状態であり、株価の回復可能性を改めて判断した結果、回復可能性がないことについて合理的な判断基準を得ることができたので、株式評価損を計上することとした。決算書原案には次の仕訳のみが反映されている。
      (借方) 株式評価損 1,800,000円 (貸方) P株式 1,800,000円
 なお、新製品のヒットにより平成25年4月下旬より株価は急回復し、同年5月上旬には1株当たり700円台を維持している。

(2)
Q株式は、前期に5,000株取得したもので、当期を通じてその全てを保有し続け、平成25年4月18日にそのうちの2,000株を売却した。

2 前期及び当期における負債の利子及び関連する事項並びに
総資産の帳簿価額の金額は、それぞれ次のとおりである(いずれも確定した決算に基づく損益計算書及び貸借対照表に計上される金額である。)。
 なお、甲社は、金融機関による手形割引料(手形金額と割引による受取金額の差額)を当期から手形譲渡損として経理することとしている。
項 目
前 期
当 期
備 考
支払利息
487,519
378,662
前期の金額には、手形割引料112,484円が含まれている。当期の金額には、リース資産に係る利息相当額が含まれている。
手形
譲渡損
86,512
総資産の
帳簿価額
1,325,800,000
1,406,700,000
 
 
 専門学校の模範解答では、「控除負債利子」の計算はOさん・Tさん・Lさん・Dさん、どれも同じ金額でした。
【解答】
控除負債利子(原則法)
 ① 負債の利子 (支払利息)378,662+(手形譲渡損)86,512 = 465,174円
 ② 総資産簿価 (前期末BS)1,325,800,000+(当期末BS)1,406,700,000 = 2,732,500,000
 ③ 株式等の帳簿価額(税務上)  ※丙社は完全子法人株式
   イ 前期末 (P社株式)24,000,000+(Q社株式)37,000,000 = 61,000,000円
   ロ 当期末 (P社株式)9,000,000+(Q社株式)37,000,000 = 46,000,000円
   ハ イ+ロ =107,000,000円
 ④ ①×③/②=18,215円
 
 
3. へそ曲がりの解答(そのニ)
 ― 控除負債利子(原則)の分母に前期のP株評価損否認13,200,000円を加算
 総資産の帳簿価額は、当期及び前期の確定した決算に基づく貸借対照表に計上された金額を用いますが、調整する項目があります。
 
 「平成18年10月改訂 問答式 法人税事例選集」(森田政夫著、清文社、平成18年)には、次のように記されています。
【引用】 pp127~128 (一部省略)
総資産あん分方式による計算に当たってのその他有価証券の評価損益
【問3-17】
 総資産あん分方式による計算に当たり、次のものは総資産の帳簿価額の計算上どのように取り扱われますか。
  ① その他有価証券に係る評価益又は評価損相当額
  …(以下省略)

【答】
 御質問の事項に係る金額は、次のように取り扱われます。
① その他有価証券に係る評価益又は評価損相当額
 その他有価証券(売買目的有価証券及び満期保有目的有価証券以外の有価証券をいいます(法政令119の2②))の評価方法は、税法では原価法ですが(法61の3①二)、会計計算規則は、市場価格のある資産(子会社及び関連会社の株式並びに満期保有目的の債券を除きます。)に事業年度末の時価を付すことを認めています(会社計規5⑥二)。この規定による時価評価によって計上される評価差額は、(イ)その合計額を資本の部(※現 純資産の部)に計上する全部資本直入法(※現 全部純資産直入法)、(ロ)評価益は資本の部(※現 純資産の部)に計上し、評価損は当期の損失として計上する部分資本直入法(※現 部分純資産直入法)のいずれかの方法(純資産の部に計上される評価差額には税効果会計を適用します)で処理しますが(金融商品会計基準第三、二、4)、この処理をしない法人との均衡を考慮して、総資産の帳簿価額の計算に当たって評価益相当額は減額し、評価損相当額は加算することとされています(法政令22①一ニへ)。
  ただ、この「評価益相当額」・「評価損相当額」は、条文を見る限りでは、純資産(貸方)の「その他有価証券評価差額金」と規定している訳ではなく、資産(借方)に計上されている「その他有価証券」の「税務上の期末簿価」と「BS(会計)上の期末簿価」との差額と規定しています。
 法人税法施行令第22条
(株式等に係る負債の利子の額)
第二十二条  法第二十三条第四項第二号(受取配当等の益金不算入)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項の内国法人が同項の事業年度において支払う同項に規定する負債の利子の額の合計額に、第一号に掲げる金額のうちに第二号に掲げる金額の占める割合を乗じて計算した金額とする。
 当該内国法人の当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度(当該事業年度終了の時において、当該内国法人が、連結法人でない場合にあつては法第四条の二(連結納税義務者)の承認を受けていない期間に、連結法人である場合にあつては当該承認を受けている期間に限る。以下この条において同じ。)の確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額(イからニまでに掲げる金額(当該内国法人が連結法人である場合にあつては、イからホまでに掲げる金額)がある場合にはこれを減算し、ヘに掲げる金額がある場合にはこれを加算した金額)の合計額
(略)
 第百十九条の二第二項(有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法)に規定するその他有価証券(以下この号において「その他有価証券」という。)に係る評価益等相当額(当該事業年度の確定した決算に基づく貸借対照表に計上されているその他有価証券の金額が当該事業年度終了の時における当該その他有価証券の帳簿価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)
(略)
 その他有価証券に係る評価損等相当額(当該事業年度終了の時におけるその他有価証券の帳簿価額が当該事業年度の確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている当該その他有価証券の金額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)
 すなわち、この規定のそもそもの趣旨としては全部純資産直入法の「その他有価証券評価差額金」を意識していると思われますが、評価損をPL計上した上で税務否認される部分純資産直入法の処理との平仄を合わせるために、このような条文の書きぶりとなったとは想像します。ただ、この書きぶりですと、上記以外の理由での「その他有価証券」の「評価損」や「評価益」を排除している訳ではないので、文理解釈上は、完全子法人株式・関係法人株式・売買目的有価証券・満期保有有価証券以外の株式―「その他有価証券」の評価損益の否認額は、控除負債利子の原則法算式の分母に加味せざろう得ない―ということになります。
 
 この辺りは、上場会社等の大法人の実務先例として確立している話でもあります。このような法人さんの受取配当等の益金不算入は巨額の減算項目になります。従って、国税側との厳しいやり取りの中で培われた取扱いですので、無視できないところであると考えます。
 
【参考1】 税理士法人トーマツ 「平成22年3月期の税務申告のチェックリスト」 p12 check⑧
http://www.tohmatsu.com/assets/Dcom-Japan/Local%20Assets/Documents/knowledge/tax-pdf/jp_k_tax_keiri100401_120710.pdf
 
 従って、総資産簿価は、
(前期末BS)1,325,800,000円(前期P社 評価損相当額)(税務上24,000,000円-前期末BS10,800,000(=13,200,000円))+(当期末BS)1,406,700,000円+(前期P社 評価損相当額) 0円= 2,745,700,000
とすべきものと思われます。

 
4. 感想等
 この問題はP社の評価損の取扱い(「上場有価証券の評価損に関するQ&A」、国税庁HP「質疑応答事例」)だけでも、かなり神経を使ってしまう問題でした。

【参考2】 
上場有価証券の評価損に関するQ&A(H21)
 Q3 株価の回復可能性の判断の時期
 Q4 株価の回復可能性の判断基準に該当した場合の評価損否認金の取扱い
 ※「合理的な判断基準」についても、Q1・Q2で言及しています。

【参考3】 国税庁HP質疑応答事例
評価損を計上した上場株式の時価が翌期に回復した場合の遡及是正について

 その上、理論の1問目で躓いた感触を持った方も多いはず。Q株の売却日もイヤらしい。
 
 計算の終盤のこの問題に対しても気持ちを切らさずに、細かい計算部分もケアしなければならない―冒頭のような「意識の量を見る試験」であったような気がします。

 また、ここでは「
(2) 当期の受取配当等の益金不算入額を、計算過程及びその理由の要点を示しつつ算定しなさい。」という問いでした。なんで、わざわざ「その理由」でなく、「その理由の要点」という表現にしたのでしょうか。「キチンと説明すると長くなりそうなもの」が含まれているのでは…と考えると、2点思い当たりました。
 
 一つは、手形売却損がなぜ「負債の利子」に含まれるのか―資産に関連して生ずる利子ではないか?という疑問に答えるには、説明がひどく長くなると思います。もう一つは、この「その他有価証券の評価損相当額」の論点。これも理由をしっかり書こうとすれば、上記のような説明になってしまいます。そこで「理由の要点」という出題になったのかな?と勝手に想像しておりました(ただ「寄附金」でも、「理由の要点」としているので、思い過ごしかも…)。

 このようなこともある上に、(1)で評価損の理由等をしっかり答えさせているので、(2)が計算がただ数字を流して益金不算入を出すに留まる訳がない…従って、「へそ曲がり」の解答になった訳です。
 
 と偉そうに書いたはいいですが…何か読み落としていて、私の方が間違っていたらお赦し下さい<(_)>
 

※最後に、こちらの事例選集の著者は、第32回第33回の「棚卸資産―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ) と同じ、森田先生です。これも面白かったです。興味がございましたら、是非ご一読下さい。


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