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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第40回 税理士試験・へそ曲がりの過去問解答(6) 第58回(H20)法人税法 法人に対する遺留分減殺請求②―税法上の「前期損益修正」とキチンと向き合う!

法人税基本通達逐条解説 六訂版
 森文人編著、税務研究会出版局、平成23年

法人税基本通達逐条解説法人税基本通達逐条解説
(2011/04)
森 文人

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[購入動機] 書名
[コメント] 定番です!だけど、まだ六訂版なのは意外ですね。


【参考】
「経理知識第67号」(明治大学経理研究所、1988年)
渡辺淑夫、「税法上における前期損益修正をめぐる若干の考察

【参考】
「判例・裁決からみる 法人税 損金経理の判断と実務」
 八ツ尾順二著、清文社、2011
判例・裁決からみる法人税損金経理の判断と実務判例・裁決からみる法人税損金経理の判断と実務
(2011/07/22)
八ツ尾 順一

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【今回の記事の目次】
 1. (整理1)過年度遡及会計との関係
 2. (整理2)法人税基本通達2-2-16 (前期損益修正)
 3. (整理3)渡辺淑夫先生の「前期損益修正事項」の整理
 4. (整理4)前期損益修正と除斥期間との関係
 5. 本問の検討
 6. 感想等
 

 前回に引き続き第58回(平成20年)の過去問です。
 国税庁HPの「出題のポイント」では、本問の取引を「前期損益修正項目」と見ているフシがあります。
 ここで法人税法上の「前期損益修正」の取扱いを整理した上で、本問にどう適用されるか検討したいと思います。
 
1. (整理1)過年度遡及会計との関係
 税務論点を検討する前に、今日的な会計論点に少し触れておきたいと思います。
 本問題は、過年度遡及会計基準の公表前の出題(平成20年)でした。もし現在で本問のように遺留分減殺請求があった場合の価額弁償があった場合には、過年度遡及会計の適用はあるのでしょうか。
 結論としては、適用はないと思われます。会計上の変更でもなければ、誤謬の訂正でもないからです。
 
会計上の変更及び誤謬の訂正の取扱い
区 分
会計上の原則的な取扱い
会計上の変更
 
 
会計方針の変更
遡及修正する (遡及適用)
表示方法の変更
遡及修正する (財務諸表の組替え)
会計上の見積りの変更
遡及修正しない
誤謬の訂正
遡及修正する (修正再表示)
 
【参考】
国税庁HP
法人が「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用した場合の税務処理について(別紙)
 
 また、「誤謬」とは下記のように定義されたものですので、本問のように当初に瑕疵のない法律行為を行っている場合には、当てはまりません。
 「誤謬」とは、原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、またはこれを誤用したことによる誤りをいい、具体的には以下のような誤りをいうこととされています(過年度遡及会計基準4項(8))。

① 財務諸表の基礎となるデータの収集または処理上の誤り
② 事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積もりの誤り
③ 会計方針の適用の誤りまたは表示方法の誤り
  したがって、本問のこの論点は、会計上もこの基準制定前の例に従って考えて差支えはないようです。
 


 
2. (整理2)法人税基本通達2-2-16 (前期損益修正)
 税務で「前期損益修正」と言われて、まず思い出すのは法人税基本通達2-2-16の規定です。
法人税基本通達2-2-16 (前期損益修正)
 当該事業年度前の各事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)においてその収益の額を益金の額に算入した資産の販売又は譲渡、役務の提供その他の取引について当該事業年度において契約の解除又は取消し、値引き、返品等の事実が生じた場合でも、これらの事実に基づいて生じた損失の額は、当該事業年度の損金の額に算入するのであるから留意する。
 「前期損益修正」においては、特に収益の減額が問題となるため、修正損についてのみ通達化されています(昭和55年改正)。法人税基本通達逐条解説 六訂版」(税務研究会出版局)には、同通達について(1)通達の内容及び(2)国通法23②との関係の2つの解説をしています。
 
 
(1) 通達の内容 (逐条解説六訂版 p220)
 この通達は、前期以前に収益計上した売上高等について、その後契約の解除・取消し、値引き、返品等の事実が生じた場合においても、既往に遡及して修正しない―すなわち、その契約解除等による損失の額は、契約解除等の事実が生じた事業年度の損金として計算するという取扱いを明示した通達です。
 
 民法においては、契約の解除・取消は、その契約は既往に遡り効力を失うこととされています。一方、企業会計では、「継続企業の原則」から、契約の解除・取消しは、発生原因は問わず、当期発生のものとして認識されます。
 
 ここに通達では、法人税法では「民事上の契約関係その他の法的基準にのみ依拠するものでない」として、経済的観測に重点をおいて損益を認識する立場を示しています。従って既往の課税関係を修正しないこととなります。
 
民法・会計・税務のスタンス(逐条解説の要約)
契約解除
取消し
民法
既往に遡って、その契約は効力を失う。
企業会計
継続企業の原則
 当期発生の収益と費用・損失を対応させ利益計算。
 この場合、発生原因は問わず、当期に発生すれば認識する(契約解除等も当期損失発生の原因にすぎない)。
税法
民事上の契約関係その他の法的基準にのみ依拠するものでない。
経済的観測に重点をおいて損益を認識。
∴契約解除等に伴う損失は当期損失として処理。
(既往の課税関係を修正しない)
 

(2) 国通法23②(後発的理由に基づく更正の請求の特例)との関係
   (逐条解説六訂版 pp220~221)
 ここで気になるのが国通法23②(後発的理由に基づく更正の請求の特例)において既往の課税の修正を求める「一定の事由」「解除権行使による契約解除」「やむを得ない事由による合意解除」が規定されている点です(国通令6)。
 
 逐条解説では、国通法はあくまでも税務一般の包括規定という位置づけであり、実際には個別の税法の解釈に従う―と述べています。つまり、法人税法上で遡及訂正するような理由がない場合には、取り立てて国通法23②の規定は適用しない―ということになります。
 
国通法・個別税法のスタンス(逐条解説の要約)
課税済所得が一定事由により喪失
国通法23②
(税務一般の包括規定)
一定の事由が生じて所得が失われた場合、当該事由が生じてから2月以内に既往の課税の修正を求める更正の請求をすることができる。
【一定の事由】
「解除権行使による契約解除」「やむを得ない事由による合意解除」が国通令6に規定。
法人税法
(個別税法)
 国通法は税務一般の包括規定である。国通令6(解除権による契約解除等)に規定があるからといって、常に既往に遡るという訳ではなく、現実の減額更正は個々の税法の規定・解釈により判断。
∴ 法人税法上、既往に遡って減額更正する理由がない場合は、国通法23②規定は「事実上カラ振り」(国通法23②の規定の適用なし)
 
 (1)(2)をまとめると、
 国通法23②で後発的理由により更正の請求をすることができるとはされているが、法人税法上、既往に遡って課税関係を修正する必要がなければ、国通法23②の適用はしない。少なくとも契約の解除又は取消し、値引き、返品等はその例にあたる
 ―ということでしょう。
 
 この通達は、契約の解除又は取消し、値引き、返品等―について、疎明するには使いやすいものですが、それ以外の取引を判断するには、この解説だけでは少し不安が残りますね。
 


 
3. (整理3)渡辺淑夫先生の「前期損益修正事項」の整理
 渡辺淑夫先生が雑誌「経理知識第67号」(明治大学経理研究所、1988年)に寄稿された「税法上における前期損益修正をめぐる若干の考察」では、「前期損益修正事項」を「内在的前期修正事項」と「後発的前期損益修正事項」に区分されています。
 
【参考】経理知識 67号
https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/handle/10291/9349
https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/9349/1/keirichishiki_67_39.pdf


 
前期損益修正事項の区分(渡辺(1988)、p42)
内在的
前期損益修正事項
 もともと当初の計上額に修正原因が内在していて、これが後になって顕在化したために修正を余儀なくされるもののグループ
 企業会計原則注解12(2)や財務諸表規則取扱要領160の2では、これらを典型的な前期損益修正事項として例示。
① 販売済の商品に欠陥があったことによる値引き・返品
② 減価償却費や引当金の過不足修正
③ 棚卸評価額の修正
④ 償却済債権の取立て
⑤ 過年度の粉飾決算
⑥ 前期における単純な売上計上洩れ・費用計上ミスの修正等
後発的
前期損益修正事項
 その修正原因が全く後発的に生ずるもののグループ
 当初の決算時においては正当な処理であったものが、その後の情況の変化等により修正を余儀なくされるもの
① 契約の解除・取消し又は失効
② 没取・官公署の許認可の取消しその他の処分により一旦計上した取益等に修正が必要になったような場合
③ 売掛債権の貸倒れ損失
④ 事情変更により欠陥のない商品について生じた返品・値引き等
 
(※)企業会計原則注解12 
(八ツ尾順二著「判例・裁決からみる 法人税 損金経理の判断と実務」、清文社、2011 p22より)
【引用】 八ツ尾、p22
 
企業会計原則の「第二 損益計算書原則」の特別損益の中に、「特別損益は、前期損益修正益、固定資産売却益等の特別利益と前期損益修正損、固定資産売却損、災害による損失等の特別損失とに区分して表示する」と記述されている。そして、同原則「注解12」において、「前期損益修正」として次の四つが例示されている。
過年度における引当金の過不足修正額
過年度における減価償却の過不足修正額
過年度におけるたな卸資産評価の訂正額
過年度償却済債権の取立額
 これらの区分をさらに「遡及して課税を修正するもの」「当期の損益として修正するもの」「修正を認めないもの」の3区分に分類し、下記のような表にまとめています。

 【引用】 渡辺(1988)
 前期損益修正項目に関する法人税法

区分

遡及して課税を修正するもの

当期の損益として修正するもの

修正を認めないもの

内在的
前期損益修正事項

A
当期の計算が、事実に反している場合、不合理である場合、税法規定に反している場合

例)
①売上の計上洩れ、②経費の過大計上、③粉飾決算による利益の過大計上、④棚卸評価の誤り、⑤減価償却超過額、⑥引当金の限度超過額、⑦圧縮記帳の限度超過額など

B
左の場合以外の場合

 


 

 

(例)
①欠陥商品についての返品、値引き、②合理的な見積額と実際額の差額、③貸倒債権の取立額など

E
税法上別段の定めがある場合

 

 

 

(例)
①減価償却の不足額、②引当金の不足額、③圧縮記帳の不足額など

 

後発的
前期損益修正事項

C
税法固有の特殊な前期損益修正

(例)
①所得の帰属主体が異なるとして他の納税者に課税された場合、②不服申立ての裁決等により原処分が異動した場合、③租税条約による政府間協議で課税内容が異動する場合など

D
左の場合以外の場合


(例)

①欠陥商品以外の返品、値引き、②売掛債権の貸倒れ損失、③契約の解除、取消し又は失効など

※ 表中のアルファベットは引用者が補完したものです。
 
 法人税基本通達2-2-16に規定する「前期損益修正」Dの領域国通法23②の後発的事由Cの領域に該当するもののようですね。また現在の会計で考えてみると、AやB②、Cなどが過年度遡及会計の対象になる可能性がありそうです。
 
 さらに、「契約の解除、取消し等の後発的理由に基づく前期損益修正の法人税法上の取扱いをめぐっては、過去様々の個別事案が集積しており、裁判例もいくつか存在する」(p53)として下記のような事例を紹介されています(本ブログ記事の末をご参照下さい。)
 
 
4. (整理4)前期損益修正と除斥期間との関係
 また、税務固有の「前期損益修正」の論点として、「除斥期間」との関係についても少し触れておきます。
 八ツ尾順二先生判例・裁決からみる法人税損金経理の判断と実務 」(清文社、2011)の表が判り易かったので、引用させて頂きます。
【引用】 八ツ尾、pp24~25
 また、例えば、過去において処理の誤り(費用計上の洩れ、売上の洩れなど)を是正する場合には、会計上では発見された事業年度において前期損益修正損(又は益)の勘定科目で、処理することもあるが、この場合には、その「損」又は「益」について、「除斥期間」の範囲内において、損金算入又は益金算入が認められることになる。

40-image2.jpg


 したがって、過年度に帰属する費用については、「除斥期間」(法律関係を速やかに確定させるために、一定期間の経過によって権利を消滅させる制度)が経過していれば、損金として処理することはできない。また、逆に益金に関しても、除斥期間が経過していれば、原則として課税されることはない。

 上記の処理と結論は、原則として同一になるが、武田昌輔名誉教授は、「(会計上は、)…過去における誤謬があった場合等の処理については明確にされていないが、その誤謬が明らかになった場合には、これを前期損益修正として処理するほかないと考える。つまり、その誤謬が明らかになった過年度における財務諸表を遡って作り直すことができないからである。この点に関しては、…税法上は、前期損益修正は、原則として存しないのであって、それらの損益はそれぞれの過年度分の各事業年度に帰属することとなることに留意するべきである」(「税務事例Vol.42 No.4」74頁)。

 実務において、上記に基づく「簡便な処理」をすると、前期損益修正損については、申告書の別表四で加算する場合(除斥期間既経過)としない場合(除斥期間未経過)に分けることができる。

40-image3.jpg 
 
 
5. 本問の検討
 少し「前期損益修正」の整理の説明が長くなりましたが、本問の「遺留分減殺請求があった場合の価額弁償があった場合」を「前期損益修正」として検討してみたいと思います。
(1)法基通2-2-16との関係
 法基通2-2-16に規定する「契約解除・取消し」と、「遺留分減殺請求」と「価額弁償」は、遡及的に効果を生ずる点や、形成権(単独の意思表示により法律効果を生じさせる権利)である点について民法上の取り扱いに共通点があるため、もともとの通達の趣旨に合致する例であると思われます。

 しかし、「契約解除・取消し」は継続企業の事業活動として、比較的経常性があると認められるのに対し、「遺留分減殺請求」「価額弁償」は非経常的なものと認められる点が相違します。金額のインパクト等を考えた場合、この通達の理由だけで当事業年度の損金算入を主張するには、いささか心許ない気もします。

(2)渡辺先生の前期損益修正の整理への当てはめ
 そこで、渡辺先生の前期損益修正の区分を利用させていただくと、「遺留分減殺請求」から「価額弁償」に至る行為は、「当初の決算時(前期)においては正当な処理であったものが、その後の情況の変化等により修正を余儀なくされるもの」であるため「後発的前期損益修正事項」に該当します。

 さらに「現物返還」ならば、「所得の帰属主体が異なるとして他の納税者に課税された場合」にあたり国通法23②の「後発的事由」に該当しますが、「価額弁償」の場合、前回の平成4年判決によれば、被相続人の所得税法59条「みなし譲渡」の取扱い上、「課税関係に何ら影響を及ぼさない」とされることから、この「後発的事由」には当たりません。従って、上図のDの領域に該当するものとして、当期における損益修正を行うものと見ることもできると思います。

※ ここで遺留分権利者は、価額弁償があった日の翌日から4月以内に相続税の期限後申告(相法30)ないし修正申告(相法31)を行うことになりますが、これは国通法23の後発的事由でなく、相続税法固有の後発的事由(相法32③)により行われるものです。ただ、これは財産課税上の後発的事由であり、この申告により所得課税上の所得の帰属が異動する等の状況には至りません。その意味でも法人税・所得税の課税関係については「何ら影響を及ぼさない」と言えます。

(3) 除斥期間との関連
 当該損失は、過年度の費用・損失に当たらないため、この論点とは関連しません
  よって、「前期損益修正」の位置づけで、当期の損金に算入しうる―という筋立てですが…(2)が少し苦しいですかね(笑)



 
6. 感想等
 よって、本問の価額弁償金の損金算入時期のコメントは、最高裁平成4年判決を知っていれば、それをベースに解答する、知らなければ「前期損益修正損」の建付けでコメントしてみる―という解答方針になりますかね。
 
(1)最高裁平成4年判決をベースとした解答例
 「Yの相続人の遺留分減殺請求に応じ、甲社が価格弁償を選択した場合においても、Yから遺贈されたという事実及び課税関係には何ら変わりはないため、既往の修正をするに及ばない。よって、価額弁償金30,000,000円は価額弁償金を支払った当期の損金に算入される。」
(2)前期損益修正(法基通2-2-16の逐条解説を流用)
 「Yの相続人の遺留分減殺請求に応じ、甲社が価格弁償を選択した場合においても、法人税法上は、民法の取扱いにのみ依拠するものでなく、経済的観測により損益を認識される。前期の遺贈に伴う税務処理は正当なものであり、その後の価額弁償により生じる前期損益修正は、既往に遡る理由がないため、価額弁償金30,000,000円は、当期の損金の額に算入される。」
 どちらにしても、私レベルの人間では、試験会場で書けるかと言われれば無理ですね(当時の各専門学校でも埋没問題となっていたようです)。この問題に立ち向かった当時の受験生は尊敬します!
 
 このブログの上の見解もあんまり自信はありませんので、あしからず<(_)>。
 「素養」がないのかしら…。また勉強のやり直しです!

 
最後までご覧頂き、有難うございます。
いつも長文で申し訳ございません<(_)>
一応、FC2ブログランキングに参加しているのですが…(記事がまだまだ未熟なので)
気休めに、ポッチっとして頂けると嬉しいです!
↓↓↓↓↓
 
 
 
【参考】
渡辺(1988) 前期損益修正の個別事例及び裁決裁判例(p53~55)を整理したもの
 
遡及して課税関係を修正するもの
当期の損益として処理するもの
個別
事例
○得意先に対する売掛金を誤って重複計上し、それに基づき法人税の確定申告書を提出した場合には、更正の請求ができるとした事例
 
○会社の解散後に土地の売買契約がやむを得ない理由により解除された場合に、当初に遡って課税を修正し、税額を還付することを相当とした事例
 
○土地重課税の対象となった土地の売買契約が解除された場合の土地重課税の更正請求は、契約解除の日から2か月を経過していても、法定申告期限から1年以内であれば認めるとした事例
○前期に納入した特注機械について、故障頻発のため売買契約の特約条項に基づき当期に返品される場合、前期の所得を更正しないで、契約解除の事実が発生した当期において、前期損益修正損として損金算入するとした事例
 
○土地の売買契約が解除権の行使により解約された場合でも、その解約による損失(売買利益の取消し)はその解約のあった事業年度の損金とし、当初の事業年度に遡って課税を訂正することはしないとして、更正の請求を認めなかった事例
 
○土地重課税の対象となった譲渡土地を買主の契約不履行のため売買契約を解除し併せて違約金を徴収した場合に、土地重課税につき更正の請求ができる金額は当初の譲渡利益金額とし、違約金はその額が確定した日を含む事業年度の益金とするとした事例
 
裁決
判例
 
○過年度の益金の額に算入した受取利息のうち、制限超過利息を本件調停により残存元本に充当したことに伴い受取利息の額を減額したことが、国税通則法第23条第2項第1号に規定する更正請求ができる後発的事由に該当する旨の主張について、同項の規定は国税一般についての吏正の請求の手続を一般的に定めたものであり、同項各号の一に該当することを理由として更正の請求がなされた場合には、個々の税法の課税要件の実体規定に基づいて課税標準等の変動をどのように取扱うことが法律の規定に合致するか、その内容をよく吟味して判断すべきであるところ、現行の法人税法は、期間損益課税を建前とし、同法第22条第4項の規定により、一般に公正妥当な会計処理の基準に従って各事業年度の所得の金額の計算をするものとされ、後発的事由が生じた場合には、その事由の発生した事業年度の特別損失とし二(「前期損益修正」の項目で会計処理することになり、一般にこの処理が定着しているものとみられるから、このような会計慣行を前提とする法人税法においては、後発的事由が生じたとしても、過年度に遡って所得の金額を修正すべきではないと解するのが相当である(昭和56.4.17国税不服審判所裁決、裁決事例集22巻1頁)。
 
○売上品のうち、品質不良を理由として当該事業年度後において返品されたものであり、これに相当する金額を買主に返還しなければならず、契約解除の効力は契約締結の当初に遡及するから、当該事業年度に遡って損失として控除すべきであるとの主張に対し、その主張するような金額相当の返品があったかどうか必ずしも明らかでないばかりでなく、仮にその主張するような金額の返品があったとしても、このような返品による損失は、返品の行なわれた年度における損失としてこれを計上すべく、既に期末の決算を終了し、所得申告の期日を経過した既往の年度にまで遡ってこれを損失に計上すぺきでないとしてこれを排斥した事例(昭和41.4.30金沢地判・税資50号308頁)。
 
○土地売買契約が全部解除されたとしても、所有権移転登記がなされた土地については、それぞれ48年5月期及び49年5月期の各事業年度において引渡しがなされ、その販売収益はそれぞれの事業年度において発生し実現しているのであるから、解除に基づく販売収益の減少は現実に売買代金の返還がなされた事業年度の損金として処理すれば足り、48年5月期及び49年5月期に収益が生じた事実を既往に遡って訂正までする必要性は存しないものといわざるをえない(昭和58.2.18長崎地判・税資129号185頁)。
 
○仮に契約が全部解除されたとしても57筆及び2筆の土地は各事業年度で引渡しがされたと認定できるから収益はそれぞれの事業年度に発生、実現しており、解除に基づく販売収益の減少は現実に物件の返還がなされた日の属する事業年度の売上高から控除して処理すれば足り、既往に遡って訂正までする必要性は存しない(昭和60.4.24福岡高判・税資145号193頁)。
 
○法人の所得の計算については、当期において生じた損失は、その発生事由を問わず当期に生じた益金と対応させて当期において経理処理すべきものであって、その発生事由が売買契約の解除によるものである等既往の事業年度の益金に対応するものであっても、その事業年度に遡って損金としての処理はしないというのが、一般的な会計の処理であるということができる(昭和60.7.3横浜地判)。
 
 
 
 
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