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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第41回 私の実務必携本(5) 自己株式―時価以外で取得した場合の発行法人の取扱いは二説あるので注意!

よくわかる自己株式の実務処理Q&A(第2版)
 有田賢臣、金子登志夫、高橋昭彦著、中央経済社、2010年
よくわかる自己株式の実務処理Q&A―法務・会計・税務の急所と対策よくわかる自己株式の実務処理Q&A―法務・会計・税務の急所と対策
(2010/09)
有田 賢臣、高橋 昭彦 他

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[購入動機] 書名・内容
[コメント] コンパクトな分量に情報満載。使えるフォーマット・文書例が豊富。充実した本です。


【参考】
自己株式の会計と申告実務Q&A(第4版)
 渡邊芳樹、佐藤正樹著、中央経済社、2010年
自己株式の会計と申告実務Q&A自己株式の会計と申告実務Q&A
(2010/09)
渡邊 芳樹、佐藤 正樹 他

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【今回の記事の目次】

 1. 「4G」?の自己株式「税理」20131月号 相田先生の記事
 2. 自己株式のオススメ本
    ―基本書は2冊。ただし両者で見解が違う論点がある。
 3. 二説ある自己株式を低額取得した場合の発行会社の税務(受贈益計上or不計上)

 4. 処理混乱の事情―H13立法担当者の解説
 5. 発行法人の受贈益・寄附金不計上説
    ―「よくわかる自己株式の実務処理Q&A(第2版)
 
6. 発行法人の受贈益・寄附金計上説
    ―「自己株式の会計と申告実務Q&A(第4版)」

 7. 6の図表の「下絵」
    ―租税調査会研究報告第7「自己株式等の資本取引に係る税務」の当初版(H14
 8. 感想等



 今回は久々に「私の実務必携本」を記したいと思います。テーマは「自己株式」です。


■ 1.
 「4G」?の自己株式「税理」20131月号 相田先生の記事


 税理士の相田裕郎先生が、税理 2013年 01月号 [雑誌] で「自己株式の税制」の沿革を次のような一表にまとめられています。

【引用】 税理 2013年 01月号 [雑誌]  相田(2013) p60

 自己株式の課税関係については、税制の改正の歴史を理解することが必要である。商法の改正によって自己株式の取得が許される場面が大きく拡大し、ほとんど自由に自己株式が取得できるようになった。そして、その思想は会社法に承継された。

 自己株式は、税務上は矛盾のある存在であり、これについて整合性のある理屈を構築することは困難であった。そのために、法人税法も試行錯誤を繰り返し、次のような変遷を辿っている。商法と会社法に追従し、かつ、税法理論の整合性を図るための歴史であった。

41-image1.jpg

1時代…会社にとって資産(借方)であり、株主にとっては譲渡所得の時代

2時代…会社にとって資産(借方)であり、株主にとっては配当所得の時代

3時代…会社にとって資本の払戻し(貸方)で、株主にとっては配当所得の時代

4時代…第3時代に加え、親会社の株式譲渡損の計上が禁止されている時代

      …第3時代に加え、配当の益金不算入が否定される時代

 当初私、「第4世代」と読み間違えていて、「携帯電話になぞって例えられるなんで上手い事を言う先生がいるなあ~」と思っておりましたが、「第4時代」でしたね(笑)。とはいえ、これはこれで、シンプルでとても上手い整理の仕方ですね。分かりやすい。このようなまとめ方は、借地権税制やその他の税制の説明にも使えるのではないでしょうか。(橋本先生など税制の理解の前提として、著書でその制度沿革を必ずまとめて説明なさっている先生もいらっしゃいますし…)。非常に参考になります。


 ちなみに、この区分を用いて、もう少し詳細に書いてみると次のような感じですかね。

41-image2.jpg 

 この「第1時代から第2時代」「第2時代から第3時代」の制度改編時は巷で「金庫株本」「ストックオブション本」など自己株式関係の書籍が溢れておりました。その多くは改正法令のキャッチアップを念頭に急いで作られた「条文の羅列」型のものばかり。そのような本は徐々に淘汰されていき、現在残っている「第4時代」「第4世代」―「4G」の自己株式の書籍は大変良くまとまってものになっています。

 



 

■ 2. 自己株式のオススメ本―基本書は2冊。ただし両者で見解が違う論点がある。


 「自己株式」を中心としてまとめられた本の個人的なオススメは、基本的なものが2冊。どちらも別表調理の仕方が詳細に解説されています。あとは事業承継や種類株、組織再編成、グループ税制などテーマに応じた書籍を選ぶのが良いのかなと、感じます。

1)有田賢臣、金子登志雄、高橋昭彦著、
よくわかる自己株式の実務処理Q&A―法務・会計・税務の急所と対策 (第2版)」
中央経済社、2010


2)渡邊芳樹、佐藤正樹著、
自己株式の会計と申告実務Q&A (第4版)」中央経済社、2010


3)その他テーマに応じた書籍

  ― 牧口晴一、齋藤孝一著「非公開株式譲渡の法務・税務」、中央経済社、2011年など

  (1)は会計士・司法書士・税理士の3名の先生が書かれた本。(2)は会計士の先生の2人で書かれた本。執筆陣の特徴も本の内容によく表れていると思います。

 

[各書籍の特徴]

1)「よくわかる自己株式の実務処理Q&A(第2版)」(中央経済社、2010年)

① コンパクトにまとまっている!

 この本の副題の「法務・会計・税務の急所と対策」というのが、この本の内容をズバリ示しています。 約240頁のコンパクトな分量に実務で困りそうな論点が詰められるだけ詰め込んである―そんな書籍です。

 文章も平明で明快。実務的な語り口で説明されています。法律専門家(司法書士の先生)が執筆陣に入られているので、このようなトーンになっているのでしょうか。無駄な説明などがかなり削ぎ落とされていますので、逆にいうと、経理初級者の方などには不親切に思われているかもしれませんね(これは仕訳を書いてあげないと分からないかも…というものはあります)。とはいえ、一文一文が考えられているなあ―と感じます。

 

② 使えそうなフォーマットを多数収録!

 この本の二つ目の特徴は、使えそうなフォーマットが多数収録されていること。こんな計算書があったらいいな…というものが沢山あります。本書のオリジナルの書式だと思いますが、表名だけ記していくと―


 「【表1】分配可能額計算表」「【表2】のれん等調整額」「【表3】出資不足額」「【表4】連結配当規制調整額」「【表5】剰余金の科目振替による調整」「【表6】剰余金の配当による調整」「【表7】自己株式の消却・処分による調整」「【表8】吸収型組織再編成行為による調整」…

 これらはほんの一部ですが、その他計算・チェックで使えそうなものも豊富です。

 執筆陣に司法書士の先生もいらっしゃるので、議事録例・通知書なども豊富で目配りができているという印象です。

 

③ カユイところに手が届く―手続論点も豊富!

 お恥かしながら…私もこの書籍で見るまで知らなかったのですが、自己株式の取得の際に「みなし配当」があるときと、ないときで発行する支払調書の種類が違うのですね…(本書pp2932)。

みなし配当課税が行われない場合の支払調書

交付金銭等の支払調書・同支払調書合計表

[提出期限]
 自己株式の取得対価の支払が確定した日(申込期日)の属する年の翌年131

[提出先] 納税地の所轄税務署長


※株主に対する自己株式の取得対価の額が30万円以下である場合には提出不要。

みなし配当課税が行われる場合の支払調書

配当等とみなす金額に関する支払調書(支払通知書)・同支払調書合計表

[提出期限]
 自己株式の取得対価の支払が確定した日(申込期日)から1月以内

[提出先] 納税地の所轄税務所長

株主にも支払調書(支払通知書)を交付する


※株主に対する自己株式の取得対価の額が15,000円以下である場合には、税務署長への提出不要。

 

 その他「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」などの税務フォーマットが収録されています。

 

2)「自己株式の会計と申告実務Q&A(第4版)」(中央経済社、2010年)

 ポイントを丁寧に解説・会計基準への言及が多い。

 「会計と申告実務」という書名でもあり、執筆陣が会計士の先生ですので、会計基準等への言及が多いですが、法務(会社法)についても触れながら説明されています。(1)の書籍の雰囲気とは対照的に、スキーム図等を交えながら、ポイントとなる部分を丁寧に説明をしている―そんな印象を持つ本です。自己株式の価額については、税務上の価額だけでなく、DCFなどにも触れられています。

                           

② 制度沿革の解説あり

 冒頭の相田先生の記述と重なるところがありますが、こちらの本でも自己株式の制度沿革等についての解説がります。

 

 ただ、こちらの2冊は、自己株式の発行法人の税務について異なるスタンスで解説しています。

 1)の書籍では、低額譲渡又は高額譲渡された自己株式の取得・処分は、資本等取引として寄附金・受贈益を認識しない立場2)の書籍では、寄附金・受贈益を認識する立場で書かれています。

 両方購入するのが良いかもしれませんが、もし、どちらか1冊のみ購入される場合、その点は承知しておいた方が良いと思います(2冊とも「二説あります」というハッキリとした excuse はなく、自説を記している印象なので…)。


 

 

■ 3.  二説ある自己株式を低額取得した場合の発行会社の税務(受贈益計上or不計上)


 このあたりのことが成松洋一先生の著作では、下記のように解説されています。

成松洋一著「Q&A 会社法・会計と法人税の異同点」(税務研究会出版局H24


【引用】 pp2021

4-2 株式の発行会社が自己株式を低廉取得する場合の発行会社と株主の課税関係

(略)

4) 一方、自己株式の発行会社にとっては、自己株式の取得金額が時価に比して低額であったとしても、自己株式の取得、処分は資本等取引であり、会社に経済的価値は流入せず利益を得ているわけではありませんから、基本的に受贈益は生じないものと考えます。

 仮に、自己株式を時価に比して低額で取得した場合には、株主間において贈与関係が生じるものと考えます。

 ただし、このような考え方の一方で、まず、はじめに受贈益という損益取引があり、その次に自己株式の取得という資本等取引があると観念し、受贈益を認識すべきであるとする考え方などもみられます。今後の議論を注目していく必要があるでしょう。

 この「経済的価値の流入」という表現は、金子宏先生の著作において、「無償取引」の論点で次のように説明されています。

金子宏著「租税法 第17版 (法律学講座双書) 」 法人税 益金の意義より引用


【引用】 p279280 (一部略)

 収益とは、外部からの経済的な価値の流入であり、無償取引の場合には経済的価値の流入がそもそも存在しないことにかんがみると、この規定は、正常な対価で取引を行った者との間の負担の公平を維持し、同時に法人間の競争中立性を確保するために、無償取引からも収益が生ずることを擬制した創設的規定であると解すべきであろう(適正所得算出説)

 (略)

 この規定は、無償(低価を含むと解すべきである)による資産の譲受けその他の取引からも収益が生ずる旨を定めている。したがって債務免除益、メーカーの負担で店舗内に陳列販売コーナーを設置してもらった場合の経済的利益相当額、株式を低額で譲り受けた場合の時価との差額に相当する受贈益等、無償の経済的価値の流入が広く益金に含まれると解すべきである。

 

 

■ 4. 処理混乱の事情―H13立法担当者の解説


 H13改正では、成松先生の記述の通り、税務上の自己株式の取扱いは、有価証券という位置づけから、純資産―「資本等取引」に変更されました。この際に自己株式は、「資産」でなくなったため、「無償の資産の譲り受け」というカテゴリーには入らず、「資本等取引」となったことから、無償ないし低額で自己株式を取得した場合でも、益金を構成することはない―と考える方が多いのではないでしょうか。

 

 それでも受贈益計上説を唱える方も少なからずいらっしゃる―このあたりは組織再編成を絡めたH13改正時の当局の意図や、それに基づき説明された当局の説明が一部混乱を招いたのではないか―と当時の立法担当者の説明があるようです。「よくわかる自己株式の実務処理Q&A」では、その記事を転載しています。

よくわかる自己株式の実務処理Q&A(第2版)
日本税制研究所レポートNo.412010.6.1)/転載記事の
要約 p137

法法24解釈の変遷

H13改正時の法24①・所法25

「次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合」の解釈

法法24①(配当等とみなす金額)

所法25(配当等とみなす金額)

法人税法における基本的な考え方

(「取引」の取扱いの整備)

資本等取引であっても「取引」である以上は損益取引と同様に適正な対価で行う必要がある。

⇒ 金銭不交付の場合に24①の適用がないということでは課税上弊害がある。

H13改正では法法24①に倣った文言で改正

・源泉徴収の場面での「次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合」(所法25①)の解釈

現に金銭その他の交付を受けた場合のみ該当。

個人株主と法人株主の取扱いの相違に疑問が投げかけられる。

(法人税法の資本等取引の混迷の一端)

・ 規定の文言「金銭その他の資産の交付を受けた」という表現

・ 法人株主ではみなし配当が課税所得を減少させることが少なくない
                  (受取配当益金不算入の適用など)

⇒ この相違に正面から検討を行って、その内容を明らかにするといったこともないまま、法法24①に関しても、所法25①と同様に解するという空気が何とはなしに醸成。

 まあ、このような経緯だけでなく、某有名な先生が受贈益課税説を書いていたこともありますのが…
 

 ただ、法法24①に関しても、所法25①と同様に解するという空気が何とはなしに醸成という部分に関して言えば、東京国税局総務部税務相談室の職員の方の個人的見解によりまとめられたとされている「税務相談事例集」でも、記述に下記のような変化がある―との指摘があります。

税理Vol.54 Np.15 201112月号 
掛川雅仁「自己株式の取得におけるみなし配当課税」


【引用】 p53

 なお、「自己株式の売買価額を時価より低額としたことが、何らかの利益移転を目的とした損益取引と資本等取引とを抱合せにした結果であると認められる場合には、売買価額を時価に引き直したところにより課税関係が整理されることもある」とも指摘されていた(※27)が、この記述は同書の平成21年版(※28)からは削除されている。

27 由比祝生編「税務相談事例集」(H19版)(大蔵財務協会)100

28 土田一夫編「税務相談事例集」(H21版)(大蔵財務協会)

 

 

 

 

■ 5. 発行法人の受贈益・寄附金不計上説
      ―「よくわかる自己株式の実務処理Q&A(第2版)


 「よくわかる自己株式の実務処理Q&A(第2版)」における「受贈益・寄附金不計上説」の解説を要約すると下記の通りとなります。

よくわかる自己株式の実務処理Q&A(第2版) 要約


【自己株式の取得】 p135

(発行法人)

① 自己株式を取得した場合、「交付金銭等の額」を資本の払戻し額と利益積立金の払戻し額に区分して、資本金との額及び利益積立金額を減少させる(法令8①二十、9①十)


② 自己株式の取得価額>取得資本金額の場合、

 ・ 「利益積立金額の減少額」=「自己株式の取得価額が取得資本金額を超える部分」

 ・ 「資本金等の額の減少額」=「取得資本金額」  となる。


③ この場合、


(自己株式を高額購入したとき)  実際の高額の取得価額=「交付金銭等の額」

 利益積立金の減少額が増加するだけ (寄附金・受贈益は認識しない)。


(自己株式を低額購入したとき)  実際の少額の取得価額=「交付金銭等の額」

 取得価額>取得資本金額ならば、利益積立金の減少額が減少するだけ。

 取得価額<取得資本金額ならば、
  資本金の額の額=取得資本金額(利益積立金額の減少額 0)となるだけ
                         
(寄付金・受贈益は認識されない)


④ ただし、この規定を逆手にとって、意図的に利益移転するような取引についてまで受贈益課税がなされない保証はない。             


【自己株式の処分】 p218

(発行法人)

① 自己株式を処分する場合、「払い込まれた金銭の額及び給付を受けた金銭以外の資産の価額その他の対価の額に相当する金額」いついて資本金等の額を増加させる(法令8①一)。


② 従って、自己株式を時価より低額・高額処分した場合でも、時価で処分した場合の税務処理を異なるところはない。つまり、自己株式の時価と払込金額等との差額を寄附金・受贈益として認識しない(発行会社においては、何らの課税関係は生じない)。


③ ただし、この規定を逆手にとって、意図的に利益移転するような取引についてまで受贈益課税がなされない保証はない。

 

※この「意図的に利益移転するような取引」というところはソツがありませんね(役員賞与を乗っけてしまおうという発想で行われる取引など)。事実認定の問題ではありますが、この辺りのことを仕訳で示している会計事務所のレターを、よくお見受けします。



 

 

■ 6. 発行法人の受贈益・寄附金計上説
      ―「自己株式の会計と申告実務Q&A(第4版)」


 一方、「自己株式の会計と申告実務」における「受贈益・寄附金計上説」を要約すると、下記のとおりとなります。

自己株式の会計と申告税務Q&A 第4版、要約


【自己株式の取得】 pp145pp147

 非上場株式における相対取引では、下記の金額がみなし配当とされる(法法24①、所法25①

   みなし配当 = 交付金銭等の金額 - 取得資本金


② ①の交付金銭等の金額=自己株式の「取得のために要した金額」となる。その金額が、適正な時価から乖離した場合に課税関係が問題となる。

 なぜならば、自己株式は経済的価値を有する「資産」であり、法人税は「資産の取得」について法法22に無償による「資産の譲り受け」の定めがあることから、「法人税の取引は時価による」という結論を得る。


③ したがって、上記の交付金銭等の金額が自己株式の適正な時価と乖離した場合には、法法24①並びに所法25①の規定に関係なく税務上、適正な時価に基づいて認定課税が行われることが原則となる。

 この場合、低額譲渡のときは、認定課税差額(交付金銭等の金額と適正な時価との差額)が、課税対象となる。この適正な時価が取得資本金額を超えるときに、「みなし配当」が生じる。

 一方、高額譲渡のときは、資本の払戻しという観点から、認定課税差額(交付金銭等の金額と適正な時価との差額)をみなし配当とみる考え方がある。


時価以外の自己株式の取得取引と税務上の取扱い(p146

譲渡の形態

高額譲渡

低額譲渡

売主側

(株主)

買主側

(発行法人)

売主側

(株主)

買主側

(発行法人)

法人から法人への譲渡

受贈益課税

1

寄附金認定

2

寄附金認定

3

受贈益課税

4

個人から個人への譲渡

給与、一時又は雑所得※5

寄附金認定又は役員賞与※6

みなし譲渡益課税※7

受贈益課税

4


※1

認定課税差額につき、株式売却益から受贈益に振替(課税所得に影響なし)。

※2

認定課税差額につき、自己株式から寄附金に振替。

(減・留)自己株式寄附金認容、(加・社)寄附金の損金算入限度超過額

※3

「税務上の時価」=「交付金銭等の額」とみなし、みなし配当・株式譲渡損益を計算。認定課税差額につき、寄附金として処理。

※4

認定課税差額につき、(加・留)自己株式受贈益。

税務上の時価>取得資本金額のときは、配当として社外流出すると同時に自己株式の帳簿価額を減額…相基通9-2(記載ママ)

※5

認定課税差額については、個人株主=役員・従業員であれば「給与所得」、その他の個人であれば、「一時所得」又は「雑所得」として課税

※6

※2と同様。ただし、売主=役員の場合には「役員賞与」。

※7

時価の1/2以上の譲渡の場合みなし譲渡益課税なし

ただし、所法157の同族会社の行為計算否認の場合、みなし譲渡(所基通59-6

(注)H22年度の100%グループ税制は考慮外。



【自己株式の処分】 p147148

① 自己株式を譲渡した場合、対価相当額は資本金等の額の増加額とされる(法法2①十六、法法8①一)


② そこで、自己株式の処分が行われる場合に、売却価額と時価に差額があるときは、自己株式の取得の時と同様に認定課税が行われる(寄附金・受贈益課税がなされる)。


時価以外の自己株式処分取引と税務上の取扱い(p147

譲渡の形態

高額譲渡

低額譲渡

売主側

(発行法人)

買主側

(株主)

売主側

(発行法人)

買主側

(株主)

法人への譲渡

受贈益課税

寄附金認定

寄附金認定

受贈益課税

個人への譲渡

受贈益課税

高額相当分、
取得価額減額

寄附金 または認定賞与

給与所得または一時(雑)所得

 


 

■ 7. 6の図表の「下絵」
  ―租税調査会研究報告第7「自己株式等の資本取引に係る税務」の当初版(H14


 まず「自己株式の会計と申告税務Q&A」で用いられた図表については「下絵」があります。こちらは、日本公認会計士協会租税調査会研究報告第7「自己株式等の資本取引に係る税務」H14において、当初記載されていた図表になります(取得P6、処分P

【参考】 日本公認会計士協会「自己株式等の資本取引に係る税務」(H14.7.29版)

 

 この当初版(H14)は、上記3の立法担当者が経緯として語っていたところ―H13改正当時は、「法人税の取引はあくまでも時価による」(金銭不交付で法法24①が不適用では問題がある)とした法人税の立法担当者が意図していたこと―の課税当局のH13当時の立法趣旨の説明にリードされた論調で記されたものと思われます。

 

 ただ、こちらのp6p9の記載については、H16改定版では削除されています。そのあたりの事情は、平成24年版では下記のように記載されています。

【引用】日本公認会計士協会 「自己株式等の資本取引に係る税務」(H24.5改定版)p2

 なお、平成16年5月17日改正までの本研究報告では、時価以外の価額により自己株式の取得や売却が行われた場合の記述がなされていた。上述したように平成18年改正税法では、自己株式の取引を保有している場合を含め資本等取引に準じて一体化して取り扱うこととなったため、発行会社では時価以外の取引がなされても、実際の取引価額との差額を益金の額や損金の額に算入する必要がないとも考えられる。この点については明確な解釈が現在のところ確立されているとはいい難いので、本研究報告では時価以外の取引がなされた場合の取扱いについては言及しないこととしている。

 公認会計士協会は、発行法人の受贈益課税に関する確たる説が固まっていないということで、この図表の掲載は避けたようですね(国税局員が執筆陣の「税務相談事例集」を同じようなスタンスですかね)。

 

 「自己株式の会計と申告税務Q&A」の執筆陣の先生方は会計士の先生なので、ここのH14版(当初版)で掲載された「下絵」を利用しながら、調査会研究報告7が掲載を取りやめた後も、少し手直しを入れながら(注記記入を入れながら)作成したのかな?―と想像しております(第42010年版)。

 



 

■ 8. 感想等


 私見ですが、自己株式の取得・処分は素直に条文を読めば「資本等取引」のため、受贈益課税が生じない―というのが基本線だと思います。また、所得税の源泉実務において「みなし配当」計算における「交付金銭等」をキャッシュベースと解されているならば、法人・個人の二重課税排除手続きである受取配当益金不算入関連規定である、法法24の「みなし配当」も同様に理解しないとニッチもサッチもいきません。個人的には法法24①に関しても、所法25①と同様に解するという空気が何とはなしに醸成ということは実感として感じております。

 ただ、個人株主(同族)ならば、自己株式の低額譲渡等により既存株主への経済的利益を移転することを意図したこと事実があれば相法9の「みなし贈与」で課税される余地がありますが、法人株主では「オーブンシャ・ホールディング事件」等の事例はあるものの、法人税法の実現主義ベース下でこのような既存株主への経済的利益の移転に対し、積極的に課税の執行することは難しい訳で、自己株式の取得取引は、確かに資本等取引ではありますが、金子先生の著書に説明にあるように、「無償の資産の譲受け」は課税公平性の意図があり創設された―ということを考えると、全く「受贈益課税はない」という話も、悩ましい部分がない訳ではないな…とも感じます(もちろん、既存株主間の経済的利益の異動に課税できないことを、発行法人に課税することで代替えするという発想自体は理論的ではありませんが…)。

※この辺りのことが
最近の難解税制のポイントと実務の落とし穴―10年間の重要改正事項を徹底分析
」(清文社、2011)のpp68~69で記載されていることなのかな?と思います。

 

 他にもこれらの議論を、税大論叢の論文テーマになさっている方がいらっしゃいます。こちらの方は、両説の言い分をかなり詳しくお調べのようです(大変勉強させていただきました<(_)>)。興味のある方はご覧になられて下さい。

 

【参考】 国税庁HP 税大論叢

 自己株式の無償・低廉取得に係る法人税の課税関係 清水秀徳氏(研究科第45期研究員)

テーマ : 会計・税務 / 税理士
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2013-01-27 : 資本金等の額 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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男性/神奈川県/乙女座/AB型

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 税務・会計関係の『積読本』の山を崩したいと、日々研鑽中です。「書評」に至らぬ「感想文」レベルですが、長文(5,000字目途?)の記事を掲載していこうかと思っております。

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