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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第42回 私の実務必携本(6) 外形標準課税―計算フォーマットの「仕掛け」を考える!

Q&Aによる外形標準課税の実務
 都道府県税務研究会編、税務研究会出版局、H16
Q&Aによる外形標準課税の実務Q&Aによる外形標準課税の実務
(2004/05)
都道府県税務研究会

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[購入動機] 書名・内容
[コメント] いわゆる「総務省Q&A」。現在在庫がなく、中古品でしか手に入りませんが良本!

【参考】
第三版 外形標準課税の申告実務ガイド
 多田雄司著、税務研究会出版局、2011年
外形標準課税の申告実務ガイド外形標準課税の申告実務ガイド
(2012/11)
多田 雄司

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【今回の記事の目次】
 1. 事業税の沿革―現行法は一応「4G」の事業税?
 2. 外形標準課税のオススメ本
 3. 計算フォーマットの考え方(付加価値割)
 4. 意外と落とし穴がある資本割計算
 5. 感想等


1. 事業税の沿革―現行法は一応「4G」の事業税?

 前回記事に傚って、事業税の沿革を線表にまとめてみました。
42-image2.jpg  
 【引用・一部改】 多田雄司著「改訂増補版 外形標準課税の申告実務ガイド」
事業税の沿革p3 ※時代区分等を引用者一部改訂
 
道府県
課税標準等
1時代
営業税
(地方税)
11~明29
 
営業税
業種別に定額
(例:諸会社15円以内の定額)
2時代
営業税
(国税)
+付加税
29~大15
営業税
(物品販売業、銀行業等24業種)
営業税付加税
営業税
外形標準(売上金額、建物賃貸価格、従業者数等)各々定める(国税対象以外)
15~昭15
営業収益税
(個人は物品販売業、銀行業等19業種)
営業収益税付加税
営業税
純益
純益、外形標準(収入金額、従業者数)又は定額
15~昭22
営業税
(個人は物品販売、金銭貸付業等28業種)
営業税付加税
純益(営業税は国が徴収して還付税として全額道府県に還付)
3時代
営業税
(地方税)
22~昭23
 
営業税
純益
4時代
事業税
(地方税)
23~昭29
 
事業税及び
特別所得税
所得
収入金額
(昭24電気供給業、ガス供給業、運送業)
シャウプ勧告
(昭25付加価値税創設、赤字法人課税への反発から実施されず昭29廃止)
1次勧告(昭24) 控除式(控除方式の消費型付加価値課税)
2次勧告(昭29) 控除式・加算式(加算方式による所得型付加価値)から選択
29~現在
 
事業税
地方法人特別税
所得
収入金額
29
生命保険事業追加
運送業一部除外

30
損害保険事業追加
32
運送業残り除外
平15
外形標準課税導入
平20
地方法人特別税
導入
 
 「営業税」から「事業税」、「地方税」から「国税」になって、また「地方税」と、「時代の波に呑まれた」税金の一つですね。

 法人事業税の趣旨・目的は、本来的に応益課税に基づくもの(横地平17年(行ウ)第55号「神奈川県企業税条例事件」)とされています。

応益税
行政によるサービスの恩恵を受ける者に対してその恩恵の量に応じて課す租税
物税
物に着目して課税
比例的
課税
地方税の原則
応能税
負担する能力のある者に対してその能力に応じて課す租税
人税
人に着目した課税
累進的
課税
国税の原則
                                         (Wikipediaを要約)

 そのため、事業税の課税標準は、その性格上、「事業の規模または活動量を最もよく具現するもの」であり、「第1時代」やシャウプ勧告による「4時代」当初には収入、従業員、付加価値などの「外形標準課税」が志向されました。しかし、赤字法人にも課税されることへの反発や徴税側の便宜を優先した結果、第4時代は長らく所得割(一部収入割)を課税標準とする時代が続くこととなります。
 
 当時の会計においては、事業税は課税標準として所得割を採用をしているのですが、本来の物税的性格(ビジネス自体に課税している)を鑑みて、税効果会計導入(H11年4月1日開始事業年度)までは、事業税は販売管理費に表示されていました(H11以後、所得割は法人税等表示)。
 
 この「第4時代」はまさに「外形標準課税」導入までの苦しい道程とも言えるかもしれません。

 昭39政府税調から再三「所得型付加価値」課税の議論がなされて以来再三税制改正の俎上にはのぼりましたが、H8及びH11の法人課税小委員会報告で「応益課税としての税の性格の明確化」「税収の安定化」「赤字法人に対する課税の適正化」の実現のために、早期導入が望ましいという意見が付され、H15にようやく外形標準課税の導入に至りました
(その間、H1に「控除方式の消費型付加価値課税」消費税が先に国税で導入されてしまい、H12東京都では資金量が5兆 円以上の銀行等を対象に「業務粗利益」という「外形標準」に課税する銀行税が導入されるなどの騒動もありました)。
 
 会計においても、外形標準課税導入後の付加価値割・資本割部分の事業税は、販管費等表示となり、税効果の実効税率の算定式においても、その部分は含まれないこととされています。
 
 法人税基本通達9-5-2(事業税及び地方法人特別税の損金算入の時期の特例)も、外形標準課税導入にあわせて改定されています。以前は、随分と簡単な書きぶりだったんですけどね…。
 


 
2. 外形標準課税のオススメ本

 外形標準課税の書籍は、H15導入直後はいろいろなものが出版されておりました。現在は一般書店等で目にするものは僅かなもの(ほぼ1冊かと…)となっています。出版社にも在庫がないも多いです(なかなか良いものもあったのですが…)。

 これは、導入直後の社内体制構築や税務調査が一巡したこと、各都道府県が公表している「外形標準のQ&A」(付加価値割・資本割)、「分割基準Q&A」が充実したものになったこと―により需要があまりなくなったということなんでしょうね。

【現在、新刊で入手できる本】
  多田雄司著「第三版 外形標準課税の申告実務ガイド」、税務研究会出版局、2011/11

【現在、新品在庫なし。中古品等で入手できる本のオススメ】
1) 都道府県税務研究会編、「Q&Aによる外形標準課税の実務」、税務研究会出版局、H16.5
2) 梅原伸之、伊藤好司著「新版 ステップアップ 外形標準課税の実務と記載例」、清文社、2006
 現在入手できるものとして挙げられるものは外形標準課税の申告実務ガイドです。こちらは、規定(法令・通達)・外形標準固有の申告書記載例の他にも、「国外において事業を行う特定内国法人の所得割」「収入割」「分割基準」などの外形標準課税以外の論点に触れられています。図表の説明はあまり多くはありませんので、そのあたりは、各都道府県のQ&Aで補完する感じでしょうかね。
 
 現在在庫切れですが、現在中古品などでアマゾン等で入手できるものでは、「Q&Aによる外形標準課税の実務が第一のオススメになります。導入当時のQ&A方式のものとしては、かなり秀逸です。それもそのはず。この本は、もともと当時の総務省担当者が週刊「税務通信」で連載したものを、都道府県税務研究会が加筆修正したものだそうです。ほぼ総務省の作成したQ&Aという位置づけなのでしょうね。各都道府県がQ&A作成時にかなり参考としたのではないでしょうか。(「都道府県税務研究会」は外形標準の本を5冊ほど出していますが、現在はどれも在庫切れです)。

 内容は、図表が豊富で、まさに聞きたいところのFAQが盛り込まれている―A5判のハンディなサイズなので、手許に置いておきたいと思えるものの一つでした(大概の解説は今でもOKかと…)。

 一方のステップアップ 外形標準課税の実務と記載例は、新明細の部分的な記載例を示すに留まらず、決算書・科目情報・別表4・5他一式の資料からの「フルの」明細の記載例を掲載していただいたので、導入直後の申告書作成時には、大変有難かったです。
 

 
 
3. 計算フォーマットの考え方(付加価値割)

 外形標準課税の対象となった会社さんでは、既に自分なりの計算フォーマットを用意されていると思います。特に付加価値割計算は煩雑ですしね(税務調査では提示を求められます)。上記の本では、そのような計算フォーマットの例がないのが残念ですね。
 
 私見ではありますが、どの会社さんが作成されているフォーマットも、「内訳方式」(積上計算型)「加減算方式」(控除型)のどちらかの思考で作成されていると思います。どちらであっても、計算とチェックの両面を意識した作りであるとともに、各契約書・給与資料等との照合(リファレンス)が取れるもの、最終値がそのまま明細記載数値にヒットするような一覧性がある表を作成することが肝要であると思われます。
 
 「内訳方式」は、相手先・項目別に課税対象・課税対象外に数値を区分した明細を作成するタイプの計算フォーマットです。付加価値割の計算要素に用いるものは「人件費」「地代家賃」「借入金・利息」「雑益・雑損」なので、税務申告書添付用の内訳書や消費税のチェックで外形標準課税がなくとも決算で確認すべき勘定科目のものばかりです。これらの決算用の数値に法人税別表の調整数値を加味する形で作成します。実際の明細書の転記を意識したフォーマットですね(ピボットテーブルでも良いかと思います)。
 
 「加減算方式」は別表4の作りのように、PL数値から加算・減算により付加価値割ベースの数値を誘導計算するフォーマットです。

 報酬給与「①給与課税対象であり、かつ②法人税法において損金算入されるもの」が付加価値割の基礎数値となりますので、PLと法人税別表数値を加味した法人税法における損金算入額から、給与課税がされないものを除外している作業を行うこととなります。純支払利子・純支払賃借料も同様にPL・別表の両方の数値を整えた上で、付加価値項目固有の各論点により加減算します(したがって、このフォーマットでも内訳書情報の作成が前提となります)。

 「加減算方式」は、付加価値割の考え方をそのまま「トレース」するような計算フォーマットの作りになりますので、課税洩れ、勘違いなどの検出などのチェックには最適なものと言えます
 

【加減算方式の計算思考―付加価値割】⇒ これをエクセルに落とし込み
                                                           
42-image1.jpg  
 
 
※税込経理の場合には、付加価値割計算から消費税等を除く(消費税も付加価値課税タイプなので)など、各会社・業種に特有の取扱いもあるので、フォーマットを作成する前に、各都道府県のQ&Aはよく読んでおいた方が良いです。

 経理・申告のチェックにおいては、検算者は作成者の用いた手法と違う手法でチェックすることが基本です(作成者が縦計を入れたなら、チェック担当者は横計で合わせる等)。このようなチェックの思考から言えば、作成者・チェック担当者で各々「内訳方式」「加減算方式」で作成できれば良いのですが、時間的制約を考えると、なかなか難しいかもしれませんね。各会社の決算の状況に適ったものを作成することになりますかね。
 
 

 
4. 意外と落とし穴がある資本割計算

 上記の付加価値割計算はなかり煩雑ではありますが、計算の非違項目があったとしても、税率自体が低いため、調査でもあまり大きな金額とならないことがママあります。一方で、資本割のミスは、計算の非違項目というよりは、特例規定を全く考慮していなかったというミス―が意外と多く、例え率が低くとも、課税標準自体が大きいので、大資本の会社では「一体、何十人分の給料になるんだろうか…」という金額のインパクトが生じる場合があります(どちらかというと有利規定の見逃しが多いですかね)。
 
 この点が外形標準に関してはネットで入手した「Q&A」だけに頼らず、解説書を書籍を購入して、一通り目を通してもらった方が良い―という理由でもあります。
【資本割の落とし穴】
(1) 無償減資や資本準備金を取り崩して欠損填補した場合の特例
 法人税の資本金等の額や法人住民税の均等割と異なる発想のため要注意!(有利規定)

(2) 持株会社に係る資本割の金額の圧縮措置
 特定子会社の保有割合が50%超の会社の特例。強烈な減額が入ります(有利規定)。もともと持株会社として設立した会社は、自覚があるので間違えませんが、事業会社が大規模の新子会社を買収・設立した場合などは要注意!(と言っても、なかなか気がつかないことがママあります)

(3) 外国法人の資本金等の額の計算
 計算ロジックは簡単です。ただ、外国法人の本社(本国)に人数情報(全世界の従業員等)をリクエストする際に、「従業員等の範囲」が正確に伝わっていない等の事例もあります。リクエストの際から要求データの範囲を明確に伝えることが必要となりますので、書籍等で規定・取扱いをしっかり確認した方が良いでしょう。
 
 
 
5. 感想等

 その他、添付書類から納付書の書き方となると、「ん?」と考えてしまうことも多いので、もう少し外形標準関係の本が出版されていても良いのかな…と思います。
 もちろん、各都道府県の公表している「Q&A」の詳細さには、頭が下がります。とても重宝ですよね。
【参考】
外形標準関係 神奈川県
 その他各都道府県HPにPDF形式でないQ&Aの掲載があります。見比べてみると、各都道府県の図表の整理など、それぞれで工夫しているのかな?と思えるフシもあります。個人的には、香川県など参考になりました。
【参考】 
香川県 外形標準課税Q&A
 

テーマ : 会計・税務 / 税理士
ジャンル : ビジネス

2013-01-29 : 事業税 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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※H25.9 税理士開業致しました!
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