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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第45回 私の実務必携本(9) 貸倒損失・貸倒引当金―Q&Aと疎明資料のヒントがあるものが良い!

否認を受けないための貸倒引当金の税務(四訂版)
 瀬戸口有雄著、税務研究会出版局、平成20年
否認を受けないための貸倒引当金の税務否認を受けないための貸倒引当金の税務
(2008/04)
瀬戸口 有雄

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[購入動機] 内容
[コメント] 「あったら便利なフォーマット」は秀逸でした。今でも使えるものも多いです!
 
【今回の記事の目次】
1. 国税庁HP 質疑応答(H24.11追加)
  ―担保物があっても法基通9-6-2の貸倒れができる場合
2. 貸倒損失・貸倒引当金のオススメ本―Q&Aと疎明資料のヒントがあるもの
3. オススメ本に掲載されている「フォーマット」・「記載例」の一部
4. 感想等


1. 国税庁HP 質疑応答(H24.11追加)―担保物があっても法基通9-6-2の貸倒れができる場合

 国税庁HP・質疑応答事例にH24.11.2付で追加された貸倒関係の項目が4つあります。
 
このあたりのことも掲載されましたか…という感じですね。(2)の質疑応答は下記の通りです。
【引用】 国税庁HP 質疑応答より
【照会要旨】
 A社は、取引先であるB社に対して1千万円の貸付金を有しており、B社所有の土地に抵当権を設定しています。

 この度B社が倒産したため、貸付金の回収可能性を検討したところ、B社には抵当権の対象となっている土地以外には資産が見当たらない上、A社の抵当権順位は第5順位となっており、B社所有の土地が処分されたとしてもその資産価値が低く、A社に対する配当の見込みが全くないことが判明しました。B社所有の土地の処分によってA社に配当される金額がない場合、B社の資産状況、支払能力等からみて、A社が貸付金の全額を回収できないことは明らかです。

 そこで、A社は、B社所有の土地の処分を待たずに、当期においてこの貸付金について貸倒れとして損金経理しようと考えていますが、税務上もこの処理は認められますか。

【回答要旨】
 当該貸付金については、貸倒れとして損金の額に算入されます。

(理由)
1 法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができることとされています(法人税基本通達9-6-2)。

 この場合において、その金銭債権について担保物があるときは、その担保物の処分後の状況によって回収不能かどうかを判断すべきですから、その担保物を処分し、その処分によって受け入れた金額を控除した残額について、その全額が回収できないかどうかを判定することになります。

2 したがって、原則としては、担保物が劣後抵当権であっても、その担保物を処分した後でなければ貸倒処理を行うことはできません。

 ただし、担保物の適正な評価額からみて、その劣後抵当権が名目的なものであり、実質的に全く担保されていないことが明らかである場合には、担保物はないもの取り扱って差し支えありません。

 お尋ねの場合、A社にとって実質的に全く担保されていないことが判明し、B社の資産状況、支払能力等からみて貸付金の全額が回収不能と判断されるとのことですから、担保物を処分する前であっても貸倒れとして処理することができます。

(注) お尋ねの場合と異なり、担保物の処分によって回収可能な金額がないとは言えない場合には、その担保物を処分した後でなければ貸倒処理することはできません(法人税基本通達9-6-2)。

 なお、担保物の処分による回収可能額がないとは言えないケースであっても、回収可能性のある金額が少額に過ぎず、その担保物の処分に多額の費用が掛かることが見込まれ、既に債務者の債務超過の状態が相当期間継続している場合に、債務者に対して書面により債務免除を行ったときには、その債務免除を行った事業年度において貸倒れとして損金の額に算入されます(法人税基本通達9-6-1(4))。

【関係法令通達】
 法人税基本通達9-6-1(4)、9-6-2
  こちらは質疑応答では「倒産」という表現が何を指しているのか(特別清算・破産等)、ハッキリしていない面もありますし、「B社所有の土地の処分によってA社に配当される金額がない場合、B社の資産状況、支払能力等からみて、A社が貸付金の全額を回収できないことは明らか」という表現も、①土地処分による売却金の配分が劣後債権者であるA社まで回ってこない、②その後破産手続きに参加したとしても、配当を得ることは難しい―と2段階の配分・配当を簡単に表現されているので、他の検討すべき状況(B社の代表取締役が連帯保証している場合、法的処理の進展状況など)なんとも言えない部分もありますが…。
 
45-image1.jpg

 まあ、所謂「形式的な担保物」という事案で雑誌や書籍に、よく紹介されているものではあります。
 根本的な考え方は、瀬戸口有雄先生の「否認を受けないための貸倒損失」(税務研究会出版局)においては、次のような記載があります(以下「初版」(平12)からの引用です)。
【引用】 初版p140
Q2-7 担保物があるときの令96①二と基通9-6-2の関係
 その債務者の清算貸借対照表による資産状況、支払能力等からみて、その全額が回収できない場合において、担保物を有するときに、その担保物の処分の前後、担保物の価値の有無により令第96条第1項第二号と基本通達9-6-2の適用法および相違点はどのようになるのでしょうか。

Answer
 その債務者の清算貸借対照表等による資産状況、支払能力等からみて、有する金銭債権の全額が回収できない場合に、担保物を有しており、その担保物の処分の前後、担保物の価値の有無により、令96条第1項第二号と基本通達9-6-2の適用法および相違点を図に表すと次のようになる。
令96①二
基通9-6-2
担保物処分前
担保物価値有
×
担保物価値無
担保物処分後
担保物価値有
×
担保物価値無
×
   ○=適用あり ×=適用なし
  法人税基本通達9-6-2(回収不能の金銭債権の貸倒れ)では「担保物の有無」「担保物の処分」には触れていますが、「担保物の価値の有無」については直接言及してはいません。「全額を回収することができないことが明らか」というところの解釈の論点として浮上する問題です。ここを上手く疎明資料に結びつけて、税務調査時にミソがつかないようにするのが、腕の見せどころです。
法基通9-6-2の疎明資料の考え方 (平川忠雄編「税務疎明事典 (法人編)」、ぎょうせい、H12)
【引用】 pp285~286
3 疎明資料(証拠資料)
 債務者の資産状況、支払能力を明らかにし、貸金等(当時の記述ママ)の全額が回収不能であることを明らかにする次のような内容が盛り込まれている資料を保存することにより、貸倒損失としての処理が適正であることを証明できる。

「回収不能事実報告書」 「稟議書」 「内容証明郵便」

① 債務者との取引を停止している。
② 債務者が新たな融資を受けていない。
③ 貸金等の回収につき、あらゆる手段、方法等で債務者と折衝し、その回収について努力を行ったが、ついに回収ができなかった事実を明確にする資料、文章等がある。
④ 債務者(保証人を含む)の所有不動産の明細とその評価額の資料がある。
⑤ 債務者とその関係者のうちに経営上、相当の能力、ノウハウを有し、信用が潜在的にあって、再建の可能性を有しているなどの事実が全くあり得ないことを確認できる。
⑥ 債務者の事業内容や業界の動向で、再建の可能性などは全く見当たらず、事業再建の意欲、志気がないことが明確である。
⑦ 債務者が会社であって、その役員等が経営上の責任を負う考えもなく、その資料等も全くないことが明確である。

4 対応策
 債務者の資産状況、支払能力等から回収の努力をしたにもかかわらず、貸金等(※当時の記述ママ)の全額が回収不能であることを実質的に判断できる資料、書類当を整える。
 そして債務者が法人の場合において、解散又は事業閉鎖を行うに至ったこと、債務者が個人の場合には、死亡、失踪、行方不明、受刑執行中といった形式的な事実の発生を契機に貸倒損失として処理し、貸倒れとした判断の妥当性を立証する。
 
 
 
2. 貸倒損失・貸倒引当金のオススメ本―Q&Aと疎明資料のヒントがあるもの

 私が貸倒損失・貸倒引当金の本でオススメしたいのは下記のものです。
(1) 「否認を受けないための貸倒損失の税務 」(2訂増補版)
 瀬戸口有雄著 、税務研究会出版局、2006年

(2)  「
否認を受けないための貸倒引当金の税務」(4訂版)
 瀬戸口有雄著、税務研究会出版局、2008年

(3)  「
貸倒損失・貸倒引当―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ)
  (第3版増補版)  
金井澄雄著、中央経済社、2010年

(4)  「
貸倒損失・貸倒引当金 (法人税の実務Q&Aシリーズ)
 植木康彦著、中央経済社、2011年

※参考
(5)「金融機関の不良債権償却必携―金融円滑化時代の最新の全償却実務を収載
新日本アーンストヤング税理士法人、新日本有限責任監査法人、銀行研修社、2010年

 (1)(2)は瀬戸口先生の本です。どちらも貸倒関係では長らく定番だったものですね。Q&Aが充実している点と(2)に収録されている「あったら便利なフォーマット」が本当に便利です!少し古いので、現在使えそうなものですと「個別評価対象の貸倒引当金繰入額検討表」「回収不能見込額に関する計算明細」「債務者の清算貸借対照表」「担保明細」「貸倒実績率算定表」「実質的に債権と認められないものの算定表」というものがあります。
 
(3)は税務よりも、信用調査、売掛金管理、督促、回収・保全の記述が簡明で良いです。
「集金カード・売掛金管理カード」「売掛金残高確認照合表」「延滞売掛金分析表」「督促状」「債権譲渡証書」「債権譲渡承諾書」「債権譲渡通知書」「代理受領のための委任契約書」「内容証明郵便による催告状(見本)」など、法務の専担者がいらっしゃらないような会社さんは、もっておくと良いかもしれません。
 また、個人が行方不明になった場合の貸倒処理で「郵送物不在通知」で済ますという言い方をせずに、公示送達、近隣・同業者の聞き込み調査書についても触れているところが、この分野に精通されている方だなと感じました(ちなみに、この本の著者は「法人実務問題シリーズ」では珍しく税理士の先生ではありません)。
 
(4)はこの中では、比較的新しいもので「ADR再建手続と貸倒損失」「企業再生支援機構と貸倒損失」「再生支援協議会と貸倒損失」なども収録しています(他のQ&Aも良いものを取り上げていると思います)。
 
 また番外ではありますが、(5)は金融機関に限定した本ですが、一般会社の方も目を通してみると面白いかもしれません。Q&Aなど金融機関の査定実態の雰囲気がわかるものや、「交渉記録カード」などの記載例があるのも参考になります。



 
3. オススメ本に掲載されている「フォーマット」・「記載例」の一部

 では、2のオススメ本の中のフォーマットや記載例の一部をご紹介しましょう。
 瀬戸口先生の「否認を受けないための貸倒引当金の税務」の「あったら便利なフォーマット」は秀逸です(ただ、刊行年から少し経過していますので、一部使えそうにないものもあります)

 私としては、下のものであるとか
45-image2.jpg
 

 上記の検討表は以下「5 連帯保証人等」「6 担保の処分に日時を要する理由(基通11-2-6)」「7 回収不能見込額」「8 資料番号の内容」と続きます(詳しくは「否認されないための貸倒引当金の税務」をご参照ください)

 また、こちらも良いなと思っております。別表11(1の1)の作成基礎として使えると思います。

45-image3.jpg

 また、「金融機関の不良債権償却必携」の「交渉カード」の記載例はこのような感じです。一般会社の記載例としても使えるものが、いくつか掲載されています。

45-image4.jpg



 
4. 感想等

 貸倒れ等、特に法基通9-6-2の認識時期について納税者と課税庁側で対立するケースがありますが、本当に不毛な話であることが多いです。元々、回収ができないことは納税者が一番よく分かっているはず(本当に回収できるんであれば税務署さんが回収してほしいです!)。収束の局面になれば、いつ認識しようが同じような話になります。
 
 そこで貸倒損失の計上事業年度で「つまらない喧嘩」をしないように、疎明資料づくりを徹底することが貸倒損失・貸倒引当金の税務のポイントとなります(要は「資料の残し方」)。そのような意識でフォーマットを作っていただいた瀬戸口先生には本当に頭が下がる思いです<(_)>
 
 また、その疎明資料の「書きぶり」としては①法律的にも、もうやりようがない、②債権者として取りうるべき回収努力を行ったが回収不能である(寄附金を意識)―ことを示さなければいけません。視点を変えてみると、債務者側の法制・税務の精通している方(会社清算・破産・再生法等)が、この分野も得意であると言えると思います。特に債務超過が相当期間なんて、粉飾されていたら一見して分かりませんしね…。勉強することが多いです!ある意味、税理士の腕の見せどころということも言えるかもしれませんが…。
 
 貸倒引当金については大法人では経過措置を経て廃止になりますので、本が出なくなるということになるのも困りますね(まあ中小は現状でも廃止はしないようですが…)
 
 また読んでいませんので上のリストには加えませんでしたが、こちらも目を通しておこうと思っております。
 
【参考】 貸倒損失・貸倒引当金―Q&A 判断の難しい法人税実務
 今井康雅著、税務経理協会、2010年

 
最後までご覧頂き、有難うございます。
いつも長文で申し訳ございません<(_)>
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テーマ : 会計・税務 / 税理士
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2013-02-05 : 貸倒損失・貸倒引当金 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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