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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第51回 今日的確定申告(4) 固定資産税の返還―事業的規模は総収入金額算入・それ以外は修正申告

税理2008年9月号 p229~230
所得税関係 過年分の固定資産税等の返還を受けた場合の取扱い
税理 2008年 09月号 [雑誌]税理 2008年 09月号 [雑誌]
(2008/08/22)
不明

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[購入動機] 時価論点(関係者取引の「適正額」判断)だったので買いました。
[コメント] 税理の後半の税目別インデックスの付いている実務論点は参考になります。

【参考】
所得税法 理論と計算[第六訂版]
 池本征男著、税務経理協会、平成22年
所得税法―理論と計算
所得税法―理論と計算
(2010/07)
池本 征男

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今回の記事の目次
 1. 所得税法に前期損益修正益は有り得るか?
 2. 過年分の固定資産税等の返還を受けた場合―税理2008年9月号
 3. 感想等


1. 所得税法に前期損益修正益は有り得るか?

 企業会計に慣れてしまっていると、所得税の取扱いに、ふと悩んでしまうこともあります。例えば「前期損益修正」。会計では「過年度遡及会計」なるものも導入されましたが、「所得税」的には有り得るの?と考えてしまいます。特に「修正益」サイドを考える前に、「収入金額の計上時期」について見直してみたいと思います。
 
  池本征男先生の「所得税法 理論と計算(第六版)」(税務経理協会、平成22年)の「2 収入金額の計上時期」(pp130~132)では次のように記されています。
【引用】 池本著 pp130~132
1. いわゆる権利確定主義について
 所得税法では、原則として、暦年単位での所得を対象に超過累進税率を適用して課税することとしているから(所法89①)、いつの年分の収入にするかによってその負担額に大きな差が生ずることになる。

 そこで、所得税法では、収入金額の計上時期について、別段の定めがあるものを除き、その年において「収入すべき金額」であると規定しているところである(所法36①)

 そして、「別段の定め」については、①延払条件付販売等に係る収入金額、②工事の請負に係る収入金額、及び③小規模事業者に係る現金主義の明文の規定を置いているが(所法65①~67①)、「収入すべき金額」の一般的な意義については、所得税法上何ら明確な規定がなく、専ら解釈に委ねられている。

 この点に関する実務の取扱いは、かつて「収入金額は収入すべき金額をいい、収入すべき金額とは収入する権利を確定した金額をいうものとする」(旧所基通194)として、いわゆる権利確定主義を標榜し、「詐欺又は強迫により取得した財物は一応所有権が移転するものであるから、当該財物から生ずる利益」及び「賭博による収入」に対しては原則として課税するが、「窃盗・強盗又は横領により取得した財物については、所得税を課さない」としていたところである(旧所基通148)。

 その後、右取扱いは、「収入すべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない」に改められ(所基通36-1)、課税所得は、「法律上の権利」に拘泥せずに、経済的・実施的に把握すべきであろうという考え方に基づいて、「権利の確定」という文言は通達の上では削除されている。

 しかしながら、「収入すべき金額」の解釈について、判例上は、権利確定主義の考え方が定着しているところであり、例えば、最高裁昭和49年3月8日判決(民集28巻2号186頁)では、「所得税は経済的な利得を対象とするものであるから、究極的には実現された収支によってもたらされた所得について課税するのが基本原則であり、ただ、その課税に当たって常に現実収入のときまで課税できないとしたのでは、納税者の恣意を許し、課税の公平を期し難いので、徴税政策上の見地から、収入すべき金額の確定したときを捉えて課税することとしたものである」と判示する(このほか、最高裁昭和40年9月8日判決、刑集19巻6号630頁、同昭和40年9月24日判決、民集19巻6号1688頁、同昭和53年2月24日判決、民集32巻1号43頁などがある)。

 このように、収入すべき時期については、解釈上、現実の収入がなくても、法律上権利が確定したときに課税となるという意味での「権利確定主義」がとられているが、この収入すべき時期について、金子宏東大名誉教授は、「権利の確定という「法的基準」ですべての場合を律するのは妥当でなく、場合によっては、利得が納税者のコントロールのもとに入ったという意味で「管理支配基準」を適用するのが妥当な場合もある」と指摘する(租税法第15版243頁)。
 上記のような理解ならば、企業会計であるような、誤謬あるいは見積もりの訂正であるようなものは当然観念しておりませんね。後発的事象をどのように考えるかというところになります。
 
 この権利確定主義は、「平成22年版 図解 所得税法」によれば、「収入すべき金額」は、①権利が確定していること、②事実が発生していること、③金額が確定していることを要件とするようです(p47)。
 
 
 
 
2. 過年分の固定資産税等の返還を受けた場合―税理2008年9月号

 上の理解でいうと、判りづらいのが、「過年分の固定資産税等の返還を受けた場合」(税理2008年9月号)の取扱いです。
【引用】 税理2008年9月号 p229
過年分の固定資産税等の返還を受けた場合
Q 賃貸の用に供している不動産の固定資産税・都市計画税の課税額が過大であったことが判明し、所定の返還金支払申請書を提出することにより、過去7年間分について過大納付に係る固定資産税・都市計画税が返還されることとなりました。近々、この申請書を提出する予定ですが、返還されることとなる過年度の固定資産税の取扱いはどのようにしたらよいでしょう。

A 不動産貸付けが事業的規模で行われている場合には、返還される7年間分の固定資産税・都市計画税(「固定資産税等」という)を返還金決定通知書が送付された日の属する年分の不動産所得の総収入金額に算入することになります。
 また、不動産の貸付けが事業的規模でない場合には、過去のそれぞれの年分の必要経費に算入した固定資産税等が過大であったとして修正申告することになりますが、この場合の修正申告は直近の5年間について提出できます。
 2006年ぐらいから冷凍倉庫業界などで、固定資産税の過徴収が問題となっていたことを意識した記事ですかね。事業的規模である場合と、事業的規模でない場合で取扱いが異なるよう。その理由として次のように記されています。
【引用】 税理2008年9月号 p230
 企業会計におけるいわゆる前期損益修正について、所得税法の規定についてみると下記のとおりです。

 不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業について、その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金等の事業上の債権の貸倒れが生じた場合には、その生じた日の属する年分のこれらの所得の金額の計算上、必要経費に算入されることとされていますが(所法51②)、この取扱いには事業的規模でない不動産所得は含まれません。

 また、前年以前の年分の総収入金額に算入した金額の全部若しくは一部を回収することができないこととなった場合や返還することとなった場合には、その事実が生じた日の翌日から2月以内に更正の請求ができることとされていますが(所法64①、152)、事業所得の金額並びに不動産所得又は山林所得を生ずる事業から生じたものは、この規定の適用がないこととされています。

 以上の規定振りからすると、不動産所得に係る前期損益修正については、企業会計の取扱い同様、その事実が生じた日の属する年分で処理することとされ、他方、事業的規模以外の場合には、その事実の基となったそれぞれの年分の所得金額を訂正することとなるものと考えられます。
  う~ん。所法51の「資産損失」の中の、債権のもの―いわゆる貸倒損失を前期損益修正の例にし、そこからの類推で、事業的規模と事業的規模以外に取扱いを分けた―というところでしょうかね。ただ、貸倒損失は、いろいろある「前期損益修正」のタイプの中の一つであり(参考 「第40回 税理士試験・へそ曲がりの過去問解答(6) 第58回(H20)法人税法 法人に対する遺留分減殺請求税法上の「前期損益修正」とキチンと向き合う!」の渡辺淑夫先生の整理)、他の「前期損益修正」のすべてのものを、この所法51(資産損失)の規定をもって語ってしまうというのは、少し飛躍している部分があるかなと感じます。
 
 所法51の規定自体は、もともと「前期損益修正」を意識した規定ではありませんからね。その枠組で、事業的規模と事業的規模以外に取扱いに差をつけるというのは、個人的には違和感がなくはありません。
 
 ただ、こちらの発想でいろいろな先生が、同じようなことをおっしゃっています。
 例えば税理2011年12月号「過年分の支払利息の返還を受けた場合の処理」では、次のように記されています。
【引用】 税理2011年12月号 p112
過年分の支払利息の返還を受けた場合の処理
(事例1)
 不動産所得の金額の計算に当たり賃貸用不動産の所得に要した借入金の利子があるため、その利子を毎年必要経費に計上してきた。ところが、平成22年になって、平成20年分と平成21年分の利息の計算に当たり誤って過大に請求されていたため過大分を一括で返還する旨の通知を銀行から受取り、直ちに返還金を受け取った。この場合、返還金をどのように処理したらよいか。

[解説]
 不動産賃貸業が事業的規模の場合は、平成22年分の不動産所得の総収入金額に算入し、また、事業的規模に該当しないあ愛には、平成20年分と平成21年分の不動産所得の必要経費を減額した修正申告を提出することになる。
 理由は、税理2008年9月号の記事と同様です。
 
 また、国税庁HPの質疑応答事例にも「返還を受けた利息制限法の制限超過利息」においても、返還金に付された利息については、その支払いを受けた日の属する年分の雑所得の総収入金額に算入するとの記載がありますが、中段の尚書き以下に「制限超過利息の支払額が各年分の各種所得の金額の計算上必要経費に算入されている場合にはこれを修正する必要があります」とされています。
 
 ここでも事業的規模ならば、制限超過利息の合計額は判決のあった日の属する年分の総収入金額に算入し、事業的規模でないものについては、各年分の所得金額を修正するとの記載があります。
 
 
 
3. 感想等

 このあたりは前提となる費用計上があり、その修正ですので「費用の訂正」という位置づけなのでしょうかね。権利確定主義による「収入すべき金額」とは別モノということなのでしょうが、固定資産税の「過誤納金還付請求」を市所定の請求書を市長に提出することにより、返還を受ける―というような一連の流れを鑑みると、法51②の類推よりも、権利確定主義的に考えた方が馴染むような気がしないでもないです。
 
 一方で、所得税法の方が、企業会計や法人税法よりもより理論的にできているという側面もありますが、事業的規模ならば総収入金額に算入するという取扱いの方が「イレギュラー」であり、もともと過年度の修正申告を行うべきものだ―と言われた方がスッキリしますね。
 
 昨今の確定申告でも、固定資産税の返還は、たまに見ることがあります。それはそれで、「事業的規模」か、「事業的規模以外」かというところで、また悩ましい論点になります。
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