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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第5回 営業権・のれん考(5) 同族会社等の間で行われる営業権取引の否認例

「週刊税務通信」 No.2864  平成1744

「営業権」の理論と実務 第3回 (No.2862より3回連載)

 東急ファイナンスアンドアカウンティング 顧問 税理士 高井寿氏

 税理士法人中央青山 代表社員 公認会計士・税理士 宮川和也氏

  (社名・肩書等は掲載当時のものです。)


週刊税務通信 総索引 平成17年上半期分 

http://www.zeiken.co.jp/tusin_sakuin/200501/tusin_sakuin200501_houjinnzei.htm

【今回の記事の目次】
 1. 同族会社等の間で行われる「営業権取引の否認」(週刊税務通信No.2864 p33~)

 2. 感想等



同族会社等の間で行われる「営業権取引の否認」の判決の解説が、昔の税務通信に掲載がありました。

要約したところを簡単に記しておきます。


1] 同族会社等の間で行われる「営業権取引の否認」(週刊税務通信No.2864 p33~)


事例1: 第二会社設立におけるケース
(昭和4865日横浜地裁 税務訴訟資料 70 208

 P社(化学工業)は、多額の負債を抱え倒産寸前であったため、負債の軽減を企図して第二会社(S社)を設立。このS社にP社の負債の一部2,000万円を引継ぎつつ、同社の塗装事業の「営業権」を引き継がせ、その評価を2,000万円としました。この営業権の評価について、税務当局と納税者が争ったものです。

第5回 image1

 結果としては、S社側で営業権譲受代金の支払ができないため、代表者が2000万円をS社に貸付け、これをP社に支払ったと主張したようですが、P者側でその記帳事実がありませんでした。そのため、S社側の営業権・借入金を認めず、S社の営業権償却否認150万円、支払利息否認180万円とされることで確定しました。

 判決は当然の帰結といえますが…(あんまりな例ですね)

 それはさておき、この判決で注目すべきは、この判決文での「営業権」の存在がなぜ認められないかの詳細な分析であると、筆者を指摘しています。

 【原告S社の主張】

 下記の事情を考慮し、総合評価すれば、営業権2,000万円の評価は相当である。

 ① 営業成績

 P社のS3639までの平均売買利益は年1,510万円で、増加傾向にあり、十分な収益力が認められる。

 ② 特殊な販路

 P社の大手取引先3社に対する有力な販路が承継できる。

 ③ 特殊技術

 P社はS35に特殊なシリコン加工法を開発。海外特許を回避することに成功し、当該製品を大手に納品。

 ④ 建物の賃貸借及び材料・設備の低廉譲受け

 P社の土地(時価7,000万円)、建物(時価1,000万円)を賃料月50万円・権利金なしという有利な条件で賃借。また、P社所有の材料365万円、設備342万円と時価よりはるかに低廉に譲り受けた。

 【判決文】

 以下の項目別に「超過収益力」の存在を否定している。

イ 企業としての伝統、信用等

 P社の本格同業はS33で設立資本金16万、従業員40人前後の下請が主であった。

 ⇒ P社は企業としての歴史は浅く、比較的小規模の中小企業に属している。

ロ 営業成績

 上記①の主張は、単に売買利益しか見ておらず、有機体としての企業のコストをも総合評価すべき。

 ⇒P社が会社全体として成績不振であったことを考えると、売買利益が高くとも、それのみでは収益力の認定資料とはいえない。

ハ 特殊な販路

 上記②の主張は、各取引先の売上・取引関係の独占性の有無を判定すべき資料がなく明らかでない。

二 特殊技術

 上記③に主張する技術は、法律上保護を受ける無体財産権の対象となる特殊な技術ではない。

ホ 土地建物の賃借等

 上記④の主張については、賃料月50万円等の条件は、時価に比してとりたてて安価と言えず、有利な条件と言えない。材料・設備の低廉譲受けについても、時価よりどの程度廉価に譲り受けたのか主張立証がなく明らかでない。

 以上のことから、P社においては他の同種企業の平均収益力を超える超過収益力の存在を認めることはできず(超過収益力説からの否定)、P社の事業をS社に引き継ぐ際に、その固有の資産以上に特段評価すべき客観的価値は損せず(差額概念説からの否定)、P社・S社相互間においても営業権の価値につき何ら積極的評価をなしていなかったことが認められ、P社の営業権価格については税法上何ら積極的評価を加えるべきものでない―と結ばれているとのことです。

筆者は、

以上のことから、やはり

1) 同族会社間の取引においては、その移転した事業に係る「超過収益力」が、前述の各検討項目(「企業としての信用、伝統」~「土地建物の賃借等」)に照らして客観的に存在するか否かを充分吟味する必要があり、

2) さもなければ「営業権」は税務上認識し得ないものである。

以上の点に充分留意すべきといえよう。



と述べています(週刊税務通信No.2864 P35

また、グループ会社間の事業譲渡についても他事例をひきながら、

1) 一般に、グループ会社間での営業譲渡取引で営業権を計上する場合には、商法上(掲載当時)自己創設のれんとみなされる可能性がある上、

2) 税務的には、実質的に繰越欠損金の付け替え効果がある場合には、それを目的とした営業権の計上と認定される恐れがあることから、慎重な対応が要求される。

3) 従って、このような場合は「商法(掲載当時)」「会計」「税務」のいずれかの観点からも、説明し得る事業移転の目的の合理性が求められ、さらに実務上は、第三者機関に評価鑑定(Valuation)を入手しているのが一般的と考えられる。

としています(同 P36

2] 感想等

 上記の判決では、第4回で平川先生の本で言われていた「当事者の認識」のニュアンスも少しあるようですね。更に規模が大きい会社ならば、会社法・会計・税法の「三方良し」も考慮する必要があり、なかなか面倒なこととなるかと…。

 前回と今回合わせて考えると、法人成りで営業権を計上するならば、「当事者の認識」「客観的な超過収益力の存在の立証」「合理的算出方法であることの疎明」の3つを考える―というのが大きな方向性ですかね。あと判例では、中小企業だど一般的には厳しそうな感じですね。この判決文イ~ホにように項目を列挙して潰していくのもの、検討の第一段階としては良いかもしれません。

 この連載は、平成17年に3回にわたって掲載されたもので、当時は平成12年の細川建先生の「M&Aと営業権(のれん)の税務」(税務研究会出版局)以降は、H13の組織再編成の改正もあったこともあり、なかなか整理された営業権のまとめが少なかった?ような気がしますので、とても印象に残っておりました。少し古いですが、次回もこの連載の中の話題からピックアップしたいと思っております。

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2012-10-26 : 営業権・のれん : コメント : 0 : トラックバック : 0
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