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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第55回 国税庁HP更新情報(1) H25.3.15(その1)~目的論的解釈を展開してほしかったかな?「非居住者の国外源泉所得」が生じた期間の減価償却の考え方

新版 米国個人所得税申告の基礎知識
 長澤則子著、清文社、2013年

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(2013/02/14)
長澤 則子

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[購入動機] 初版を購入。とても分かりやすかったので。
[コメント] まだ読み切れてませんが…新日米租税条約の論点はあまりないのかな?
 Form1040の記載内容を理解するには、とても有難い本です。

【今回のブログの目次】
1. 国税庁HP新着情報H25.3.15
~非居住者から相続した国外に所在する賃貸用不動産に係る未償却残高について
2  目的論的解釈を展開してほしかったかな?
~「非居住者の国外源泉所得」が生じた期間の減価償却の考え方(私見)


1. 国税庁HP新着情報H25.3.15
~非居住者から相続した国外に所在する賃貸用不動産に係る未償却残高について

  ITに疎い私も、国税庁HP新着情報配信サービスというものに、ようやく登録しました。
 国税庁HPに掲載された1週間(月~金)の新着情報を、翌週月曜日にメール配信を受けるサービスです。
 
 先週月曜日(3月18日)の新着情報に下記のものがありました。
 
非居住者から相続した国外に所在する賃貸用不動産に係る未償却残高について(文書回答事例)(回答年月日 平成25年3月1日)(掲載 平成25年3月15日)
 
同HPの「事前照会に対する文書回答事例」の中の「東京国税局文書回答税目別検索」のカテゴリーの中にあります。照会内容は下記のとおりです。
【引用】 
国税庁HP 非居住者から相続した国外に所在する賃貸用不動産に係る未償却残高について
(文書回答事例)(回答年月日 平成25年3月1日)(掲載 平成25年3月15日) 
別紙の1、別紙の2、別紙の3より

非居住者から相続した国外に所在する賃貸用不動産に係る未償却残高について

1
 事前照会の趣旨
私(日本の居住者)は、生前日本の非居住者であった被相続人から相続により国外に所在する賃貸用不動産を取得したため、この賃貸用不動産から発生する不動産所得を申告することとなりました。

 この場合、不動産所得の金額の計算において必要経費となる、相続した国外所在の賃貸用不動産に係る減価償却費の計算に関して、私が被相続人から引き継ぐ減価償却費の累積額は「0円」とし、その未償却残高は被相続人における取得価額として差し支えないかお尋ねします。


2
 事前照会に係る事実関係
 は、米国籍を持ち、日本の所得税法上では非永住者以外の居住者です。

 私は、相続により取得した米国に所在する賃貸用不動産(以下「本件賃貸用不動産」といいます。)を所有しており、この不動産から発生する不動産所得を含めて平成24年分の所得税の確定申告をいたします。

 被相続人は、生前米国籍の米国居住者であり、日本に居住していた期間はありません。

 また、被相続人が本件賃貸用不動産を所有していた期間のうちには、私(相続人)が日本の所得税法上非居住者又は非永住者であった期間が含まれます。
 本照会に係る相続は、所得税法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》第1項第1号に掲げる相続であり、限定承認に係るものではありません。


3
 事前照会者の求める見解となることの理由
 本件賃貸用不動産に係る未償却残高は、以下の理由により、被相続人のその資産の取得価額を付すこととして差し支えないものと考えます。

(1) 日本の居住者が相続により取得した減価償却資産の取得価額は、その減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなした場合における減価償却資産の取得価額に相当する金額と規定されています(所法60①、所令126②)ので、私の平成24年分の本件賃貸用不動産の減価償却の取得価額は、被相続人の取得価額を引き継ぎます。

(2) 被相続人は日本では非居住者であり、非居住者が必要経費に算入できる減価償却費は、国内に所在する減価償却資産に係る減価償却費に限定されております(所令292①五)ので、被相続人が必要経費に算入した減価償却費はありません。
 したがって、私が本件賃貸用不動産について相続により引き継ぐ減価償却費の累積額は「0円」です。
 
 東京国税局の回答は次の通りです。

 標題のことについては、下記の理由から、貴見のとおり取り扱われるとは限りません。

 なお、この回答内容は、東京国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではないことを申し添えます。
(理由)
 所得税法では、相続(限定承認に係るものを除きます。以下同じです。)により譲渡所得の基因となる資産を取得した場合、相続人にキャピタル・ゲインの課税を引き継がせる意味で、資産の取得価額を引き継ぐ規定所法60①)を置いており、また、相続により取得した減価償却資産に係る減価償却費は、その減価償却資産を取得した相続人が引き続き所有していたものとみなした場合におけるその減価償却資産の取得価額に基づいて計算することとしています(所令126②)。

 そして、当該資産を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算上控除することとなる取得費は、業務用資産にあっては、取得価額から不動産所得等の金額の計算上必要経費に算入される減価償却費の累積額を控除した金額(未償却残高)とされているところ(所法38)、所得税法上、減価償却費については、法令の規定に従って計算される減価償却費の全額を帳簿経理のいかんに関わらず必要経費に算入すること(いわゆる強制償却)としていることから(所法49)、減価償却資産の未償却残高は、各年分の不動産所得等の金額の計算上減価償却費が実際に必要経費に算入されていたか否かに関わらず、その減価償却費の累積額を取得価額から控除した金額となります。

 したがって、非居住者であった被相続人から相続により取得した国外に所在する減価償却資産について、被相続人が各種所得の金額の計算上当該減価償却資産に係る減価償却費を必要経費に算入していなかったとしても、その未償却残高は、被相続人が当該減価償却資産を所有していた期間における減価償却費の累積額に相当する金額を取得価額から控除した金額とするのが相当です。
 
 
 
2  目的論的解釈を展開してほしかったかな?
~「非居住者の国外源泉所得」が生じた期間の減価償却の考え方(私見)

 上の照会は、簡単にいうと納税者見解は「No」ということでした(まあ、国税としてはそう言うでしょうね)。
 
 被相続人(非居住者)が保有した不動産(国外)から生ずる所得については「非居住者の国外源泉所得」として、日本の所得税課税の埒外(ここでは米国の課税のみ)にあったのですが、相続により相続人(居住者)の保有となったことにより「居住者の全世界所得」として日本の所得税課税計算のスコープに入ってきた―いう状況です。
 
 ここで、相続により相続人(居住者)に引き継がれるとされる減価償却資産の取得価額(所法60)と償却累計額(所法49)をどう考えるか―特に後者(所法49)についてどう考えるかということが論点でした。
 
 被相続人(非居住者)の保有期間は日本国における不動産所得に何ら貢献するものではないので、当然日本の所得税法上の計算で必要経費に算入されることはない訳です。
 
 とは言え「業務用資産」か「非業務用資産」のどちらかと言えば、「業務用資産」に変わらない訳ですから、「業務用資産」の取扱いの条文(所法38)の文言通りでいえば、既に必要経費に算入された償却累計額はゼロであり、被相続人の当初取得価額の全額から、日本での不動産所得の計算上の必要経費に算入される償却費計算をスタートさせると読めるのでは―というのが納税者の照会内容でした。
 
 まあ、「非業務用資産」から「業務用資産」への転用等の取扱いを鑑みるならば、納税者側は「国税当局はダメと言うだろうな…」と想定しながらの照会だったであろうとは推察されます。
 
 国税庁HPの理由の根拠としているのは、「キャピタル・ゲイン課税の引継ぎ」という趣旨で被相続人の取得価額を引き継ぐ(相続による取得だからといって時価取得という位置づけで「フレッシュ・スタート」をさせない)―とする所法60と「強制償却」を示したとされる所法49です。
 
 ただ、所法49自体は「居住者」の規定であり、非居住者の総合所得計算として居住者規定の準用を規定するとした所法165も、あくまでも「非居住者の国内源泉所得」の範囲の話です。課税が及ばない「非居住者の国外源泉所得」についての計算については、当然ながら規定はありません。3(2)の言い方の裏返しになりますが、規定がない以上は計算することができない―この言質を取ることが、この「照会」の意図するところであったと思います。
 
 また、所法60のいう「相続」も日本の民法規定による相続にとどまらない(本件は国際私法では被相続人の米国法(州法)のよる相続によるはず)こともハッキリさせるために、3(1)も照会しているのでしょうかね(まあ、償却費の話としては3(1)(2)という順になるとは思います)。
 
 回答を見ると、この「規定のない」部分については、国税側は割とあっさりスルー(?)して、本件も居住者規定である所法49の「強制償却」的な発想で、被相続人の保有期間について必要経費に算入されていないとしても、されたものとした未償却残高相当額で考える―ということを言いたいのでしょうね。これでは、正面からの回答を避けている感じ(納税者照会の3(2)に答えていない)がして、個人的には少し物足りない印象を持っています。
 
 所法49の文言上は、「強制償却する」ということを直接記したものではなく、その者が選定した償却方法による金額をその年分の必要経費とする―と言っているだけです。
 
 本件の被相続人(非居住者)の御存命中に所法49に基づいて、被相続人の意思により選択した償却方法の届出を、税務署(納税者選定)が受け取るかと言ったら受け取らないですよね(多分)。「非居住者の国外源泉所得」なのですから、所得税法上、届出書を受理する理由がない。もちろん、相続による取得以後の税負担関係を考えれば、ここでわざわざ定率法などを選択する人はいないのは当然なのですが、もともと被相続人自身の使いようのない規定をそのまま持ってきて「理由」ですよと言われても、困りますよね。業務用資産の償却規定である所法49だけでは説明がつかない―ということになります。
 
 ここで所法49の「文理解釈」で説明がつかないならば、制度の「目的論的解釈(趣旨解釈)」の観点から説明を加えてもらえれば、納得感が出てくるような気がします。上記規定の発想の根本として、相続取得・引継ぎ(入口)の取扱いは、資産の処分段階(出口)に至った場合の譲渡所得の取得費の取扱いである所法60条の「趣旨」に直結しているはずです。「理由」の前段である「趣旨」をもう少し丁寧に説明した上で、日本の国内源泉所得に貢献しない期間であっても、実際に国外業務の用に供していたという事実を鑑みれば、未償却残高は「居住者の全世界所得」計算規定や、その準用である「非居住者の国内源泉所得」計算規定と取扱いを同じくすることが課税の公平上、相当と思われる―とするのが説明の「本筋」だと思うのですが…(あまり踏み込んだ「目的論的解釈(趣旨解釈)」などは、HPでは避けられているのですかね)。
 
 ただ、わざわざHPに掲載するのであれば、この辺を親切に説明した方が、本当は一般納税者にも判りやすいのになあと感じます(まあ、最終的には法律の話ですので、これ以上は説明過多ですということなのでしょうかね)。
 
 少なくとも、国税の立場は示しましたよ―というところでしょうか。

加えて、気になるところとしては、
は、米国籍を持ち、日本の所得税法上では非永住者以外の居住者です。
 という文章。

 
日米間の所得税関係で特徴的なところが、前提の中で、割とアッサリと記されています。
 
 こちらは、少し文章が長くなりそうですので、次回の続きを記したいと思います。

※前回ご紹介した長澤先生の「新版 米国個人所得税の基礎知識」(清文社、平成25年)を参考にして、本事例に当てはめたいと思います。
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