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第56回 国税庁HP更新情報(2) H25.3.15(その2)~日米の双方居住者、未分割遺産から生ずる所得はどう考えるのか?

詳解 日米租税条約
 矢内一好著、中央経済社、H16

詳解日米租税条約詳解日米租税条約
(2004/04)
矢内 一好

商品詳細を見る

[購入動機] 30年ぶりの改正(前回のH15)のタイミングだったので。
[コメント] コンメンタールとして頼りになるものでした。今回の改正(H25)で新版でますかね?

【今回の記事の目次】
1. 割と簡単に済ませた前提?―日米租税条約の「双方居住者」の振分け
2. 日本でいう「未分割遺産から生ずる不動産所得」はどうしているのか?
3. 感想



1.
 割と簡単に済ませた前提?―日米租税条約の「双方居住者」の振分け

 前回のつづきとなります。
 前回取り上げた文書回答事例では、日米間の所得税関係で特徴的なところが、前提の中で、割とアッサリと記されています。
 「は、米国籍を持ち、日本の所得税法上では非永住者以外の居住者です。
 という箇所です。
 「非永住者以外の居住者」ということは、「永住者」ですので、一応、日米租税条約上、「双方居住者」とされる論点なのかしら?という論点となります。
 
 前回ご紹介した長澤先生の「新版 米国個人所得税の基礎知識」(清文社、平成25年)のp8「米国と日本の所得税の主な違い」等では次のような図が掲載されています。
【引用】 長澤著、p8より一部抜粋
日本
米国
国籍
海外に居住している場合、国籍が日本であるということで日本の課税を受けることはありません。つまり、市民権課税制度はありません。
市民権課税制度があり、米国市民および米国永住者(グリーンカード・ホルダー)は、居住地国を問わずすべての所得に対して課税(全世界課税)されます。
 
 つまり、本件の「私」は「米国籍」を持っていますので「米国市民」として、米国国内法により「全世界所得課税」の納税者と位置付けられるとともに、日本国内法においても「非永住者以外の居住者」ですので、両国の国内法の規定上はどちらも「全世界所得課税」の納税者と位置付けられるため、いわゆる「双方居住者」と考えられます。
 
【引用】 長澤著、p12より(一部補)
課税の範囲(米国税法)
課税範囲
個人
米国市民(U.S. citizen)
全世界課税
外国人(Alien)
米国居住者
(Resident Alien)
米国非居住者
(Non-resident Alien)
国内(米国)
源泉所得
この「双方居住者」の取扱いについて、長澤先生は次のように記されています(p18)
【引用】 長澤著、p18より引用
 日本と米国のそれぞれの国内法により、個人が双方居住者に該当するケースがでてきます。そのような場合には、「日米租税条約」(所得に対する租税に関する二重課税の回避および脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約)が適用されることになります。

 日米租税条約の第4条には、租税条約上の居住者の定義が規定されています。そして、その第3項には、双方居住者(米国市民及び米国永住者権を除く)がどちらかの国の居住者になるかの順序が次のように記されています(タイ・ブレークルール)

① 恒久的住居が所在する国の居住者とみなされます。双方に恒久的住居がある場合、その人的および経済的関係がより密接な国(重要な利害関係のある国)の居住者とみなされます。
② ①で決定できない場合、常用の住居が所在する国の居住者とみなされます。
③ ②で決定できない場合、国民である国の居住者とみなされます。
④ ③で決定できない場合、両国の権限のある当局の合意により解決されます。

[ワンポイント]
 租税条約で米国非居住者と決定された場合でも、米国で課税されないのではなく、米国非居住者として国内(米国)源泉所得は課税されるので注意してください。

 米国市民又は、米国永住権者(グリーンカード・ホルダー)の双方居住者の取扱いは、第4項2項で規定されており、前述で説明したものとは異なります。

 租税条約の適用を受ける場合には、例外を除き、租税条約適用申告のディスクロージャーForm8833(Treaty-Based Return Position Disclosure Under Section 6114 or 7701(b))を個人所得税申告書に添付又は、申告の必要がない場合には、直接IRSに提出します。なお、提出を怠ると、1件のForm8833につき、$1,000のペナルティとなるので注意してください。
 つまり国内法で日米双方「居住者」とされていても、どちらか一方の国の「居住者」に一本化される―ということになります。
 
 ここで上記の下線を付した「米国市民又は米国永住者(グリーン・カードホルダー)の双方居住者の取扱い」を規定した日米租税条約「第4項2項」ですが、日米租税条約を見るに米国に居住する米国市民」等を指しているような気がします。下線を付した第4項3項から除かれる括弧書き内の「米国市民及び米国永住者」も2項の「米国市民及び米国永住者」を指していますので、本件のような「米国に居住していない米国市民」についても、「タイ・ブレークルール」の対象となると思ったのですが、どうなのでしょうかね。
 
【引用】 矢内一好著「詳解 日米租税条約」(中央経済社、平成16年)、p50より

4条 居住者
1 この条約の適用上、「一方の適用国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、市民権、本店又は主たる事務所の所在地、法人の設立場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいい、次のものを含む。

(a) 当該一方の締約国及び当該一方の締約国の地方政府及び地方公共団体
(b) 当該一方の締約国の法令に基づいて組織された年金基金
(c) 当該一方の締約国の法令に基づいて組織された者で、専ら宗教、慈善、教育、科学、芸術、文化その他公の目的のために当該一方の締約国において設立され、かつ、維持されるもの(当該一方の締約国において租税が免除される者を含む。)

 ただし、一方の締約国の居住者には、当該一方の締約国内に源泉のある所得又は当該一方の締約国内にある恒久的施設に帰せられる利得のみについて当該一方の締約国において租税を課される者を含まない。

2 1の規定にかかわらず、合衆国の市民又は合衆国の法令に基づいて合衆国における永住を適法に認められた外国人である個人は、次の(a)から(c)までに掲げる要件を満たす場合に限り、合衆国の居住者とされる。

(a) 当該個人が、1の規定により日本国の居住者に該当する者でないこと
(b) 当該個人が、合衆国内に実質的に所在し、又は恒久的住居若しくは常用の住居を有すること
(c) 当該個人が、日本と合衆国以外の国との間の二重課税の回避のための条約又は協定の適用上当該合衆国以外の国の居住者とされる者でないこと

3 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する者(2の規定の対象となる合衆国の市民又は外国人である個人を除く)については、次のとおりその地位を決定する。

a) 当該個人は、その使用する恒久的住居が所在する締約国の居住者とみなす。その使用する恒久的住居を双方の締約国内に有する場合には、当該個人は、その人的及び経済的関係がより密接な締約国(重要な利害関係の中心がある締約国)の居住者とみなす。
b) その重要な利害関係の中心がある締約国を決定することができない場合又はその使用する恒久的住居をいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、その有する常用の住居が所在する締約国の居住者とみなす。
c) その常用の住居を双方の締約国内に有する場合又はこれをいずれかの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、当該個人が国民である締約国の居住者とみなす。
d) 当該個人が双方の締約国の国民である場合又はいずれの締約国の国民でもない場合には、両締約国の権限のある当局は、合意により当該事実を解決する。

 この3の規定により一方の締約国の居住者とみなされる個人は、この条約の適用上、当該一方の締約国のみの居住者とみなす。
4項以降はH25改訂のため、省略。
 
 
 
2. 日本でいう「未分割遺産から生ずる不動産所得」はどうしているのか?

1)日本の場合~民法の相続分相当の不動産所得が帰属

 また、少し気になる点としては、本件の場合、日本で言うところの「遺産分割が確定する」までの不動産所得はどうやっていたか。「未分割遺産から生ずる不動産所得」の帰属関係です。

 日本法の場合ですと、よく次のような図で解説されます(上西左大信、竹内春美著「税理士のための準確定申告とその実務」(税務研究会出版局、H21)、p92より)。
【引用】 税理士のための準確定申告とその実務 p92
資産から生ずる収益の帰属
次の3つの段階に分けて考える必要があります。
56-image1.gif
イ 事業主が存命中の収益の帰属
 不動産や預貯金等の資産から生ずる収益の帰属は、事業から生ずる収益の帰属に対する考え方と同様に、実質所得者課税の原則に基づきます。通常の場合は、事業から生ずる収益は被相続人に帰属し、被相続人の準確定申告の対象となります。

ロ 分割協議が成立した後の収益の帰属
 分割協議が成立した後においては、その資産から生ずる収益は、その資産の取得者に帰属します。

ハ 未分割の間の収益の帰属
 事業を営んでいる者に相続が開始した場合には、相続開始後のその事業からの収入は、その事業を承継した者に帰属することになります。しかし、例えば、不動産所得のように、その資産から生ずる収益がほぼ自動的に得ることができるものの場合は、事業を相続する場合と考え方及び取扱い方が異なります。

 (中略)

 判決(管理人注:神戸地裁平成3年1月28日判決)は、不動産の発生について、次のように判示しています。
 原告は、被相続人の賃貸人としての地位を相続によって相続分の割合によって継承したものというべきであるから、右賃料の取得をもって不動産所得(所得税法26条1項)があったことになる。なお、相続人間で右賃貸権の対象物件を含む相続財産の帰属についての争いが未決着であることを理由に所得税の課税を留保することは、納税義務者の恣意を許容し、課税の公平を著しく害することとなるから、許されないと解すべきである。
 上記のように、未分割の相続財産から生ずる不動産所得を相続分の割合で課税することが適法であるとの判断をしました。この控訴審判決である大阪高裁平成3年1月28日判決及び上告審である最高裁平成4年3月13日判決は、いずれもこの地裁判決を支持しています。
 
 つまり、未分割遺産から生ずる不動産所得については、遺言がなければ法定相続分(民900)、遺言があれば指定相続分(民902)で申告し、その後の実際の分割状況に拘束されない―ということになります。
 
 このあたりは、国税庁HP「タックスアンサー」にも記載されています。
 【参考】 国税庁 タックスアンサー No.1376 不動産所得の収入計上時期
 

 
2) 本件における相続の準拠法

  ただし、本件のように被相続人が外国人の場合、死亡に係る相続については、「法の適用に関する通則法」36条にあるように、被相続人の本国法が適用されるので、日本の民法は適用できません。
(相続)
第三十六条  相続は、被相続人の本国法による。
  本件では相続の準拠法は米国法で考えるようですね。
 
 
 
 
3) アメリカの相続法(清算主義)の場合

 ここで米国法の相続の考え方となった場合に、(1)のスタンスが取れるのかな?と素朴に感じるところはあります。
新日本EYのニュースレターによると、日本の相続は「包括承継主義」、米国の相続は「清算主義」と考え方が異なるようです。
【引用】 月刊国際税務Vol.29 No.10 (H21.10.5)
実務家のための国際相続実践講座[1]
2. 国際私法
2) 包括承継主義と清算主義
 日本の民法第896条は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定しています。相続発生と同時に、被相続人と利害を有する者の間で何らの清算手続きを経ずに、被相続人の財産が包括的に相続人に移転する考え方包括承継主義といいます。

 包括承継主義を採用している国は、日本のほかにはドイツ、イタリア等があります。日本の民法では、相続開始とともに遺産は共同相続人の共有となり、遺産分割協議により、各相続人に帰属することとなります。ドイツやイタリアにも法定相続人と法定相続分の規定はあるようです。

 一方、相続が発生した場合、相続財産は直ちに相続人に承継されずに、いったん死亡した者の人格代表者(Personal representative)に帰属させ、この者が被相続人の利害関係人との間で財産を清算し、その結果プラスの財産が残る場合にはそれを相続人が承継するという法形態を採用している国があります。アメリカ、イギリス等が該当します。これを清算主義と呼びます。

 アメリカの場合、相続開始の時点で遺産は遺産財団(estate)に移転します。遺言がある場合には遺言執行者(executor)が遺言を執行し、遺言がない場合には遺産管財人(administrator)が遺産財産の管理・処分をします。遺言がある場合には、それに従いますが、遺言のない場合は、州の相続法に規定する法定相続分により分配されます。日本のように相続人のよる遺産分割という手続きは、アメリカをはじめとする清算主義を採る国にはないと考えられます。
  興味深い記事ですね。前段の日本が採用している「包括承継主義」の話は、(1)のタイムテーブルや判例の話に合致します。ただ、後段のアメリカが採用している「清算主義」の立場から言うと、(1)のタイムテーブルではしっくりこない点はあります(分割協議という手続きがない?、相続の遡及効の考え方がない?、遺産財産に移転する?等)。
 
 本件のような場合には、
① 遺産財産に移転している期間は、相続人に帰属する所得は全く考えないか
② 遺言による指定や、州相続法に規定する相続分を用いるか
 どのように考えるのでしょうかね。
 
 
4) 日本の相続分で帰属すると考える法

 ただ、一方で日本の相続分を適用する―ということも有るかもしれませんね。
 所得税の扱いでなく、相続税の取扱いですが、国税庁質疑応答事例に下記のようなものがあります。
 
 【参考】 国税庁質疑応答事例 
「外国人である被相続人の日本人妻と相続税法第15条第2項に規定する法定相続人」
 
 
 こちらは「法定相続分」でなく、「法定相続人」の話ですので、相続税の基礎控除などに関連した話となります。実際はどうなさっているのでしょうかね。勉強しなければならないことが沢山あります(泣)。
 
 
 
 
 
3. 感想等

 また、本件は、米国不動産の賃貸ですので、米国法で「源泉徴収方式(30%)」か「ネット・レント方式(賃貸収入-必要経費を米国で申告)」のいずれかの方式で申告することになりそうですので、日本側の所得税では外国税額控除の論点もありそうですね(これとは別に州ごとの州所得税も考えなければなりません)。
 
 他にも、米国の固定資産税(州)や、あちらの「ジェットコースター」と言われるほど、コロコロ変わる遺産税の話とか(ただし、3年内に譲渡したとしても、米国で課税された相続税額があったしても、措置法39条の相続税額の加算は、文言上、日本の相続税額と記されているので、適用はないか?)と周辺論点はいっぱいありますね。

 日米租税条約も改正されましたしね。
 【参考】 外務省 日米租税条約改正議定書の署名(H25.1.25)

 今回は分からないところを羅列しただけで終わってしまいました。
 知らないことがありすぎて…より一層の精進が必要なようですね。
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