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第58回 交際費総点検!(2) 営業収入との相関性―「3K」「管理可能固定費」としての交際費。某週刊誌の記事は少し疑問です。

税務弘報2013年4月号
 緊急企画 平成25年度税制改正 実務家10人の着眼
税務弘報 2013年 04月号 [雑誌]税務弘報 2013年 04月号 [雑誌]
(2013/03/05)
不明

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【今回の記事の目次】
1. 「3K」・「5K」の筆頭格「交際費」
2. 交際費は変動費?―営業収入と支出交際費との高い相関性
3. 交際費どころではない!資本金1億円以下の会社の労働分配率
4. 感想等



1.
 「3K」・「5K」の筆頭格「交際費」

 前回取り上げた税務弘報2013年4月号の記事を再掲します。
 
税務弘報2013年4月号 pp28~29
25年度税制改正 実務家10人の着眼点 中小法人の交際費課税の特例 上西左大信
 
● 上限が800万円に引き上げられてどのくらいの効果があるのでしょうか。
 交際費課税の立法趣旨や本質的な議論は避けます。現在の要望として、交際費等の損金算入限度額を引き上げたり、交際費課税そのものを廃止したりすることが必要であるとの意見があります。
 例えば、現行の600万円の定額控除限度額や10%の損金不算入措置が飲食店等の売上の長期の沈滞化を引き起こしてきたといった指摘や、交際費の損金性を認めることにより減収分を補う高い経済的な効果が見込まれるとの意見です(厚生労働省「生活衛生関係営業活性化のための税制問題ワーキンググループ報告書」など)。
 
 このような観点から、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(平成25年1月11日閣議決定)において、「中小企業・小規模事業者等への支援」の政策として、「中小企業の交際費課税の特例の拡充〈税制〉(経済産業省・厚生労働省)」が項目として明記され、それを踏まえた措置が今回の交際費課税の改正であると考えられます。
 
 もっとも、自民党税調の資料では、中小法人の交際費支出額の平均額は、利益を計上している法人で160.3万円、赤字法人を含めたすべての中小法人で94.7万円となっています。今回の引上げ措置により、交際費等の支出の平均額が大きく上昇することはないと思われますが、定額控除限度額をすでに上回っている中小法人や定額控除限度額を意識しながら交際費等の支出を行っている企業には朗報といえます。
 
 こちらの記事の前半部分の立法側の意図として挙げている「交際費の損金性を認めることにより減収分を補う高い経済的な効果が見込まれる」「中小企業・小規模事業者等への支援」と、後半部分の評者(上西左大信先生)の私見、「今回の引上げ措置により、交際費等の支出の平均額が大きく上昇することはない」とのトーンの違いが印象的です。
 
 交際費等の制度が多少変わっても、現実的にその経済的効果はあまりないのでは?という御意見ですが、私個人の実感としては同意できるものですね。
 
 企業の経費削減でまず挙げられる3K」(交際費・交通費・広告宣伝費)ないしは、「5K」(3K+研修費・開発研究費など)の中でも、最優先に削減される筆頭格が「交際費」です。交際費は、これらの経費の中でも、より裁量的ないし政策的な経費で、将来の利益に対する貢献がハッキリしないものですので、社長の意識ないしは会社の方針が固まれば、金額が絞り易い経費であることは間違いないです。
 
 前回も取り上げた国税庁の「会社標本調査」をグラフ化したものは下記の通りです。
(末永英男編著「「租税特別措置」の総合分析」(中央経済社、2012)p155のグラフに直近データ等を加え、損金不算入割合を加えたものです)
 
58-image4.jpg
 
 H15、H18、H21に行われた一連の交際費における中小法人の定額控除限度額の引上げ、飲食交際費5,000円基準の創設等の改正にあっても、H16~18の支出交際費等の増加が見られましたが、H19以後は減少傾向となっています。S36からの傾向としても、制度として損金不算入割合を下げることにより、支出交際費が増加につながったという結果にはなっていません。
 
 国税庁の「会社標本調査」では「営業収入」のデータも公表されています。この「営業収入」と「支出交際費等」を並べてみますと、次の通りです。

58-image3.jpg
 
 トレンドとしては交際費の支出割合(支出交際費等/営業収入)は、昭和30年代の0.6%台からバブル期で0.4%台、さらに現在の0.2%台と緩やかに減少しつつあります。調査開始のS36から一貫して減少トレンドです。この間、景気がよくなったからといって、この割合が極端に増加することはありませんでした。
 
 近年はともかくとして、長い目でみれば昭和30年代から平成10年ぐらいまでは、労働分配率も上昇傾向でした。特に大企業(資本金10億円以上の企業)は、この期間の労働分配率が45%から65%前後まで上昇した訳で、「売上が増えれば、給料を増やす」という方向でやってこれたとも言え、制度創設時に大企業の「社用族」とターゲットにされた層も方々も、交際費で云々という「変な還元な仕方」は大々的にはしなくなってきた―ということでしょうか。
 
【参考】 労働分配率の推移
 
 これらは「冗費」「濫費」の抑制という制度設立当初の趣旨の部分が、ある程度実現していることを示しているかもしれません。近年の企業コンプライアンス意識の高まりもありますしね(いまだに極端なことをしている会社が存在していることは、否定しませんが…)。
 
 上記を鑑みれば、交際費の支出額自体は、税制よりも、自社の営業収入(売上)の方を気にしながら、交際費支出をコントロールしている…と言えなくはないでしょうか。
 
 
 
 
 
2. 交際費は変動費?―営業収入と支出交際費との高い相関性

 では、「会社標本調査」のデータをもとに、「営業収入」と「支出交際費」の相関性を見てみましょう。
 
 19回で取り上げたエクセルの「散布図」作成ツールとCORREL関数を用いてみました。
 
 
 まず、S36~H22の期間の「営業収入」と「支出交際費」の散布図は下記のとおりです。

58-image1.jpg
 
 キレイな散布図ですね。相関係数は0.890ですので、「営業収入」と「支出交際費等」の間には、かなり高い相関性があると言えますね。
 
 さらに、これらを昭和時代(S36~63)、平成10年まで(H1~H10)、平成11年から現在までの三時代に区分すると下記のようになります。

58-image2.jpg  
 
 相関係数は
 昭和時代(S36~63)…0.996
 平成10年まで(H1~10)…0.573
 平成11年から現在まで(H11~)…0.763
 となっています。
 
 昭和時代の相関係数0.996は少しビックリですね(正に右肩上がりの時代だったので、「営業収入」「支出交際費」が上昇トレンドのデータばかりだったからでしょうかね)。バブル崩壊後「失われた10年」期間は、相関性が随分と後退(0.500でも中程度の相関がある)しましたが、その後、H11から現在までも高い相関が認められます。
 
 データ期間の「営業収入」と「支出交際費等」の相関性はかなりありますが、だからといって交際費が「変動費」か―と言われれば、そうとは言えないと思います。
 
 「変動費」とは、「売上高、生産量、操業度に伴って増減する費用」のことですが、管理会計上の「管理可能」か「管理不能」かの区分で言えば、交際費は「管理可能固定費」の位置づけで、企業の裁量ないしは政策により、売上・利益等を目安にコントロールしてきた―と言えるのではないでしょうか。

 とはいえ、昭和時代より「傾き」が小さくなっているところを見ると、近年は「固定費的」な性格が薄まってきているかもしれませんが…。
 
 
 
 
 
 
3. 交際費どころではない!資本金1億円以下の会社の労働分配率

 立法側から見れば、今回の交際費改正は、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」という位置づけで、「中小企業・小規模事業者等への支援」として、前回見たとおり350億円の減税規模があるものですが、これを企業側から見ると、これらの施策は「小手先」の感がなくはないです。
 
 もともと経費節減の「3K」「5K」などと言っているレベルではなく、企業は人件費でどの企業も四苦八苦しています。

厚生労働省
平成23年度版 労働経済の分析 世代ごとにみた働き方と雇用管理の動向
● 労働分配率は前年度と同水準 
 企業の人件費負担の状況を、付加価値に占める人件費の割合である労働分配率によってみると、企業規模計では2000年代半ばに概ね70%程度で推移してきたが、2008年度は付加価値の低下が大きかったことから74.7%と大きく上昇し、2009年度は付加価値、人件費ともに増加し、前年度と同水準の74.7%となった。
 
 これを企業規模別にみると、資本金10億円以上の企業では、2001年度以降低下を続け、2007年度には52.9%まで低下したが、2008年度は63.1%、2009年度は64.8%と2年連続で上昇した。一方、資本金1億円未満の企業では、1990年代後半以降、労働分配率は概ね80%程度の水準で推移してきたが、2008年度に82.0%と上昇した後、2009年度は人件費の低下幅が大きかったことから81.0%と低下した。
 
【参考】 厚生省HP
 
 
 資本金1億円未満の企業―いわゆる中小企業群は、労働分配率80%のところで汲汲としているのに、「現行の600万円の定額控除限度額や10%の損金不算入措置が飲食店等の売上の長期の沈滞化を引き起こしてきた」(「生活衛生関係営業活性化のための税制問題ワーキンググループ報告書」)と言われて、飲食交際費の支出を期待されても困ってしまいますよね(そんなことより、全体的な消費低迷は2000年代前半以降の1人当たりの人件費低下が原因だと思うのですが…)。
 
 1億円以下の企業が大々的に飲食交際費を増やすということはなさそうだし、安部総理が言っている「賃上げ要請」の方が、まだ飲食店の売上には効果があるんじゃないの?と思ってしまいます(まあ、この要請も「大企業」さんしか受けられないですけれども…)。
 
 これらの業界の方にとっては、消費税の増税も控えてますし…消費者マインド影響を考えると、こちらの方が一大事ですよね(ガス抜きのつもりでしょうかね…)。
 
 
 
 
 
4. 感想等

 と私は、思ったのですが、週刊ポストは違う意見みたいですね。

 【参考】 週刊ポスト 2013/4/12号
 アソウノミクスの接待減税 交際費増加分は1370億円に上る
 (大綱減税350億円(平年度)÷25.5%=1,372.549→1,370億円ということのようです。)

 減税=交際費が増加―というのは安易なような…。実際にH21年の400万円→600万円の定額控除限度額がUPしても、支出交際費等は増加せず、むしろ減少しています(上記グラフ参照)。

 上の議論からいえば、売上(営業収入)増の結果として支出交際費が増えることはあるかもしれません。ただ、中小企業までにおこぼれが回ってくるのは先の話で、まず大企業の売上増による支出交際費増によるということ。中小企業の特例を緩和したということの効果とは言えないと思います。

 まあ、経営者や経理の人、何よりも税理士にも話を聞かずに、業界紙や官僚OB弁護士の話だけで、記事にしてしまうのですね(気楽で良いですね。それでは私のブログと同じレベルです(笑))。前回の記事にあるように、中小法人の7割赤字なので、この記事に共感する方は少ないのでは…。

 私は、今回の改正の効果として、交際費等支出額が大きく増えることはない―という上西先生のご意見に賛成です。

 今回も「会社標本調査」のデータを少しいじってみましたが、交際費の話をすると、どうしても「制度趣旨や本質論」に立ち返りたくなります。次回はそのあたりのところを触れてみたいと思います。
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