元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

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第59回 交際費総点検!(3) 交際費課税の趣旨・目的の変遷~創設時の「濫費抑制」「資本蓄積」から現行制度「社会的批判論」まで

税務形式基準と事実認定 第3版
 山本守之、中央経済社、平成12年
税務形式基準と事実認定税務形式基準と事実認定
(2000/03)
山本 守之

商品詳細を見る

[購入動機] 基本書として購入(出版当時はまだ駆け出しでした…)
[コメント] 「税務上の不確定概念」の前身の本という位置づけですかね。
 ※現在は在庫なし。アマゾンでも中古本のみです。

【参考】
山本守之著 「
検証 税法上の不確定概念 第2版」 (中央経済社、平成16年)
八ッ尾順一著 「
判例・裁決からみる法人税損金経理の判断と実」(清文社、2011年)
山本守之著「
事例からみた法人税の実務解釈基準」(税務経理協会、平成21年)
末永英男著「
租税特別措置」の総合分析―租税法、租税論、会計学の視点から
(中央経済社、2012年)
税務弘報 2013年 02月号 [雑誌]

【今回のブログの目次】
1. 今問われるべき!?~交際費課税の「目的・趣旨」と「計算構造」の変遷
2. 交際費課税の目的・趣旨の変遷(1)
 ― 立法趣旨としての「4分類」
3. 交際費課税の目的・趣旨の変遷(2)
 ― 末永英男先生の政策目的としての「2分類」
4. 感想等



1.
 今問われるべき!?~交際費課税の「目的・趣旨」と「計算構造」の変遷

 前回前々回と支出交際費の支出規模や損金不算入割合の変遷数値を基に、交際費のH25改正とそのインパクト、営業収入(売上)と相関について、「データから読めること」について述べてきました。
 
 前者の支出交際費の支出規模については、前回記事のとおり、営業収入(売上)の相関性が高く、売上から許容されるある程度の枠内で、裁量ないし政策的な固定費として支出規模が決定される―という話になりますが、後者の損金不算入割合の変遷と関連では、

① 課税目的・趣旨の変化
② 課税手法(計算構造)の変遷
③ ①と②がマッチしているか

という点が論点となりましょう。
 
 ③については、山本守之先生は検証 税法上の不確定概念 第2版」 (中央経済社、平成16年)において次のように評価しています。

【引用】「検証 税法上の不確定概念 第2版」 p207

 交際費等に対する課税制度は、趣旨の変遷と損金不算入額の計算構造とが一致しない上、交際費等の範囲そのものの見直しが行われていないため、冗費、濫費の支出抑制という趣旨から外れている社会批判の対象となるべき冗費、濫費としての交際費等の範囲に関して見直しをしなければならないのではないかと考える。
 
 課税趣旨・目的が変わってきている…というだけで、「どういうことなの?」と仰られる方もいるかもしれません。今回のブログでは、まず「趣旨・目的の変遷」をまとめていきたいと思います。
 
 
 
 
2. 交際費課税の目的・趣旨の変遷(1)―立法趣旨としての「4分類」

 八ッ尾順一先生の判例・裁決からみる法人税損金経理の判断と実務(清文社、2011年)によれば、交際費課税の目的・趣旨について次のように述べています。

【引用】 「判決・裁決からみる法人税 損金計理の判断と実務」 p82より

 この交際費課税は、昭和29年に以下の①及び④を理由として、時限措置として創設され、その後、幾多(平成22年まで34回)の改正を経て、現在に至っている。

59-image1.jpg
 
 これらは税制調査会答申の文言から窺い知れる主な課税目的であろうと思われます。
 
 山本守之先生の税務形式基準と事実認定 第3版」(中央経済社、平成12年)の記載から引用します。
 
① 昭和31年税制調査会答申(資本充実・濫費抑制)
【引用】 「税務形式基準と事実認定 第3版」 p14

 「戦後資本蓄積の促進に資するため、各種の税法に特別措置がとられたが、昭和29年、企業資本充実のため資産再評価法の強制等が行われたのを機会に、いわゆる交際費の損金算入否認の制度が設けられた。この措置は、他の資本蓄積策と並んで、法人の交際費等の濫費を抑制し、経済の発展に資するねらいをもっている」

 ここでは、交際費の大部分は営業上の必要に基づくもので、直ちにその全部を濫費と称することができないとしながらも、「…戦後経済倫理のし緩等によって企業経理が乱れこのため、一方では役員及び従業員に対する給与が旅費、交際費等の形で支給される傾向が生ずるとともに他方役員及び従業員の私的関係者に対しても、事実上の必要をこえた接待をする傾向が生じている。このため企業の資本蓄積が阻害されていることは、争えない事実である」(同答申)と指摘し、この制度を導入することによって交際費の濫費を抑制し、企業資本の充実を図るという目的を明らかにしている。
 
 山本先生によれば、この創設時の計算手法(支出交際費等が「実績基準」(昭和28年度交際費支出×70%)と「取引高基準」(業種による売上金額×一定割合)を超える部分の金額の1/2を損金不算入)は、「濫費抑制」の趣旨とも合致していると指摘しています。ただしこの制度との狙いとは逆に企業の支出交際費は増加の一途を辿ります(前回前々回のグラフ参照)。


58-image4.jpg
 

② 昭和40年税制調査会答申
【引用】 「税務形式基準と事実認定 第3版」 p15

 「当調査会は、企業の自己資本充実の必要性をかえりみ、内部留保の増大に資するため、法人税率の引下げを答申しているが、この観点からみるときは、上記のような交際費支出の実態にかえりみ、過大な交際費の支出を抑制することにより企業の蓄積努力を促進することが必要と考えられ、現行の損金不算入割合を引き上げる方向で改正することが適当であると認めた」
 
 この段階では、「…交際費課税の本来のねらいは、税収をあげるというよりも、過大な交際費の支出に対して課税を行うことにより、これらの支出を節約させる点にある」(昭42税制調査会)といる考え方は貫かれていた―とのことです(同頁)
 
③ 昭和56年税制調査会答申(社会的批判論)
【引用】 「税務形式基準と事実認定 第3版」 p15

 「交際費については、累次にわたって課税の強化が行われてきたところであるが、巨額にのぼる交際費の実態及びその支出額が毎年増加し続けているという事実に対する社会的批判には依然として厳しいものがある。したがって、この際、交際費に対する課税の全般的な強化を図るべきである」
 
 これを受けた昭和56年改正は現行制度のベースになる改正でしたが、「資本蓄積策という当初の趣旨は消えているが、濫費抑制交際費支出に対する国民的批判を背景にしている」(同頁)と指摘しています。
 
 
④ 平成8年税制調査会答申(代替課税の否定)
 上記で「濫費抑制」「資本蓄積」「社会的批判」は確認できましたが、「代替課税」についてはどうでしょうか。こちらは、時代の変遷により趣旨の理解が異なるようで、現在では否定されているようです。山本守之先生の事例からみた法人税の実務解釈基準(税務経理協会、平成21年)から引用します。
 
【引用】 「事例からみた法人税の実務解釈基準」 pp292~293

代替課税の思想
 昭和45年当時は、交際費の課税の根拠として代替課税の思想がありました。これは接待、贈答等を受けた側に、必ずしも課税が確保できないから、それに代わって支出した法人側に課税するという考え方です。

 例えば、金銭又は事業用資産を交付する場合は、相手方事業者において収益として計上され、課税が確保されるので、交際費等としません。一方、謝礼金品や得意先の役員や使用人に贈答する場合や、旅行観劇等に招待する場合には、それらの者に対する金銭や経済的な利益に対しての課税は必ずしも確保できないので、支払者である法人に交際費等として課税するというものです。

 ただし、「現行制度は、交際費を容認した場合に濫費の支出を助長することになり、また、交際費の支出は公正な取引を阻害する可能性がある点を考慮して措置されているものである。また企業により巨額の消費的支出に支えられた価格体系により個人が生活の豊かさを実感できないのではないかといった問題も指摘されている」(税制調査会、法人課税小委員会報告、平成8年11月)というように、代替課税の思想は否定されています。
 
 上記の「接待、贈答等を受けた側に、必ずしも課税が確保できない」というのは、交付を受けた者が法人ならば受贈益課税が確保できれば、交付する法人側で強いて交際費課税することはない(金銭・事業用資産の交付の例)のに対し、交付を受けた者が個人の場合、雑所得や一時所得として課税を受けることもあるが、雑所得にあっては給与所得以外の所得が20万円以下である場合は確定申告を要せず、一時所得にあっては50万円の特別控除があるので必ずしも課税が確保できない―ということのようです(「税務形式基準と事実認定 第3版」p23)
 
 
 
 
 
3. 交際費課税の目的・趣旨の変遷(2)―末永英男先生の政策目的としての「2分類」

 末永英男先生は「租税特別措置」の総合分析―租税法、租税論、会計学の視点から(中央経済社、2012年)は租税特別措置法の政策目的を二つに分類し、それを交際費に当てはめた議論をしています。法律の立法趣旨というよりは、政策論的なアプローチですが、上の4分類を2つに整理したような形になっています。
 
① 公共政策目的(国家目的)…創立当初は「濫費抑制」→その後「支出状況に対する社会的批判」
② 産業政策目的(事業目的)…創立当初は「法人企業の資本蓄積」→その後「景気対策(中小企業)」
 
 これらの目的はともすれば「二律背反」的なものでありますが、交際費等課税の歴史的経緯から、公共政策目的が優先し、その枠内で産業政策目的を規制するという関係であると指摘しています(同書p154)
 
 その詳細は同書の「税制調査会答申からみる交際費等課税・使途秘匿金課税の根拠の変遷」(pp149~153)にまとめられています。
 
A. 公共政策目的(濫費抑制)と産業政策目的(資本蓄積)の並存期
1954
(昭29)
税制改正
交際費課税制度創設
交際費に損金性は認められるが、支出の状況に問題があったこと、1954(昭29)の「造船疑獄」に端を発した交際費等課税に対する環境変化を背景に制度が定められた、
1954
(昭29)
 
資産再評価等の特別措置法(法律第142号)が公布
当時の法人企業の自己資本比率の低さが問題となっていたため、法人企業の資本充実が急務とされていた。
 
※経済企画庁[1954]
1934(昭9)~1936(昭11)における企業の自己資本比率は61%に対し、1953(昭28)年上期は35%であった。
1956
(昭31)
臨時税制調査会
135頁
 
当時、このような規定が設けられたのは、法人企業の交際費等の濫費を抑制し、もって経済の発展に資するねらいがあった。
背景には、戦後、経済倫理の弛緩によって法人経理が乱れていたこと挙げられる。
 
※もっとも、交際費等の相当の部分は営業の必要に基づくものであり、ただちにその全額をもって濫費と称することはできないと認識されていた(同頁)
役員及び従業員に対する給与が、旅費、交際費等の形で支給される一方で、役員、従業員の私的関係者に会社の経費で接待するとか、事業関係者に対しても事業上の必要を超えた接待をする傾向が生じていた。
 
B. 公共政策目的重視へシフト―支出状況への社会的批判
1964
(昭39)
税制調査会答申
いわゆる法人企業の資本蓄積を理由とする旨の記述がなくなる。
 
交際費等の支出の状況をかえりみると交際費等の課税の強化が必要であるという表現に変わる。
支出交際費等の金額
1961(昭36) 155,674百万円
1962(昭37) 378,694百万円
1963(昭38) 456,235百万円
1964(昭39) 536,451百万円
1976
(昭51)
税制調査会答申
 
交際費等課税の理由として、交際費等課税に対する強い社会的批判が挙げられるようになる。
国会で議論の的となる。
1974.2.22衆院本会議(佐藤観樹議員)―「昭47年度の交際費1兆3,255億円は、同年度防衛費1兆900億円を超え、1日36億円余が社用族によってクラブやキャバレーで飲み食いされ、ゴルフ場で接待されている」と発言
1977~1982
1977答申6頁
1978答申7頁
1980答申8頁
1981答申4-5頁
1982答申5‐6頁
社会的批判を理由にした交際費等課税の強化が数年にわたり続く。
 
1982
(昭57)
税制改正
交際費は原則損金不算入
これはあくまでも臨時的措置であることを明確にするとともに、この課税強化の効果、交際費等支出の動向がどのように推移するか見守る必要がある―とした。
 
C 産業政策目的の重要性が高まる(景気対策・中小企業対策)
2002
(平14)
税制改正
中小法人の定額控除限度額が年300万円から400円に引上げ
中小企業対策
2002.3.13衆院本委員会
塩川正十郎財相の答弁
2003
(平15)
税制改正
定額控除を認める中小法人の範囲を資本金1億円以下の法人に拡大
 
 
 また、公共政策目的が優先し、その枠内での産業政策目的を規制するという関係は、租税重課措置として交際費等課税を経済的ディスインセンティブ(大橋[2009]、388頁)をもたらすものとして、課徴金としての属性をもつものと指摘しています(同書p154)。
 
 
 
 
 
4. 感想等

 以上、交際費の課税趣旨・目的について記してきましたが、「濫費抑制」「資本蓄積策」から始まって、「資本蓄積策」が消え、「代替課税」が趣旨に上って、消えていき、「濫費抑制」と「社会的批判」が残ったということですが、平成25年の状況で、この二つの趣旨も再点検する必要があるかもしれませんね。
 
 今回のブログでは山本先生の書籍ばかり(三冊)取り上げてしまいましたが、先生はどの書籍でも、上記の経緯を踏まえて(何度も)「社会的批判の対象となる冗費・濫費としての交際費等」の範囲の見直しが必要であると述べています(検証 税法上の不確定概念 第2版」 p207)。措置法通達に委任しすぎ―ということでもあるかもしれません。
 
 山本先生の「形式基準」から「不確定概念」の引き継がれた内容の書籍は、近年発売されていませんが、税務弘報 2013年 02月号 [雑誌] で「法人税+更正の請求・税務調査手続きの不確定概念」で特集されていましたね。最近の判例・裁決が盛り込まれていて、参考になりました。
 
 また交際費の課税趣旨について、末永先生のようなアプロ―チの仕方(公共政策目的と産業政策目的)や1982(昭和57)年の答申「これはあくまでも臨時的措置であることを明確にするとともに、この課税強化の効果、交際費等支出の動向がどのように推移するか見守る必要がある」を見ると、交際費が措置法で規定されているということも頷けます。
 
 ただ、「交際費がなぜ措置法規定なのか?」という件については、昨年亡くなられた武田昌輔先生が、その辺りの事情を「造船疑獄」の頃の世相も交えて記したものがあります。
 
 次回は「計算構造」の論点に進みたいところですが、少し寄り道して、武田先生の書籍書籍を取り上げたいと思います。
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