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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第6回 営業権・のれん考(6) 営業権の意義

「週刊税務通信」 No.2862  平成17年3月21日
  「営業権」の理論と実務1(3回連載)
   東急ファイナンスアンドアカウンティング 顧問・税理士 高井寿氏
   税理士法人中央青山 代表社員 公認会計士・税理士 宮川和也氏
     ※社名・肩書は掲載当時のものです。
【今回の記事の目次】
 1. 週刊税務通信No.2862 p24~31の営業権の意義のまとめ
 2. 細川先生著 営業権の定義と認識 (p6~23)
 3. 感想等

【参考】 M&Aと営業権(のれん)の税務
  税理士 細川健著、税務協会出版局、平成12年
M&Aと営業権(のれん)の税務
M&Aと営業権(のれん)の税務
(2000/11)
細川 健

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[購入動機] 書名。当時は営業権関係でまとまったものが少なかった。
[コメント] 現在は改正が入りリファレンスとしては使えませんが、非常にお世話になった本です。

 前回まで、営業権の意義について、特に触れずに書いてきましたが、前回のH17税務通信記事の営業権の意義の「まとめ」を記してみたいと思います。 特にH18会計基準・資産調整勘定の導入前夜の営業権の整理となるので、興味深いものとなっています。

1. 週刊税務通信No.2862 p24~31の営業権の意義のまとめ
  同記事では、営業権の意義について、下記の3説を紹介しています。

 1. 超過収益力説 : 通説。S50.5.28東京高裁判決より定着。
 2. 差額概念説 : 企業再編実務面、会計基準において顕著。 S52.9.7高松高裁判決。
 3. 営業機会取得説 : 法基通7-1-5において例示。法律的営業権の一つ。
 これらの説は、H12発行の細川先生の書籍の紹介とほとんど変わっていません。この記事はH17ですので、H18の企業結合会計や資産調整勘定の登場の前年のものですが、この頃には既に「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」(平成15年10月31日)などで、おおよその行き先が見えていた感じです。その後、2の部分は「のれん」としての表示することとされ、一線を画す形になります。

 ここで会計・旧商法における超過収益力説の定着の端緒となったS50.5.28の東京高裁の判示は、下記の通りです。
 営業権とは、ある企業が同種の事業を営む他の企業が獲得している通常の収益(いわゆる平均利益)よりも大きな収益、つまり超過収益力を獲得できる無形の財産価値を有している事実関係と解されている。
 この超過収益力を獲得できる要因としては、当該企業の長年にわたる伝統と信用、立地条件、特殊の製造技術及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性等の多様な条件が考えられ、これらを総合包括して他の企業を上回る企業収益を獲得する場合、超過収益すなわち営業権の存在が認められる。
 当記事では、上の下線部をつなぎあわせて、超過収益力の営業権を
① 「当該企業の長年にわたる伝統と信用~条件」 により
② 「同種の事業を営む他の企業が獲得している通常の収益」
③ を超える収益を獲得できる 「無形の財産価値を有している事実関係」
と定義づけています(p27)。
 
 一方、「差額概念説」は「企業の買収決定額は、理論的には、時価純資産価額と株式価格との間で決定されると考えられ、営業権の価額は、算出されている企業買収決定額から時価純資産価額を差し引くことにより求められる」(p28)という考え方に立脚し、S52.9.7高松高裁でも「(いわゆる超過収益力とされる無形の経済価値を有する事実関係は)既存の企業の活動中に創出されるばかりでなく、他企業を買収することによっても得ることができる」とされ、定説として受け入れられ、「昨今の企業再編実務においても、最も身近に感じられる考え方」(p29)と位置づけています。 

 営業機会取得説に取り上げられている法人税基本通達7-1-5は下記の通りです。
 
7-1-5(織機の登録権利等)
繊維工業における織機の登録権利、許可漁業の出漁権、タクシー業のいわゆるナンバー権のように法令の規定、行政官庁の指導等による規制も基づく登録、許可、割当て等の権利を取得するために支出する費用は、営業権に該当するものとする。
 
 これらは、「何らかの法的規制等を背景とした経済的価値を着眼点にした学説であり、前述の「超過収益力説」や「差額概念説」に比して、その範囲は限定的」(p30)と記しいます。

 
 さらに「法律的営業権」「経済的営業権」「会計的営業権」に区分して、次のようにまとめています。

第6回 image1 


2. 細川著 営業権の定義と認識 (p6~23)
 
 H12細川著における営業権の定義の説明も、上記のH17税務通信の記事とほぼ同様のものと言えます。
 ただ、細川先生の本では、超過収益力説で、S50.5.28東京高裁と同趣旨の判示のS.46.4.26福島地裁の判示についても触れ、次のように要約しています(p7)。
a) 営業権(のれん)とは法律上の権利ではなく財産的価値のある事実関係であって、既設の企業が各種の有利な条件または特権の存在により他の同種企業のあげる通常の利潤よりも大きな収益を引き継き確実にあげている場合、その超過収益力の原因となる。
b) 超過収益力の原因としては、①既設企業の名声、②立地条件、③経営手腕、④製造秘密、⑤特殊の取引関係または⑥独占性などが考えられる。
c) 営業権(のれん)は、これらの諸要因、諸収益力を総合した概念であり、個々に分立した特権の単なる集合ではない。
 上記の3点が日本の法人税における営業権を考える上で、重要なポイントとし、実際の日本の課税当局に営業権(のれん)と認識される可能性についての個別事案ごとに考えるためには、超過収益力の発生原因を分析・分類する必要があるとしています(p7)

 
 また、先行の研究者である高瀬荘太郎博士の1933年「グッドウヰルの研究」(森山書店)の営業権の分類で、その形成条件として挙げている、
 ① 人的条件(技術敵条件):経営者及び使用人の才能、技術、性格
 ② 法的条件:法令による独占権
 ③ 自然的条件:営業所及び製造工場の地域
 ④ 資本家的条件:合同、連合、コンチェルン
を斟酌して、①人的要素、②法律的要素、③地域的要素、④経済的要素により分類し(p10)、これを日本の判例で例示されている「無形の財産的価値を有する事実関係」及び法人税法上、営業権(のれん)の一種とされる砂利採掘権、タクシーのナンバー権にあてはめ、下記のような表にまとめています(p14)。

第6回 image2 

(※) 高瀬博士の著書の言い方だと「人的グットウヰル」「法律的グットウヰル」「自然的グットウヰル」「資本家的グットウヰル」のようです。
片野一郎先生「高瀬荘太郎先生の会計学説」、1969
http://www.seijo.ac.jp/pdf/faeco/kenkyu/030/030-katano.pdf
(会計は不案内なのですが、一橋会計学の方のようですね)

3. 感想等
 
 H12の細川先生の本ですと
日本の法人税法上の営業権(のれん)は法律的権利を含んだ広い概念であると考えられますが、日本の課税当局が認定を行う可能性があるか否かについては、法律的営業権と経済的営業権から分けて考える必要があると考えます。鳥瞰してみると、法律的営業権が日本の課税当局に認定課税される危険が高いのに対し、経済的営業権はその危険が低いか課税されません(p15)。
とあります。現在では経済的営業権の多様な考え方が出てきているので、少し雰囲気が違うしれませんね(実際どうなんでしょうか?)。

 本日記した両論考については、説明や図解がわかりやすく参考になります。
 
 
 週刊税務通信で紹介していたS52.9.7高松高裁でも「(いわゆる超過収益力とされる無形の経済価値を有する事実関係は)既存の企業の活動中に創出されるばかりでなく、他企業を買収することによっても得ることができる」といのは、「差額概念説」も背景には「超過収益力」的な考えを持っているような言い方に見えたので、意外な感じでした。

 となると、第3回の論考で触れていた「非適格合併等の主要事業引継ぎ要件」への批判も、細川先生の整理された「人的」「法律的」「地域的」「経済的」のような超過収益力的な背景をもったものが移転されたと認めれれる非適格合併等により生じた「差額」を対象とする―という風に考えれば、少し納得感があるも―とは感じました(まあ、要件が曖昧なのは確かですが…明瞭は制度になってくれればなあという点で同感です)。 

 また、今回の税務通信p31や細川先生p14の図表やフレームワークは、前回でも少し触れた個別事案の検討に、とても役立つものではないかとも感じております。
 
 税法においても、条文上は営業権の意義規定は置かれておらず、判例・会計概念によることになりますが、国税不服審判所等が示したものとしては、
営業権の意義については、消費税法又は法人税法等の税法には規定されていないため、一般に会計学や商法等で用いられている概念によることになるが、そこでいう営業権とは、のれん、しにせ権などをいい、いわゆる法律上の権利だけではなく、財産的価値のある事実関係を含むものであって、企業の長年にわたる営業活動を通じて醸成される伝統、社会的信用、名声、立地条件、営業上の秘訣、特殊の技術及び特別の取引関係の存在等並びにそれらの独占性等の多様な諸条件を総合したものであり、将来にわたり他の企業を上回る企業収益を獲得することができるという超過収益力をその内容とするものと解される。(平13.12.21裁決、裁決事例集No.62 423頁)
などがあります。
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2012-10-27 : 営業権・のれん : コメント : 0 : トラックバック : 0
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