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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第62回 交際費総点検!(6) 「三要件説」の読み方 : 条文をどう読めば三要件なのか?~松沢智先生「新版 租税実体法」

新版 租税実体法―法人税法解釈の基本原理 [補正第2版]
 松沢智著、平成15年、中央経済社
新版 租税実体法―法人税法解釈の基本原理新版 租税実体法―法人税法解釈の基本原理
(2003/08)
松沢 智

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[購入動機] 実は図書館で初版(1994)とあわせてお借りしました。
 ※現在書店では取り扱っておりません。中古本ですと6,500円ぐらいです(2013年4月現在)
[コメント] こちらはとても勉強になります<(_)>

【参考】
山本守之 「税務調査の現場から法人税の争点を検証する」(税務経理協会、平成16年)
山本守之 「租税法の基礎理論 」(税務経理協会、平成25年)
伊藤義一 「税法の読み方―判例の見方」(TKC出版 2007年)
山本守之 「交際費の理論と実務」(税務経理協会、2009年)
藤井茂男 「製薬会社が医師の英語論文添削外注費の費用負担をした場合の交際費該当性
  (MJS「租税判例研究会」 第1回(H16.12.8)資料)
芝田佳津男 「交際費課税制度に関する一考察」(九州国際大学大学院法政論集 13
中村利雄 「交際費等の意義と範囲」(税大論叢第13号 S54)
今村隆 「再論・課税訴訟における要件事実論の意義」(税大ジャーナル2009.2号
酒井克彦 「クローズアップ課税要件事実論―要件事実と主張・立証責任を理解する
  (財経詳報社、平成24年)

【今回の記事の目次】
 1. なぜ萬有製薬事件が注目されるのか?
 2. 交際費等の範囲規定
  ―措置法第61の4第3項の「その他の」と「その他」
 3. 判決例における「二要件説」と「三要件説」
 4. 萬有製薬事件前に解説された学説としての「三要件説」~松沢智著 「租税実体法」
 5 感想等





1. なぜ萬有製薬事件が注目されるのか?

 交際費の判例といえば、まず「萬有製薬事件」(2003年)を挙げられる方が多いのではないでしょうか。なぜ、「萬有製薬事件」が注目されるかというと、個人的には次のような点にあると感じております。
 
1) 交際費の裁判で、納税者勝訴の事件であること。
2) 裁判において、交際費の成立要件として三要件説が採用されたこと。
3) 結果として、交際費の拡大解釈傾向に一石を投じたものであること。
 


1) 交際費の裁判で、納税者勝訴の事件であること
 租税訴訟、中でも交際費の裁判で納税者が勝訴することが稀であるようです。
 山本守之先生が「税務調査の現場から法人税の争点を検証する」(税務経理協会)の第ニ増補版の発行当時の平成16年に次のように記しています。
 
 昭和40年以降、交際費に関する勝訴判決は昭44.11.27東京高裁(興安丸事件)とここに取り上げた萬有製薬事件だけである
 
 当時でも、交際費では30年以上、納税者側の勝訴したものがなかった―ということのようです。
※ 53回で取り上げた弁護士活動費の交際費の判決(H24.9.19東京高裁)は、所得税の話です。
 
 
2) 裁判において、課税要件として三要件説が採用されたこと
 この事件は、東京地裁(二要件説)で納税者敗訴であったところを、控訴審の東京高裁(三要件説)で逆転勝訴しています。逆転勝訴という部分にも惹かれるところがあるかもしれませんが、二要件説、三要件説の新旧の両説が議論されたという構図に興味深いところなのでしょうかね。
 ※現在、最高裁まで争ったもので、三要件説が用いられたものはないようです。
 
そして、何よりも
 
3) 結果として、交際費の拡大解釈傾向に一石を投じたものであること。
 山本守之先生のご著書の各処で次のようなことを記されています。
 
 これは交際費の定義に関する実体法の規定が簡単すぎ、実務上はほとんど通達によって判断されているから、法律上の課税要件が議論されていない(以下略)。
 
【引用】 「租税法の基礎理論」 p517
 租税特別措置法第61条の4第3項では、(中略)、「その他」という不確定概念を多用し、規定それ自体が課税要件明確主義に反するおそれが強い。
 著者がかねがね疑問に思っているところは、課税庁やOBが執筆した解説書や質疑応答集では、接待、供応、慰安、贈答に続く「その他これらに類する行為」を幅広く解しているところである。
 
※ 課税要件明確主義
 国民の経済生活に法的安定性と予測可能性を保障する租税法律主義からの当然の要請。租税法律主義の内容をなす部分とも言える。
 
 
 「白紙委任規定」とまでは言いませんが、意義規定が簡単なわりには、不確定概念が多く、交際費の範囲が明確でないということでしょうかね(そのため「解釈」という作業が求められると、松沢智先生はおっしゃています(後述)。実務的には通達判断に流れて行ってしまいますけれどもね(反省))。
 
 さらに、現行法下の交際費課税は、昭和56年までの「冗費」「濫費」の量的規制に重心をおいた限度額を設けるという規定が、昭和57年より原則損金不算入という制度に切り替わっていますので、その意義として不明瞭な規定が置かれていれば、徴税サイドが交際費の範囲の拡大解釈に流れていくというのは、有り得る話である訳です。
 
 昭和56年(限度額)前と比して、昭和57年(原則不算入)以後では、意義規定の明確性の要請が高まっているはず―という言い方もできるかもしれません。にもかかわらず、この意義規定の整備がされていないということは、「措置法ゆえに本格的な法律論議がなされていない」前回の末永先生のご指摘)というのも、あながち外れていないと感じます。
 
 
 萬有製薬事件前の裁判で採用されていた「二要件説」では、課税側が拡大解釈傾向に歯止めが掛からないとも言え、萬有製薬事件で示された「三要件説」「かなり踏み込んだもの」と評価される所以もその当たりにあると思われます。

※ 萬有製薬事件については、あくまでも製薬会社と医師等という特殊事情での話―という見解の方もいらっしゃるようです。
 
 
 
 
2. 交際費等の範囲規定―措置法第61の4第3項の「その他の」と「その他」

 では、交際費の範囲規定である租税特別措置法第61条の4第3項はどのような規定ぶりとなっているのでしょうか。
 
(交際費等の損金不算入)
第六十一条の四  
 第一項に規定する交際費等とは、
交際費、接待費、機密費その他の費用で、
法人が、
その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する
接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(第二号において「接待等」という。)のために
支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいう。
 
 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
 
 飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用
 
 前二号に掲げる費用のほか政令で定める費用
 
 
 
 「その他の」「その他」「通常要する」など「不確定概念」と位置付けられるものが多いですが、税法の入門としては「その他の」「その他」の違いを見る「良い教材」と言えるかもしれません。
 
 条文上、「その他の」は「包括的例示」、「その他」は並列的例示として読まれます。伊藤義一先生の「税法の読み方―判例の見方」(TKC出版)のpp135~136では次のように説明されています。
 
「その他の」
ともにその字句の直前に掲げられたものの例示として一層広い意味の言葉を引き出す言葉
(包括的例示)
「その他の」は、通常、前に置かれた名詞又は名詞句が、後に続く一層意味内容の広い言葉の一部をなすものとして、その中に包含される場合に用いられる。
「その他」
(並列的例示)
「その他」は、この言葉の前後の語句が独立しており、それぞれが、一応、別個の概念として並列的に並べる場合に使われる。
                   (「税法の読み方―判例の見方pp135~136の内容を図表にした)
 
 伊藤先生の書籍の図表を用いて、上の交際費に当てはめてみると、下の図のようになります
62-image1.jpg
 
 
 
 少し「言葉遊び」をしますと、上記の条文中の「交際費」は、「交際費、接待費、機密費その他の費用」の中の一つですので、「交際費」は「交際費等その他の費用」ですが(「交際費」⊂「交際費等その他の費用」)、「得意先」は「その他事業に関係がある者等」とは別人ですので、「得意先」は「その他事業に関係がある者等」ではない(「得意先」≠「その他事業に関係がある者等」)ということになります。
 
 そのため、「その他の」の「の」は例示の「の」などと呼ばれることがあります。
 
 
 
 
 
3. 判決例における「二要件説」と「三要件説」

 この「その他の」「その他」が交際費の成立要件に絡んでくるのが面倒なところなのです。
 山本先生の著書で、よく用いられる「二要件説」「三要件説」の図表があります(初出は「交際費の理論と実務」(税務経理協会)でしょうか?)。
 
62-image2.jpg
 
 現在、インターネットで閲覧できるMJSの「租税判例研究会」の第1回(H16.12.8)藤井茂男先生の「製薬会社が医師の英語論文添削外注費の費用負担をした場合の交際費該当性には下図のように表現されています。
 
 
【引用】MJS租税判例研究会 第1回 藤井茂男先生 資料p11
 
支出の相手方
支出の目的
行為の形態
事例
旧二要件説
事業に関係のある者等であること
接待等の行為のためであること
要件としない
改装遊覧船運航時招待(東京地裁昭44.11.27)
新二要件説
接待等の行為により親睦の度を密にして取引関係の円滑を図ること
婦体役員温泉旅行(東京地裁昭53.1.26)、中古自動車の販売(横浜地裁平4.9.30)、萬有製薬事件(東京地裁平14.9.13)
三要件説
事業関係者との間の親睦の度を密にして円滑な親交を図ること
接待等のこれらに類する行為であること
萬有製薬事件(東京高裁平15.9.9)
 
※尚、三要件説は上記のものと異なる組合せの三要件もあるという説もあります。
インターネットで閲覧できる論文では、九州国際大学大学院法政論集13(175-207, 2011-03)の芝田佳津男氏「交際費課税制度に関する一考察」(pp186)に、「東洋郵船事件」(東京地裁昭44.11.27)において示された旧二要件に「高額な支出」を加えた三要件「他の三要件説」として紹介しています。

【参考】 CiNii 交際費課税制度に関する一考察 芝田佳津男
(「CiNii PDF 論文オープンアクセス」をクリック)

他にも酒井克彦先生が「三要件説」を、「三要件説」と「修正三要件説」の二つに区別していらっしゃいます(後述)。

【追記】 2013/4/25 四要件説・五要件説
学説では、次のような四要件説や五要件説もあるようです。
(1)四要件説 : 畑紀 「交際費等の範囲に関する拡大解釈の是正」 札幌学院大商経論集12巻3号
 三要件説+支出の高額性
(2)五要件説 : 高梨克彦 「交際費」 税法学300号
 ①支出の目的、②支出の相手先、③支出の具体的形態、④比較的高額な支出、⑤冗費又は濫費性
(3)五要件説 : 広瀬正 「判例から見た税法上の諸問題点」(1975)
 ①支出の相手方、②支出の目的、③行為の形態、④支出金額の多寡、⑤支出の効果

【参考】 中村利雄税大教授 「交際費等の意義と範囲」 税大論叢第13号 p554

尚、「支払金額の多寡」について判例では、海運業が営む引揚船を遊覧船に模様替えをして、行ったレセプション費用について争った東京地裁判決(S44.11.27※)では、これに同調しているようですが、同事件の東京高裁判決(S52.11.30)では、「支出金額の多寡」は独立した要件とすべきでない旨が述べられているとのことです(法人税実務問題シリーズ「交際費」(第3版)p45)。萬有製薬事件の高裁判決は、確か後者の立場であったと記憶しています。 

※「東洋郵船事件」 酒井克彦先生の「クローズアップ 課税要件事実論」pp292~293に判決文(抜粋)があります。


 
 萬有製薬事件では、争点となった英文添削料金の収入額と外注額の差額負担は、上記三要件のうち、「支出の相手方」の要件には該当するが、「支出の目的」「行為の形態」の要件には該当しないため、交際費等に当たらない―という判示でした。
 
 また、「支出の目的」については、「支出の目的が接待等のためであるか否かについては、当該支出の動機、金額、態様、効果等の具体的事情を総合的に判断して決すべき」(納税者自身の立証)とされ、何より「行為の態様」として、「接待等に該当する行為(交際行為)は、一般的にみて、相手方の快楽追求欲、金銭や物品の所有欲などを満足させる行為」と解されるとして、それ故に「相手方の受益の認識が必要」という判断を示しました(これは「これらに類する行為」の拡大解釈に歯止めがかかる意味で大きいです)。
 
 この「行為の態様」が裁判上、意義付けられたことが、「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」の拡大解釈に一石を投じた―という評価となったのでしょう。
 
 
 
 
 
4. 萬有製薬事件前に解説された学説としての「三要件説」~松沢智著 「租税実体法」

 この三要件説は、文理解釈からの忠実な帰結という評価をされる方が多いですが、浅学非才の私レベルでは「この条文をどう読んだら要件が3つになると読めるのか?」と感じてしまいます。
 
 また、この三要件説は「萬有製薬事件で初出なのか?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
 
 そこで学説としてよく引用されるのは、松沢智先生の「新版 租税実体法―法人税法解釈の基本原理」(中央経済社)です。こちらは「租税実体法」の「新版」としては平成6年11月発行、「新版」の「補正第2版」は平成15年8月発行であり、ともに「交際費・福利厚生費・広告宣伝費」の章で、「三要件説」について解説しています。従って、判例としては萬有製薬事件が初出ですが、学説としては事件前に既に語られていたもの―ということのようです。

[追記] 2013/4/25 萬有製薬事件前の「三要件説」
 昭和54年11月に発行された「税大論叢」第13号で、中村利雄税大教授「交際費等の意義と範囲」(p556)の(注3)において、「三要件説」を唱えている例として、次の方々のものを記しています。
・ 清水敬次助教授 シュトイエル28号9頁以下
・ 諸隈正公認会計士 シュトイエル76号37頁以下
・ 松沢智検事 税務弘報22巻13号63頁以下
・ 米山鈞一公認会計士 税経通信34巻4号58頁以下


 
 
【引用】 松沢智著「新版 租税実体法―法人税法解釈の基本原理」より
 (法人が事業活動をする場合に、広告宣伝費、福利厚生費、売上割戻等を支出するが)、これらの支出形態に交際費との類似性があるところから、同じ費用でも、交際費と認定されるか否かは極めて大きな問題である。
 
 ところが、前掲条文(措置法61条の4)の規定自体必ずしも明確にされていず、法は抽象的文言にとどまっているので解釈によって補う必要がある。
 
 交際費の概念については、他の法令のいずこにも、同一の用語はない。企業会計原則等にも見出せない。そこで措置法61条の4、令37条の5の規定自体を分析して解釈することになる(以上p320)。
 
 (中略)
 
 (同条の趣旨変遷を検討した上で)従って以上の見地に立脚して、同条の法解釈においては、法人制度の本来的意義を基礎に社会的存在目的の認識をふまえて、その制度目的に反するような不当な濫費の抑制の視覚から検討しなければならぬ。
 
 そこで租税特別措置法61条4第3項の定義規定を分析してみよう。同条は、交際費等となるための要件として「交際費、接待費、機密費その他の費用」(支出の目的)、「得意先、仕入先その他事業に関係がある者等に対し」(支払の手段)、「接待、きょう応、慰安、贈答その他これに類する行為」(行為の形態)三要件を規定している。
 
 従って、交際費等となるためには、支出の目的、支出の相手先、行為の形態の要件を具備したうえで、その意義を考えねばならぬ(以上 p322)。
 
 (中略)
 
 ところで、従来交際費概念の意義につき、交際の目的という「支出の目的」と、「接待、きょう応、慰安、贈答その他これらに類する行為」という交際の「具体的形態」とを混同して扱われていたようにおもわれる(p325)。
 
 接待、きょう応等の行為は、目的ではなく交際の目的で行われた具体的行為の類型(外形基準)に過ぎない。両者は厳に区別することを要する
 
 従って“慰安の目的”とか“贈答の目的”等と説くのは誤りであって、交際費概念の建設には目的と行為の態様は区別しなければならぬ。
 
 単に“飲み喰い”だけを捜し出して、それのみを基準として、会社の全従業員がデラックスな飲み喰いをしたとか、旅行したということだけを指摘して交際費と即断するようなことは誤っているといわなければならない。福利厚生の目的、ないしは給与の目的で支給する場合もあるからである(以上 p325~326)。
 
(中略)
 
 (以上のとおりであるから、法人の支出した費用のうち交際費等の性格をもたない費用は、損金算入制限の対象となる交際費等から場外されるもの解すべきであるが、)これに対し、法条が「交際費、接待費、機密費」のほかに「その他の費用」とあることから、交際費は例示にすぎず、それは単に法人の費用としての意味しかなく、法人の費用であれば、すべての交際費等の対象となるというような考え方がある。
 
 しかし、この考え方は誤っている。
 
 同条の文理解釈としても、「その他の費用」とは、「その他費用」と異なって、交際費以下の文言の例示ではあるが、その後に受けるその他の費用は、例示された費用と部分対全体の関係で同質なものの費用に限られるのであり、若し、「その他費用」として規定されてあればそれは併列的な別個の概念として、論者の説くように性質の異なる費用も入れる余地もある(林修三 「法令用語の常識」 14頁)。
 
 したがって、すべての損金に属する費用であれば足りるとする見解は、文理解釈のみを以っても妥当でないといわねばならぬ。
 
 しかも前述した同条の現代的視覚に基づく立法趣旨から考えても、右の見解に賛し得ない(以上 p326~327)。
 
 
 これらの議論を、拙い私見も交えて、まとめてみたいと思います。
 
 二要件説の段階では、条文の「~に対して」を「支出の相手先」、「~のため」を「支出の目的」として、文言通りの理解をしていたと思います(これが本来の素直な理解だと思います)。
 
 ここで、「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のため」の「その他」は、法律の理解の用法としては、並列的例示なのですが、「その他」に続く語が「これらに類する行為」ですので、実質的には「包括的例示」と変わりがない―と個人的には感じています。
 
 そのため、実質(包括的例示)としての「これらに類する行為のため」という文言内容を示すために、裁判において「接待等の行為により親睦の度を密にして取引関係の円滑を図る」という、条文には記されていない「解釈」が生まれた―と思っています。
 
 この新二要件の「解釈」は、昭和30~40年代の交際費課税の運用上では問題とならなったかもしれませんが、昭和57年改正で原則全額損金不算入制度に移行されると、「~に対して」(支出の相手先)「~のために」(支出の目的)の双方の文中表現に、並列的例示表現である「その他」があることから、課税庁サイドが、いきおい拡大解釈に走る傾向があったのでは―と想像しております。
 
 一方で、「~のため」という表現は「目的」としてだけで用いられる日本語でもありません。公益法人関係では「公益の目的のため支出」という表現があります。「目的」と「ため」を連続している表現ですが、この「ため」はどちらかというと「使途とする」というニュアンスで用いられていると個人的には感じます。
 
 改めて「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」の「~のため」という表現は、「目的」とも「使途」とも読めてしまう。この点、松沢先生はそもそも「支出の目的」と「行為の態様(外形基準)」が区別されないように読める条文の書きぶりに不満があるようですね。ここをキチンと区別し読むというのが、趣旨からの目的論解釈からも適当である―ということなのでしょう。
 
 ここで無理やりですが、二要件説において「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のため」の文言の解釈として、裁判で発達させてきた「親睦の度を密にして取引関係の円滑を図る」という「支出の目的」概念を、条文中の「交際費、接待費、機密費その他の費用で」という文言の「解釈」に「付け替える」―これで上述の三要件説が出来上がった?とも考えられなくもありません。
 
 「~で」の表現を、「目的」と読むというのは、文言解釈云々以前に、「国語」の表現としては私レベルではよく判らないところでありますが、こう解釈すれば「その他の」「その他」の表現で拡大解釈傾向にあったものを、今まで培った判例解釈などでフタができる上に、趣旨に応じた目的論解釈としても風通しが良くなる―ということではないでしょうか。
 
 もっとも、「支出の目的」を、松沢先生のように「交際費、接待費、機密費その他の費用で」に対応するものと読まないで、「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために」という文言を「支出の目的」と「行為の態様」に分解して理解する―という方もいらっしゃいます。税大ジャーナル2009.2号で今村教授が次のような記事が寄稿されています。
 
【引用】 税大ジャーナル2009.2 pp34~35
 
 交際費は、定義規定そのものはなく、租税特別措置法(以下「措置法」という。)61 条の4 第3 項に、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(…)のために支出するもの」と規定しているところから、その要件を読み取るほかないが、2要件説というのは、これを①支出の相手方が、事業に関係ある者等であること、②支出の目的が接待等を意図するものであることと読むのに対し、3要件説というのは、「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」というのを、「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であって、かつ、それらの行為のために支出するもの」と2つに分断して読む読み方であり、2要件説の上記①と②の要件に加えて、③支出行為の態様が、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であるとの要件が必要であるとする見解である。
 
 
 
 
 
 
 
 
5 感想等

 上で松沢先生は三要件説を、趣旨からの目的論解釈をする際に「濫費抑制」を挙げられていたのですが、萬有製薬事件で三要件説を支持した東京高裁では、どちらかというと「自己資本の蓄積」や「代替課税」論を展開していたようです(こちらについては、あまり今風ではない―という趣旨の批判もあるようです)。
 
 また三要件説も酒井克彦先生の「クローズアップ課税要件事実論―要件事実と主張・立証責任を理解する」を見ると「三要件説」と「修正三要件説」とに区分しています(同書p298)。修正三要件説「行為の形態」の「判断」において、客観的な相手方における認識可能性を加えるところに特徴がある―ということです(「三要件説」として広島高裁16.3.3やオリエンタルランド事件の東京地裁判決平21.7.31、「修正三要件説」として萬有製薬事件の控訴審東京高裁判決を挙げています)。
 
 個人的には、酒井先生の区分の方が松沢先生の「三要件説」と萬有製薬事件の「三要件説」の違いがわかって、モダンな印象がありますね。

 いずれにせよ、いろんな方が、いろんな事をいうこと自体に、交際費課税というもの性格が出ているような気がしますね。


[追記] 2013年4月25日
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