元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

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第63回 交際費総点検!(7) 「萬有製薬事件」を簡単に説明すると…「50選」「53選」の判例評釈に「図表」を付けてみました!

交際費税務に生かす判例・裁決例53選
 林伸宣・四方田彰・角田敬子著、税務経理協会、2010年
交際費税務に生かす判例・裁決例53選交際費税務に生かす判例・裁決例53選
(2010/09)
林 仲宣、角田 敬子 他

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[購入動機] 書名
[コメント] 簡明・平易な判例評釈の入門書的なもの。S50以降の交際費の判例集です。
 ※記事中は、私の手許にある初版の「50選」からの引用です。

【参考】
山田二郎、大塚一郎編 「租税法判例実務解説 (判例実務解説シリーズ)」、信山社、平成23年
藤井茂男 「製薬会社が医師の英語論文添削外注費の費用負担をした場合の交際費該当性
  (MJS「租税判例研究会」 第1回(H16.12.8)資料)
酒井克彦 「クローズアップ課税要件事実論―要件事実と主張・立証責任を理解する
  (財経詳報社、平成24年)
【今回の記事の目次】
1.  判例・裁決の平易な解説~「交際費税務に活かす判例・裁決例50選」「同53選」
2.  「50選」「53選」の萬有製薬事件(東京高裁H15.9.9判決)の評釈に「図表」を補完
3. 感想等




1. 判例・裁決の平易な解説~「交際費税務に活かす判例・裁決例50選」「同53選」

 交際費の判例評釈の中でも、非常に平易な言葉でまとめられたものに、林仲宣先生・四方田彰先生・角田敬子先生の「交際費税務に生かす判例・裁決例50選」(初版。第ニ版では「53選」)があります。
 
 こちらは昭和50年以降の交際費の裁決・判例事案を選び、「納税者の主張」→「課税庁の主張」→「裁判所の判断」→「解説」という項目建てで、わかりやすく簡便な形で示しています。TAINS・TKCコード、判例集の対応表も掲載されていますので、判例等に馴染みが無い方の入門の本としては、とても良いものだと思います。
 
 「50選」の「はしがき」で林先生は、執筆動機を次のように書かれています。
 
【引用】 「交際費税務に生かす判例・裁決例50選」 はしがきpp1~2より

 交際費課税についての解説書や解説記事は少なくないが、その多くはケースバイケースの事例解説となっている。課税の立場にある執筆者の見解は、課税庁において集積された否認事例に基づく展開であり、またそれらの事例を羅列できるほど詳細な通達に立脚している。一方、納税者側に立つ執筆者は、通達の内容を軸に、実務家としての経験を加味した見解を示すことが多い。本来、交際費課税は制限的であり、容認される幅は極めて短いと思われるから、いわば隙間をぬうような納税者の主張であっても、否定的な判断が出てくることは予測がつくといえよう。
 
 実務に接する機会にあっても、納税者と課税庁の相反する見解を客観的な見地から検討することは少ないその意味で最終的な判断は残念ながら納税者の主張に対する理解が乏しいことは否めないが、判例及び裁決事例に示された事実や事情、当事者の理解と認識を参考にすることは極めて有益と思う。

 
 「ケースバイケース」の事例解説、「課税の立場である執筆者」と「納税者側に立つ執筆者」の視点の違い、「通達」偏重と「客観的見地からの検討不足」など大所高所からの御指摘に部分は、日常業務に追われる自分にはとても耳が痛いお話です。「どれだけクライアントに応えられるか」という問いに答えるには、裁決・判例での「当事者の理解・認識」を手繰っていくというのも、御尤もなお話だと思います。
 
 昭和50年以降の裁決・判例を取り上げた理由については次のように述べられています。
 
【引用】 「交際費税務に生かす判例・裁決例50選」 はしがきpp2~3より

 交際費課税のリーディングケースとされる「ドライブイン事件」の第1審判決が昭和50年6月24日であった。事例の検索を昭和50年以降と時期を区切ったのは、この昭和50年が交際費課税に対する納税者の視野が広がった意識改革の時期と考えるからである。

 そうなるといささか個人的な思い出であるが、日本税法学会関東地区研究会で御指導いただく機会が多かった故高梨克彦先生が、この「ドライブイン事件」の納税者代理人であったにもかかわらず、先生ご自身から交際費課税の論理を直接、ご教示いただく機会を逃したことは、慚愧に堪えない。
 
 「ドライブイン事件」とは観光バス運転手への心付けが交際費となるかで争われた事案です。こちらで記されている故高梨克彦先生は、前回(第62回)のブログ「五要件説」の学説を述べられた先生として触れました(こういう御関係があったのですね)。控訴審東京高裁昭52.11.30判決も「旧二要件説」(①支出の相手方、②支出の目的)を展開しているものとして有名なようです(酒井克彦先生「クローズアップ課税要件事実論―要件事実と主張・立証責任を理解する」、p295)。
 
 
 ただ、こちらの「50選」「53選」は、「平易・簡明」を求めているため、裁判で示された数値の詳細やそれを図表したもの等は省かれています。そのあたりを補いつつ、「萬有製薬事件」において、当事者がどのような状況で、どのような主張をしていたか、まとめてみたいと思います。
 
 
 
 
2. 「50選」「53選」の萬有製薬事件(東京高裁H15.9.9判決)の評釈に「図表」を補完

 前回(第62回)のブログで少し触れましたMJS研修で用いられた藤井茂男先生の資料「製薬会社が医師の英語論文添削外注費の費用負担をした場合の交際費該当性」などの数値から、私なりに「萬有製薬事件」を図表化してみました。
 63-image1訂正
 
 う~ん。第一印象では「交際費に該当するかどうかは分からないけど、この差額は何だかまずくないかな…」と慎重に検討したくなるところですよね。まあ、図の情報だけで見れば、納税者の「寄附金」という申告は肯けるところです。
 
 「交際費税務に生かす判例・裁決例50選」では、事例6(pp39~43)として、東京高裁判決の要点が次のように記されています。
 
【引用】 交際費課税に生かす判例・税務50選 pp39~41
納税者の主張
課税庁の主張
[主張] 交際費等に該当しない
 製薬会社は、大学病院の医師等の研究論文について、英文添削する費用を負担している。この場合、医師等から実際に受領している添削代金よりも多い差額費用部分は、医師等に対する交際費には当たらない。
 
(1)すべてが事業関係者ではない
 英文添削の対象者は、医学部又は医科系大学に所属する研究者であるが、その中には、製薬会社が製造・販売する医薬品の処方に携わらない基礎医学の研究者や、処方権限のない留学生、研修医、大学院生、大学又は付属病院の職員でない医員、さらに付属病院が新たに医薬品を購入する際に全く関与しないものが多く含まれており、すべてが事業関係者であるとはいえない
 本来、大学の付属病院に勤務する医師は、高い倫理観に基づき、患者のために最もよいと考えられる医薬品の処方を行う。そのため、製薬会社が英文添削を行ったからといって、処方を左右できるものではない
 
(2)歓心を買う行為ではない
 また、英文添削により作成された論文が、すべて雑誌に掲載されているわけではなく、添削料金は支払ったものの、雑誌に掲載されずに終わっているものが大半である。そのため、英文添削によって好印象を抱かせたり、歓心を買ったりということは期待できない。
 
(3)相手が受益を認識していない
 そのうえ、添削料の支出の相手方である研究者は、製薬会社が英文添削料の差額を負担していることを知らず、利益を受けたことの認識がなかったのであるから、支出は「接待、供応、慰安、贈答」あるいは「その他これらに類する行為」にも該当しない。
[主張] 交際費等に該当する
 英文添削料及びその経済的な負担は、客観的な状況からみて、支出の相手方である医師等にとって、飲食等に代表される接待交際費と実質的に何ら変わりがない精神的な欲望を満たすものである。
 
(1)緊密な人間関係構築の手段
 すなわち、医師等にとって、英語による研究論文を作成することは、その名声及び地位の向上という欲望を満たす重要な要素であり、製薬会社は、医師等のそうした欲望を満たすことが、取引先である医師との緊密な人間関係を構築するための有効な手段と認識しており、医師等もそのことを認識しうえで、利用できる立場であった。
 
(2)交際費成立の二要件に該当する
 交際費の要件は、第一に「事業に関係がある者」、第ニに「支出の目的がかかる相手方に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のためであること」とある。製薬会社と医師等の関係は、医療情報の伝達を介して必然的な関係があるため、事業の関係者に当たり、また、英文添削自体が医師等との親睦の度を密にして、取引関係の円滑な進行を図るために支出するものである。
 (「交際費税務に生かす判例・裁決例50選」(初版)、pp39~41より文章引用。作図・小見出しは引用者が付した)
 
 MJSの藤井先生の資料では、もともと更正処分の理由附記では、「この負担額は、次の理由から病院等の医師との関係を円滑にすることを目的とするため、交際費に該当」として、その理由に①英文添削収入と外注費の差額は経済的な利益の供与、②医師等は医薬品購入決定に影響力を行使しうる立場、③医師はMR(医薬情報担当者)に医薬品情報を提供しうる者、③英文添削サービスは、MRが窓口となり、貴社の取引先に限定―が挙げられているとのことです(p2)。課税庁側はMRの役回りにも着目していたようですね。

【追加】 2013/4/26 医薬情報担当者(MR)
 Wikipediaによると、昭和の後半(40~60年代)の頃のMRさんの接待は目を付けられていたような記述があります。
(引用) 
Wikipedia 医薬情報担当者 「歴史」から
「昭和40年代から60年代にかけて、医薬品市場は過度の「添付販売」や「景品販売」、あるいは巨額の接待攻勢が行われ、熾烈なシェア争いが繰り返されていた。そのため、医薬品の本来の品質・有効性・安全性とは無関係に薬が処方される悪弊が時として起こり、それに伴う重篤な薬害なども発生していたため、他業種から見ても異質な業界として世間からの批判が繰り返されていた。この悪弊は、MRに価格決定権があった事に起因すると言われている。」

 
 同資料では、納税者が元々このサービスのきっかけは、S59まで在籍していたウォーカー博士の好意によって始めたもので、博士の帰国後も会社として行っていたということのようです(p3。学術発展目的という主張)。また、課税庁は反論として、差額負担が非公表であり、対象者が限定的であることから、公平性・透明性が確保できていないものなので、学術奨励金と理念・内容が異なり、同視できるものではない―と述べているようです(p5)。
 
 
高裁の判決は、「50選」では次のようにまとめられています。

 【引用】 交際費課税に生かす判例・税務50選 pp40~41
裁判所の判断 東京高裁H15.9.9判決
[判示] 英文添削の差額負担は、交際費に該当しない
(1)交際費成立には「三要件」の充足が必要
 交際費に該当するためには、①「支出の相手方」が事業に関係あるものであり、②「支出の目的」が事業関係者との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることであるとともに、③「行為の形態」が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であることの三要件を満たす必要がある。
 
(2)「支出の相手方」:英文添削を依頼した研究者等は「事業関係者」に該当
 英文添削の依頼者である研究者らが、①の事業に関係ある研究者に該当する可能性は否定できない。
 
(3)「支出の目的」:当初から交際目的であったとは認めがたい
 ②の支出目的は、英文添削の依頼を受けるに際し、事前に公正取引委員会に確認のうえ、指導に従って料金をとることにしていた点や、当初、海外への研究論文を発表したいという若手研究者を支援するという目的があった点などからするに、当初から交際目的であったとは認めがたい。
 
(4)「行為の形態」:相手の歓心が買えるとはいえず、学術的要素が高い
 ③の行為の形態は、英文添削の差額負担自体、相手の歓心を買えるという性質のものではなく、学術的要素が高い点、金銭の贈答などと同視できない点などからも、「接待、供応、慰安、贈答に類する行為」に該当するとはいえない。
 
 以上の点から、英文添削の差額負担は、交際費に該当しない。
 
 
 「三要件説」の詳細については、前回のブログ(第62回)をご参照ください<(_)>

 MJSの藤井先生の資料の記述から、少し補足させて頂くと、「支出の目的」については「動機、金額、態様、効果等の具体的事情を総合して判断」すべきと判示しているとのことです。
 
 その「総合判断」として、①取引関係の円滑化は主目的ではなく、社会貢献が本来の意図と認められる、②委託外注費が収入より高額になったのにも、経緯を見るとそれなりの事情がある、③差額は高額であるが、1件あたりの負担は大きくない(差額が公表され、差額が生じないように改訂)、④英文添削依頼者は、事業関連者としての結びつきは、「かなり間接的」で、掲載実績についても基本的にその研究内容で決まるもの―として「動機、金額、態様、効果等からして」、「親睦の度を密にして、取引関係の円滑な進行を図るという接待等の目的でなされた」と認めるのは困難という論法だったようです(p6~7。一部かなり意訳してます<(_)>)。
 
 また「行為の態様」について、「租税法判例実務解説 (判例実務解説シリーズ)」(信山社、2011)から補足しておくと、この判決では交際行為を「一般的に見て、相手方の快楽追求欲、金銭や物品の所有欲などを満足される行為と解される」としていることが注目すべき点とのことです(p140)。
 
 これは二要件の立場をとった課税庁側の「支出の目的がかかる相手方に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のためであれば足り、接待等が、その相手方において、当該支出によって利益を受けていると認識できるような客観的な状況下で行われる必要はない。交際費等に該当する接待等の行為は、相手方の欲望を満たすものである必要はない」という主張とは、大きなコントラストがあります(「判例実務解説」pp140~141)。
 
 この点、過去の判例(大阪高裁昭52.3.18)などから、それを支出する側の意図だけでなく、接待を受ける側がそれによって利益を受けているような客観的状況がなければならない―という立場をこの判決でも採ったようです(「判例実務解説」p141)
 
 よって、「支出の相手方」が事業関係者と認められるものの、「支出の目的」が「事業関係者との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図るため」であるということはできず、「行為の形態」が接待等であるとは認められない―ということのようです。
 
※「租税法判例実務解説 (判例実務解説シリーズ)」の「32 英文添削料の差額負担と交際費―萬有製薬事件」は山本守之先生が執筆担当をなさっています(p139~141)。「事案の概要」「判旨」「評釈」のパートわけで、「評釈」で「1 支出の相手方」→「2 支出の目的」→「3 行為の態様」→「4 本判決の影響」→「5 課税要件との関係」と解説されています。
 
 「50選」だと「少し平易にすぎるかな」―と思った方は、こちらがコンパクト(4頁)で良いのではと思っております。
租税法判例実務解説 (判例実務解説シリーズ)租税法判例実務解説 (判例実務解説シリーズ)
(2011/08/05)
山田 二郎、大塚 一郎 他

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3. 感想等

 萬有製薬事件の数字を見て、皆さんお感じになられるところは「差額って交際費になるの?」というところだと思います。次回は、まず、想起される判例(記念行事費用と祝い金)と、本件が起こったH6~H8頃ならば、意識してしまいそうな事例(証券会社の損失補てん)を取り上げたいと思います。

 タネ本としては「
交際費―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ) 」を用いたいと思います。こちらの本は、「50選」「53選」と対比すると取引を図解化しているものが多いのが特徴ですね(と思っていたら、著者が八ッ尾順一先生でしたので、頷けます)。

 今回取り上げた「50選」「53選」は、実務的にはクライアントに説明するには丁度良い「語り口」で書かれているな―と感じます。加えて、法学部の学生さんが読むような法律学習書っぽくないので、「書きぶり」としては、税理士試験の解答レベルのような感じかもしれません。受験生は一つのベンチマークとして、読んで見ても良いかもしれませんね(まあ、交際費だけだと話になりませんが…)。

[追記・修正] 2013/4/26 図表画像の修正・文章一部追加

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