FC2ブログ
元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第64回 交際費総点検!(8) 「行為課税」としての交際費~「祝儀収入と交際費」「証券会社の損失補てん」

法人税実務問題シリーズ 交際費 [第3版]
 日本税理士連合会編、八ッ尾順一著、中央経済社、平成10年
交際費―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ)交際費―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ)
(2007/11)
八ッ尾 順一

商品詳細を見る

[購入動機] 書名
[コメント] こちらの本は取引の図表なども豊富です
 ※第5版まで発売(2013年4月現在)。上記写真は第5版です。

【参考】
林 仲宣、角田 敬子 他 「交際費税務に生かす判例・裁決例53選」 、税務経理協会、2010年
【今回の記事の目次】
1. 交際費課税の「行為課税」論~祝金収入と交際費等(最高裁平成3年10月11日判決)
2. 交際費の課税事例~証券会社の損失補填(1991年)
3. 感想等




1. 交際費課税の「行為課税」論~祝金収入と交際費等(最高裁平成3年10月11日判決)

 前回のブログ(第63回)からのつづきで、「差額が交際費となりうるか?」について、今回は記してみたいと思います。
 
 旧来より、交際費は一般には「行為課税(行為税)」の性質があるとされています。課税(する)されるには「行為」という外形基準がある―ということです。

 萬有製薬事件(東京高裁判決)では、「三要件説」採用により「行為の態様」が交際費の成立要件とされ、さらに、この「行為」は「相手方の快楽追求欲、金銭や物品の所有欲などを満足させる行為」であり、それには「相手方の受益の認識が必要」判示しました。より「行為課税」の輪郭がハッキリしてきた感があります。
 
 一方「二要件説」の立場にたてば、「支出の目的」「支出の相手先」のみが成立要件とされ、「行為の態様」を問わないということになります。

 この場合、本来「寄附金」のカバーすべき「金銭その他の資産の贈与」と交際費における「贈答」との区分や、「寄附金」における低額譲渡等の「経済的な利益の供与」との重複が一層懸念されます。これでは当事者の別―課税側と納税者―により、どのようにも解釈される素地を残すことになるのではないでしょうか(交際費課税(全額損金不算入)の「拡大解釈」傾向)。
 
 この点について、「三要件説」が判示される「萬有製薬事件」の前にも、交際費課税が「行為課税」であることに言及している有名な判決があります(東京地裁平元.12.18判決や最高裁平3.10.11判決)。

 
 「交際費―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ) 」(第3版)では、次のように図解にされています(p43)

64-image1.jpg
 
 会社主催の記念行事の際に受ける「祝金」について、①記念行事費用から「祝金」部分を控除した残額を交際費の損金不算入の対象とするか、②記念行事費用全額を損金不算入の対象とするか―を争ったものですが、判例では②の立場が取られています。
 
 前回のブログで取り上げた「交際費税務に生かす判例・裁決例50選」では、「納税者の主張」「課税庁の主張」と「裁判所の判断」を次のように記しています。
【引用・まとめ】 (「交際費課税に生かす判例・裁決例50選」(初版) pp180~181
納税者の主張
課税庁の主張
[交際費等の支出額]
 記念行事費用-祝金

 納税者は、鉄鋼並びに鉄鋼製品の卸販売等を営んでいる株式会社である。創業25周年記念並びに工場設備の増設及び工場社屋完成の落成を祝うための式典を催した。納税者はその納税申告において、本式典の費用から招待客から受領した祝金を差し引いた残額に損金算入限度額を控除した残りの金額を損金不算入として申告を行った。

 祝金は主催者の収益(雑収入)として計上すべきものではなく、交際費の費用の中で、その控除項目として経理処理されるのが妥当であり、祝金を交際費等の額から控除せず収益とすることは、社会全体にとって、交際費の二重課税の結果となる。

 二重課税のような不当な結果を来す解釈は、回避すべきである。
[交際費等の支出額]
 記念行事費用の全額

 本件記念式典は、納税者が事業に関係がある者を招待して接待、供応するために開催したものであるから、その費用全額が交際費等に該当するものである。

 本件記念行事は、納税者が事業に関係ある者を招待して接待、供応するために開催したものであるから、その費用全額が交際費に該当するものであり、祝金相当額の部分は、その支出がなかったとみるか、その交際費性が失われるとかの関係にあるとすべき根拠はない。
(「交際費課税に生かす判例・裁決例50選」(初版) pp180~181より文章引用し、引用者が作図・小見出しを加えた。裁判前の不服申し立てにおける裁決(昭62.8.25)、浦和地裁平2.11.19判決、東京高裁平3.4.24判決、最高裁平3.10.11判決)

「交際費課税に生かす判例・裁決例50選」(初版) pp180~181
裁判所の判断
[交際費等の支出額]
 記念行事費用の全額

 本件祝金は、本件記念式典に招待を受けた客が祝意を表すために主催者である納税者に対して贈呈した金銭である。本件記念式典に招待されなければ、祝金を贈呈されることもなかったという点においては、本件祝金の贈呈と本件記念式典費の支出とは密接な関係にあるといえる。

 しかし、本件祝金は当初から本件記念式典の費用の一部に当てられていることが予定されていたものではなく、納税者は祝金の贈呈の有無及びその金額の多寡にかかわりなく、当初から本件記念式典全額の支出が予定されていたものである。その場合、本件記念式典との関係において、損金不算入の対象となるのは、本件記念式典費用の全額であって、これから祝金を控除するような取扱いは解釈上許されないと解するのが相当である。
 
 「祝金」のケースでは、負担予定額や収入額が当初より不確定であるという点も、上記の判断の背景にはあったようです(当初より負担が予定されている「会費制もしくは協賛形態」の場合には、それぞれの負担が交際費とされます)。
 
 ここで、納税者は何故「二重課税」云々について主張したのでしょうか。この点、この裁判に先行する判決・裁決などを用いて、「交際費―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ)」(第3版)では、「行為課税」に絡めて、次のように解説しています。
 
【引用・まとめ】 「法人税実務問題シリーズ 交際費」(第3版)
 交際費課税は、接待等の行為があったときにその行為に対して課税すること、つまり一種の行為課税をその本質とすると言われている(「交際費」p42)

●措置法計算規定に(※管理者注 控除することに)別段の定めなし
●本件は、「祝賀会主催者側の祝賀会開催」「招待客側の祝金支払い」二つの接待行為がある。
東京地裁 平元.12.18判決
裁決 昭62.8.25
 措置法62条(当時の記載ママ)の規定によると、資本の金額が5,000万円を超える法人については、当該事業年度において支出する交際費等の額が全て損金不算入となり、その控除、減額等の計算に関する格別の規定が置かれていないことからすると、同条は、当該事業年度に支出する同条3項所定の交際費等の額の全額を損金不算入とする規定であると解するのが相当である。

 原告がいうところの祝金は、主催者によって催される行事の機会を利用して招待客が行う一種の交際行為であると解されるものである。したがって、祝金と、行事の開催に係る交際費等との関係は、同一の機会に行事の主催者と招待客との2つの交際行為を行い、それぞれが交際費等を支出したという関係である。

 交際費等の額の計算においては、祝金収入分につきこれを控除するなどといった方法で考慮することはできないものというべきである。
…しかして、祝賀会の開催費用から招待客が持参した祝金を差し引くべきかどうかの議論を上述の交際費課税が行為課税であるという考え方にあてはめると、祝賀会の開催と祝賀会の支出とは、密接不可分の因果関係があるとしても、その両者は、あくまでも別個独立の接待行為であって、祝賀会の関係者にとってみれば、接待客が祝金を持参するかどうかに関係なく祝賀会を開催し、かつ、所定の関係者を招待するものであり、また、祝金の支出者は、祝賀会に出席しない場合でも祝金を支出することは有り得るのである。

 いいかえれば、同時に二つの接待等の行為が行われるのであるから、それぞれの行為の支出する金額がそれぞれの交際費等の支出に含まれるのはむしろ当然であるということになる。
「法人税実務問題シリーズ 交際費」(第3版) pp42~44
  「二つの交際行為」がある―というのは、興味深い観点ですね(これが納税者側の「二重課税」批判となる部分となります)。「祝賀会主催者側の祝賀会開催」と「招待客側の祝金支払い」は、「行為課税」の観点に立てば、「二つの別行為」である―ということのようです。

 言いかえれば「一行為」と「一支出」に対応がハッキリしており、そもそも「二つの行為・支出」の「差額」というものは、交際費課税には馴染まない―と言えるかもしれません(「当初から予定」というのもキーワードとなりそうです)。
 
 
 
 
 
 
2. 交際費の課税事例~証券会社の損失補填(1991年)

 「三要件説」が裁判でも採用されるようになってきてからは、交際費の「拡大解釈」傾向に少し歯止めがかかったようにも見えますが、従来は「課税の趣旨」「社会的批判(冗談・濫費抑制)」にあったこともあり、「使途秘匿金課税」(H6創設)や「不正行為等に係る費用等の損金不算入」(H18創設)が制度化される以前は、いきおい「社会的批判」が強そうなものは、「交際費」で処理してしまおう―という雰囲気はあったのかもしれません。
 
 下の事例は、「交際費―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ)(第3版)」からの「証券会社の損失補てん問題」の解説です。
 
 この事例は、平成初期に大変な社会問題となったものです。当時の旧証券取引法においては、勧誘段階で「損失補てん」を約することは禁止されていたのですが、「事前約束なし・事後の損失補てん」は明文化されていませんでした。そのグレーなところを、バブル期に大手証券会社が顧客に対して大規模に行ったものですから、相場操縦の疑いや暴力団との関係なども取り立たされて、大きな批判を呼びました(その後、旧証取法には、これらの行為についても罰則規定が盛り込まれることになります)。
 
 実はこちらは、平成3年6月の税務調査が発端となって、明るみになったそうです(Wikipedia「損失補填」参照)。

  今の金融商品取引法や税制で考えると、「不正行為等に係る費用等の損金不算入」の規定でカバーするものなのかもしれません。もし業法に引っかからない類のものならば、「寄附金」という発想もあります。
 
 下の解説では、当時の課税庁は「交際費」として課税したのでは―ということのようです。
 
 「二要件説」の立場で「行為の態様」を問わないのであれば、そのような処理となる―ということでしょうかね。措置法の「その他これらに類する行為」の拡大解釈の傾向があった時代とも言えるかもしれません(まあ、「三要件」で考えても、「受益」の認識はあったのかもしれませんが…)。
【引用】 「法人税実務問題シリーズ 交際費」(第3版) pp16~17
 平成3年7月6日の朝日新聞によれば、東京国税局が、野村、大和、日興、山一の4社に対して、次に係る損失補填額を「大口顧客との関係維持をねらった交際費」にあたるとして更正処分を行ったという。
〈表1〉4大証券への課税処分
会社名
損失補填額
追徴課税額(概算)
野村證券
大和証券
日興証券
山一証券
89億9,000万円
14億6,000万円
47億1,000万円
48億4,000万円
40億5,000万円
6億5,000万円
21億2,000万円
21億8,000万円
200億円
90億円
(朝日新聞平成3年7月6日朝刊)

 ただ「損失補填」の範囲が明らかでなく、その定義も定かでないので、課税の対象となったものがどのように把握されたか基準が明確でない

 このような損失補填については、転換社債やワラント、非上場の債権を活用してなされていたらしいが、実際、証券会社がこれらの債権等を顧客に対して恣意的に利益を生じるように取引をしていたと第三者が断定することはなかなか難しいようである。国税当局もどれほどの利益を顧客に与えたかという具体的な判断が困難であるところから、その取引そのものに対して通常の取引とみられるか否かによって損失補填か否かを判定していたものと思われる

 また、損失補填先を巧妙に隠す方法として、都銀の海外法人を利用してN証券は補填先企業3社に対して、自社が所有していたワラントを売却し、さらに大手海運会社ロンドン現地法人にそれらのワラントを転売した。これらの転売には手数料が上乗せされてそれぞれに売却され、最終的にはS石油の特金口座に振り込まれたようである。そして、これらの一連の売買については、N証券会社がすべて指示していたといわれていることから、当初から損失補填をするために巧妙に迂回した取引を行ったものとして、国税当局によって交際費の課税がなされたものである。


64-image2.jpg

 なお、山一証券は簿外損失の「飛ばし」によって、平成10年3月に自主廃業した。
 
 ただ、当時としても交際費課税には疑問の声があったようです。「交際費―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ) 」では、武田昌輔先生の意見を引用して、次のように解説しています。
【引用】 「法人税実務問題シリーズ 交際費」(第3版) pp17~18
 ところで、これらの損失補填が交際費等に該当するか否かであるが、この点に関して武田昌輔教授は次のように述べている(「税研」‘91.7、2頁)。

 「これらの内容はかなり複雑のようであるが、この損失補填に対する税務上の処理は、課税上「交際費等」として取扱われているということである。当局としては種々検討した結果であって、いわば落としどころはこんなところかもしれない。しかし、これを「交際費等」として取り扱うことには、いかにも不自然さを感ずるのである。税法では、交際費等とは、「交際費、接待費、機密費その他事業に関係のある者等(文章ママ)に接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの(専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用その他法令で定める費用を除く。)をいう」(措法62③)としている。この定義からいえば、本件は、「その他これらに類する行為」ということになるのであろうが、これらのように大きな額は接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為とみることには問題があるように思われる。当社は80億円ばかり相手方に交際のために差し上げましたなどというのは、常識に合わないように思われる。私は、これは少なくとも寄付金にすべきだと思う。もし、当初から損失補填をする契約があるのであれば、損金と認めるべきであると考える。そのこと自体が、違法な行為あるいは好ましくない行為であるというのであれば、それ自体を規制する法律等によって制裁を加えるべきである。」

 交際費課税のもともとの源泉が、個人の消費欲望を満足させる支出であることを考えれば、このような損失補填を交際費ということは法人税法の感覚からしてもうなずけないのではなかろうか。
 
 
 
3. 感想等

 上記二件のような議論を踏まえると、「萬有製薬事件」において課税庁が主張していた「添削収支の差額負担」を交際費課税するというのは、少し違和感がありますよね(「行為課税」の観点など)。
 
 ただ、時代背景として「MR(医薬情報担当者)の過激な接待」という「社会的批判」があったのならば、上記の「証券会社の損失補填」の事例にように、「落とし所」として交際費課税で対応する―と課税庁が判断したのかもしれません(この「損失補填」の課税の発想も、今から考えると違和感を覚えますが…)。
 
 それでも税法本来の有り様からは、「課税要件」から考える―というものに立ち戻ってくれたとは、インパクトが大きいと思いますが、やはり、そもそもの「課税の趣旨」が現代においては、古臭いものになっていると言えると思います(これも「拡大解釈」の素地となりうる)。
 
 近年は、「交際費」の他にも、「使途秘匿金課税」や「不正行為等に係る費用の損金不算入」などの制度も出来上がって、この分野での「交際費の隣接項目」との住み分けが少し進みましたが、この種の支出(特に不正行為支出)のグローバル化や多様化には、どうしても追いつけず、「後追い」傾向にならざるを得ません。
 
 「不正行為等に係る費用の損金不算入」の先行規定である「罰金等の損金不算入」時代には、大和銀行NY支店巨額損失事件(1995年)が起こるまでは、「罰金等」は「日本国の法令による罰金等」が想定されていたので、「外国政府の罰金等」ましてや、日本には存在しないアメリカ司法制度における「司法取引」に関連した支出の取扱いはハッキリしていませんでした(その後改正)。
 
 また「不正行為等に係る費用の損金不算入」時代になっても、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律による課徴金」も日本の公正取引委員会のみ意識していたものであったのですが、日本の電機メーカーが、EUの公正競争当局の課徴金が課される段階になって、初めて「外国政府及び国際機関」の「課徴金」も含めることとなった―という状況です(H21改正)
 
 条文の曖昧なところを「不確定概念」と批判するのは簡単ですが、「限定列挙」的に書けば上記のような「後追い」になるわけで、立法・執行サイドなかなか大変だとは思います。
 
関連記事

テーマ : 会計・税務 / 税理士
ジャンル : ビジネス

2013-05-01 : 交際費 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

Pagetop
« next  ホーム  prev »
書籍・中古本購入サイト
Pagetop

プロフィール

kiyusama31

Author:kiyusama31
男性/神奈川県/乙女座/AB型

 ご訪問、ありがとうございます。
 税務・会計関係の『積読本』の山を崩したいと、日々研鑽中です。「書評」に至らぬ「感想文」レベルですが、長文(5,000字目途?)の記事を掲載していこうかと思っております。

※H25.9 税理士開業致しました!
飯田真之税理士事務所
http://iida-cpta.com/

応援よろしくお願い致します!


こちらはサイト用拍手です。
励みになります!
web拍手 by FC2

FC2カウンター

PR 中古本購入サイト他

カレンダー

01 | 2020/02 | 03
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ファイナンス
6位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
経理・会計
4位
アクセスランキングを見る>>

人気ページランキング

ミニ本棚(ブクログHPに飛びます)

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR