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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

【第57回記事の追加情報】 経過措置と「従前の例による」~荒井勇著 「税法解釈の常識」

税法解釈の常識 〈税法条文の読み方教室〉
 荒井勇著、税務研究会出版局、昭和50年
税法解釈の常識―税法条文の読み方教室税法解釈の常識―税法条文の読み方教室
(1975/09)
荒井 勇

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[購入動機] 駆け出しの時に買ったような…(当時は1,000円でした)。
[コメント] 対談の体裁で読みやすい入門書。私の購入当時(H12の28刷)でも、大変なロングセラーでした(「週刊税務通信」連載)。

※ 現在在庫はなし。中古品ですと、なんと4,000円~10,000円(2013/5 アマゾン)します。
【今回の記事の目次】
1. 改正法附則の「従前の例とする」~荒井勇著 「税法解釈の常識」
2. 「従前の例による」と「なおその効力を有する」/「例による」と「例になる」
~伊藤義一著「税法の読み方 判例の見方」
3. 感想等



1. 改正法附則の「従前の例とする」~荒井勇著 「税法解釈の常識」


 「第57回 交際費総点検!(1) H25税制改正(限度額UPと10%措置廃止)で350億円規模(平年度)の減税!?」の記事内で平成25年税制改正の「改正法附則」を取り上げました。この「従前の例とする」という税法上の「慣用語」について、荒井勇先生の「税法解釈の常識―税法条文の読み方教室」で取り上げていた箇所があるので、ご紹介したいと思います。
【引用】 荒井著 pp125~127
8 「従前の例による」
A 
次は「従前の例による」からお願い致します。

講師 これは、法令の改正や廃止が行われた場合経過規定としてよく用いられます。
 その場合、改廃された部分の規定は形式的にはなくなりますが、その改廃直前における規定の実体内容、すなわち改廃直前の関係法令の状態従前の例であって、この状態に固定された従前の法令の規定がその改廃後も、改廃前と同様にあてはめて適用されるという意味です。

B それは、前回説明のありました「例による」の一つの特別な使い方ですね。

講師 そのように見ることもできます。
 「例による」は、その制度全体、これについて規定する法律のみならず下位の命令を含めて準用するということでしたが、「従前の例による」という場合は、失効前の当該法令及びこれに基づく命令を含めて、そのまま従来と同様に適用されることになります。

A 法令を廃止してなおその旧法令が実質的に適用になるということは、どのような関係からでしょうか。

講師 たとえば、昭和54年4月に所得税法の改正法が施行され、改正後の所得税法は同年分以後の所得税について適用されるとします。

 そうすると、所得税法の改正された規定は、昭和50年分以後の所得税について適用される規定となり、昭和49年分以前の所得税については期限後申告や修正申告をしたり、更正決定等をする場合に、適用すべきであった所得税法は一部改正をした結果、形式的にはなくなってしまいます。

 しかし、昭和49年分以前の所得税についてまともに申告納税をした多くの納税者がいるので、まだ適正な申告納税を完了していない者のために、昭和49年以前の所得税法を実質的に生かしておく必要があり、そのための技術として「なお従前の例による」が用いられます

B 罰則の経過措置としても、「なお従前の例による」ということばがよくつかわれますね。

講師 そのとおりです。税制改正の附則には、ほとんど洩れなく経過規定としてこの慣用語が用いられています。

 「はしがき」を読むとAさんは「聴講生である入門者」、Bさんは「若干の実務経験者」という位置づけで、「税法条文の読み方教室」で講師の方と対話するという形式のようです(p3)

 この本は私が税法の試験勉強を始めたぐらいの頃に購入したと思います。このような先生の工夫もあって、「読み物」として非常にわかりやすかったこと記憶しています。




2. 「従前の例による」と「なおその効力を有する」/「例による」と「例になる」
~伊藤義一著「税法の読み方 判例の見方」

 上記の荒井先生の書籍は現在では手に入りづらいが、一般書店で手に取りやすい「税法の読み方」の本としては、伊藤義一先生の「税法の読み方―判例の見方」(TKC出版 2009年)あたりですかね。こちらの本では、「従前の例による」と「なおその効力を有する」との異同点に絡めて説明されています。
【引用】 伊藤著 p162
「従前の例による」と「なおその効力を有する」
 この両者は、改正法附則でよく用いられる。「従前の例による」は、法令の改廃により形式的になくなった規定について、その改廃直前の状態でその法令を固定し、一定の場合について改廃前と同様に適用するという趣旨である。法律のみならず、命令を含めた制度全体を適用する。

 これに対して、「なおその効力を有する」は、そこで引用された条文のみが改廃後も効力を有するという趣旨であり、また、その引用されている条文自体を改正して適用されることもできるという点で前者と異なる。

 荒井先生の本でも、伊藤先生の本でも「制度全体」云々という記載があります。どういうことでしょうか。

 伊藤先生の書籍では、「例による」「例とする」の異同点を指摘する中で、次のように解説されています。
【引用】 伊藤著 pp154~155
「例による」と「例とする」
(1)「例による」
 「例による」は、ある事項に関する法令上の制度を他の事項について包括的に借用しようとする場合に用いられる。前述の「準用する」がある事項に関する個々の規定を借用するのに対し、「例による」は一つの制度全体として借用する点で違いがある。

 例えば、「行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による」(行政事件訴訟法7条)の如きがある。これは、行政事件訴訟に関しては、行政事件訴訟法に特別の規定があればそれによるが、特別の規定がない事項に関しては民事訴訟法等の民事訴訟に関する法律を包括的に準用するという趣旨である。

 「例による」の変形として、「従前の例による」があるが、これについてはp162(※管理者注 前述)を参照されたい。

(2)「例とする」
 「例とする」「例による」と全く意味が異なり、通常はそのように取り扱うべきであるが、場合によってはそのような取扱いによらなくてもよいという趣旨である。したがって、理的な理由があれば例外も許されるのである。「するものとする」(144頁)という表現よりも、さらに義務としての拘束力が弱い。

 
「例による」=包括的借用 対 「準ずる」=個別規定借用 という「下敷き」があったということですね。一方で、「例による」とう語は、「借用」の意識がなく用いられる―ということのようですね。




3. 感想等

 最近、交際費改正の記事へのアクセスが多かったのですが、「アクセスした方が本当に調べたかったのは、『改正附則のの読み方』なのかな…?」と思い、フォロー記事を上げてみました。
※ そうでなかったら、全くの勘違いです。要らぬことをして、申し訳ございません<(_ _)>。

 しかし、荒井先生の本は、私1,000円で購入(H12の28刷)したのですが、今やアマゾンで4,000円~10,000円です(2013/5現在)。「親しみやすい本」として身近な存在であった「この本」が、良くも悪くも「このような扱い」となるとは…隔世の感を感じます。

 価格が高い云々というより、復刻してもらいた本の一つです。今読んでも、大学生とか、税法入門者にはうってつけの本だと思います。 もともと荒井先生も「身近な本」として用いられるように書かれたと思うのですが…。

 もともと「週刊税務通信」で連載(全15回)していたものに、加筆して単行本の形式で発表したもののようです。
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2013-05-18 : 交際費 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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