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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第7回 営業権・のれん考(7) 評基通の営業権は何故10年か? 等

「M&Aと営業権(のれん)の税務」
 細川建著、税務研究会出版局、平成12年
M&Aと営業権(のれん)の税務M&Aと営業権(のれん)の税務
(2000/11)
細川 健

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[購入動機] 書名。当時は営業権関係でまとまったものが少なかった。
[コメント] 現在は改正が入りリファレンスとしては使えませんが、非常にお世話になった本です。
【今回の記事の目次】
 1. 評基通165の営業権の持続年数は、何故10年なのか?
 2. 総資産価額に乗ずる利率の変遷  ~ 本書による平成11年までの8%の検証
 3. 感想等

 こちらの書籍が発売された時期(H12)には、一般書店は営業権関連のよくまとまったものというのは、あまり見かけませんでした。そのため、本当にお世話になった書籍であります。今読み返してみると、H13組織再編成税制導入により廃止された被合併法人の清算所得課税(旧法112)、特定現物出資の圧縮記帳(旧法51)など、かなり懐かしい規定もあって、現在ではリファレンスとしては用いることはできませんが、詳細な解説もあり、制度の変遷を辿るのにも良い内容の本だと思います。
 
1. 評基通165の営業権の持続年数は、何故10年なのか?
 財産評価基本通達165の営業権の価額の算式は下記の通りです。
平均利益金額×0.5-標準企業者報酬額-総資産価額 × 0.05 =超過利益金額

超過利益金額×営業権の持続年数(原則として10年)に応ずる基準年利率による複利年金現価率
=営業権の価額
 ここで、営業権の持続年数を10年としている根拠は何なのでしょうか。そのヒントが本書で記されています。 答えは、「昭和42年までの営業権は税務上10年償却であった」ということらしいです。

【経緯】
法人税法上の営業権の償却方法 
[昭和42年5月前]10年→[平成10年3月前]任意償却→[平成10年4月以後]5年定額法


 昭和42年以前までの営業権は旧商法上5年、法人税法上10年と取扱いが一致しなかった状態であったようです。ここで本書では法改正が行われる昭和42年当時の大蔵省の担当者の説明を引用しています(p48)。
 「従来、無形減価償却資産として10年の耐用年数で償却することとされていました営業権の償却方法について、税法と商法との取扱いを一致させ、できるだけ企業利益と課税所得との差を縮小させようとの見地から、税法上の営業権の償却方法を商法第285条ノ7の『のれん』の償却方法と一致させることとし、『営業権の取得価額(略)を各事業年度の償却限度額として償却する方法』、換言すれば、期末の簿価そのものを償却限度額とする方法が営業権の償却方法として定められました。
 なお、これは、商法では、『取得の後5年以内に毎決算期において均等額以上の償却を為すことを要す。』と定められていますので、これと取扱いを合わせたものですが、税法上では、法人が5年以内に償却をしなかったからといって5年経過時に認定損をたてるようなことはいたしません。また、5年経過後は償却を認めないということにもしておりません。要するに税法上は自由償却を認めることとしたのであります。
 ところで、このように思い切った営業権の償却方法に関する改正は昭和42年6月1日以後に開始する事業年度から適用することとされています。したがって、これまでに取得した営業権についても本年6月1日以後に開始する事業年度からは自由償却が認められます。」(p48-49)
 その後、平成10年改正により営業権は5年定額法による償却に改正となりますが、その改正経緯についても、「営業権(のれん)の任意償却が利益調整に利用されているという認識に基づいた保守的な職業会計人グループの提言が実現したものと言われていますが、営業権(のれん)の償却方法の改正は営業権(のれん)の償却による利益調整に一定の歯止めをかけたものと考えます」(p49)との認識を示しています。

 これを受け本書では下記のような記載をしています。
 よって、日本の課税当局は営業権(のれん)の償却期間を基本的には10年と考えており、商法との整合性を保つため昭和42年度の税制改正により任意償却を実施し、平成10年(1998年)の税制改正により5年間の定額法により均等償却を導入したと考えられます。(p49)
 つまり、旧商法との調整や任意償却による利益調整(租税回避)の防止という趣旨で、営業権の償却については数度の改正を経てきたが、根本的には償却は10年と考えている―ということなのでしょうか…。著者の細川先生は国税OBですので、このあたりは、国税の考え方なのかな―という気もします。 今の時代のスピード感を考えると現状でも10年というのは、個人的には少し違和感がありますね。

【追記】税理士法人トーマツ発行のH20の財産評価基本通達改正時のビジネスレターによれば、平成20年改正においても、現在の社会情勢を鑑み10年を短縮すべき―という公募意見(パブリックコメント)があったようです。これに対して、国税庁では財産評価基本通達の適用上、自己使用の特許権、商標権等を営業権の価額に含めて評価することとなっているため、これらの存続期間は、特許法等によりいずれも10年以上であることから、営業権の存続期間は現行のまま10年とした―と回答しています。

参考 財産評価基本通達における営業権の評価の改正  税理士法人トーマツ
http://www.tohmatsu.com/assets/Dcom-Japan/Local%20Assets/Documents/knowledge/ek-pdf/2008ek/ek-2008-jun/jp_kaikeijyoho0806_5_20090701.pdf

参考 「財産評価基本通達」の一部改正(案)に対する意見募集の結果について
 案件番号 410200003 結果の公示日 2008年3月31日
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=410200003&Mode=2


2. 総資産価額に乗ずる利率の変遷  
~ 本書による平成11年までの8%の検証
 上記1の営業権の価額の算式中の総資産価額に乗ずる利率の変遷も見てみましょう。

【総資産価額に乗ずる利率の変遷】
  [昭39.4~平11.8] 制度導入 8%
→ [平11.9~平15] 評基通4-4導入で基準年利率(年一律)
  (H11.12)4.5% (H13)3.5% (H14.15)3.0%
→ [平16~平19] 基準年利率改正のより個別通達による各年月別の利率
→ [平20.1~現在] 5%


 実務上、この利率の改正に右往左往された方もいらしゃるのではないでしょうか。本書はH12に書かれたものですので、まず昭和39年の通達制定時からの8%についての検討を行い、当時の現況に見合わないことを指摘した上で、10年物国債の利子率(応募者利回り)が投下資本の指標として定着していることを鑑み、1995年を基準年とした過去5年及び過去10年の統計値の平均値である4~5%を、標準利益金額の算出のための利率として8%に代えることを提案しています(p63)。
 
 興味深かったのは、8%の根拠を財産評価基本通達165制定当時の「企業収益率」の統計値から推定したものを示しているところでしょうか。本書での検討テーブルは下記の通りです(p64)。
第7回 image1

 上記の検証より、S39年導入時の8%根拠を推定するとともに、H11で同じ基準で検討した数値と10年物国債の利子率を示し、8%のものよりは相当であること(実際の改正後は4.5%)を示したものと思われます。

3. 感想等  
 まず、総資産価額に乗ずる利子率については、H11改正まで8%であったことを知らなかったので、驚きでした。ただ検証で用いた数値は、脚注のコメント等を見ると上場会社のものを用いていた様です。現状で財産評価基本通達を用いる場面で営業権を計上すると想定されるのは、「取引相場のない株式」の純資産価額の計算上に加味するケースです。純資産価額方式が、もともとは「小会社」の評価方法とされているの対し、その標本指標として大規模の会社のものを用いるのに少し違和感を感じました。ただ、S39年の導入当時は、「取引相場のない株式」の評価の場面ばかりでなく、一般的に利用されることを想定していたのかもしれません。
 営業権の持続期間の10年ということについても、前から何故とは思っておりましたが、こういう事情があったのですね。それでも、何故S42以前がそもそも10年であったのか、その根拠が現在でも活きる状況なのか―というところが気になりますね【上記追記済】。

 次回は、本書発表後の営業権の総資産価額に乗ずる利子率の変遷と自分なりの検証(稚拙なものです…)を示したいと思っております。



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2012-10-29 : 営業権 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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