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元会計事務所員。税務・会計関係の『積読本』消化をめざして立ち上げた感想文ブログです。

第71回 交際費総点検!(15) フリンジ・ベネフィット課税と交際費①~代替課税論・個人的費用との隣接性

問答式 交際費・リベート等の税務と会計
 森田政夫、清文社、平成18年
問答式 交際費・リベート等の税務と会計―平成18年3月改訂問答式 交際費・リベート等の税務と会計―平成18年3月改訂
(2006/03)
森田 政夫

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[購入動機] 書名・著者
[コメント] 「問答式」の体裁ですが、非常に考えさせられる本です。
※ H22版で「
問答式 交際費・寄附金等の税務と会計〈平成22年版〉」が出ています。

【参考】
武田昌輔著 「本質究明版 即答交際費課税―理論と実務」、財経詳報社、H16
日本税理士連合会編、八ッ尾順一著、「法人税実務問題シリーズ 交際費 [第3版]」、中央経済社、H10  
【今回の記事の目次】
1. 問題解決のための「着想」を得たいときの「質疑応答集」~交際費関係で2冊!
2. 森田先生と武田先生の「交際費課税」観
3. 代替課税論・個人的費用との隣接性に関して~フリンジ・ベネフィット課税の問題
4. 感想等



1. 問題解決のための「着想」を得たいときの「質疑応答集」~交際費関係で2冊!

 租税実務では、「事例検索」のために「質疑応答集」に当たる機会が多いと思います。ただ、その「使い道」というのは、人それぞれでしょう。「答えだけが欲しい」という方もいれば、問題解決のための発想を得るため、何かヒントを得たい」という方もいます。要求する「レベル」や「内容」が少し違うわけです。
 
 前者の方が欲しいものは、「FAQ」。「法律の解釈」として、想定される「根拠条文」一般の例を引いた「当てはめ」事例が、「ペラッ」とあれば良い。あるいは、「ビジネス文書」として、「PREP」(Point-Reason-Example-Point)のようにまとめられた、要約的・説明的な文章で、ごく端的なものが欲しい。これが一般的な「問答集」の書きぶりでありますし、国税庁HPの「質疑応答事例」や国税職員が執筆に関与している「質疑応答集」の使い道でもあります。
                                                                      
 後者の方は、問題となっている案件に対して、ある程度「仮説」みたいなものが出来上がっている段階で、「質疑応答集」に当たります。この場合、「仮説」を補強するための「類似事例」を集めているかもしれませんし、「仮説」に落とし穴がないか「反証事例」を集めているかもしれません。どちらの読者も、そこに「切り口」が違う論証や、「示唆」の多い文章を期待します。権威のある先生が著した「質疑応答集」を手に取るのは、このようなケースです。「ヒント」「考え方」が欲しい時の助けになるものです。
 
 「交際費」のカテゴリーで後者の役割を担う本として、個人的に推すのは、森田政夫先生の「問答式 交際費・リベート等の税務と会計―平成18年3月改訂」(清文社)や、武田昌輔先生の「本質究明版 即答交際費課税―理論と実務」(財経詳報社、H16)でしょうかね。

 どちらも御著名な先生の書籍ですので、私が申し上げることは何もございません。ただ若輩者から見ても「これは、かなりマニアックでは…」というものが多いです。レアな例を出して「適用の限界」が見たいのか、はたまた「本質」を炙り出したいのか―法律関係の本の特徴かもしれませんね。よく言われるように、「答え方」が上手い方は、「問い」の立て方が上手いというのを実感致します(単なる「FAQ」の事例集積本とは発想が異なり、「理論」志向であるということです)。このタイプの「Q&A」の本を見てみれば、目次で「Q」を読んだだけでも欲しくなってしまうことがあります。
 
 
 
2. 森田先生と武田先生の「交際費課税」観

 この二冊は「問答集」でありながら、ご自身の「交際費」観を、どちらも冒頭部分の頁を割いて載せていています。そこには、現行交際費制度について、「企業の担税力を超える税負担を生じるリスクがある」(森田先生)、「利益ゼロの法人に課税することになり、資本課税と変わりがない」(武田先生)と、どこか「底通」する部分があるようなことが書かれているのが興味深いです。
 
 まず、森田先生の本から取り上げてみますと、次のような感じです。
 ※森田先生の書籍の引用頁は、私の手許にあるH18年3月改訂版のものです。
 
【引用】 森田著「交際費・リベート等の税務と会計」 p6
● 現行の交際費課税制度の問題点(p6)

(ポイント)
 企業活動のために必要な交際費まで全額損金不算入とする現行制度は、法人の担税力を超える課税を生じさせるおそれがある
 寄附金のように、「必要経費性が疑わしいもの」、役員給与のように「利益配分的な性格を有するもの」に対して恒常的な制度対応を設けているものと異なり、交際費は、社会批判を背景として、冗費・濫費を抑制するための一時的な特例(租税措置)であるべきものです。そのため、事業活動との関連を超える交際費の損金不算入を問題とするならば、原則:全額不算入とする制度は、「企業に担税力を超える税負担を生じせしめることになります」(p6)と指摘しています。
 
【引用】 森田著「交際費・リベート等の税務と会計」 p4
● 現行の交際費課税制度は課税ベース拡大の一環となっているのではないか(p4)

(ポイント)
 現行の交際費課税制度は課税ベース拡大による税収の増加が主目的になっており、交際費課税の本来の目的を超えていると思われる。
   これは執筆当時の状況(H10年代半ば)を反映したものですが、改正の積上げによって、制度自体がその創設時の目的から乖離している―という問題提起です。交際費課税の制度の目的を「冗費を認めない」とするにしても、全額を冗費と認定することが技術的にできない以上は、原則全額不算入の現行制度はやりすぎであるという立場です。(寄附金と同様に)実務的に冗費かどうか判断が困難であるとしても、一種の外形基準(売上高・資本金等に応じた一定の割合等)で対応すべき性質の話ではないかとも指摘しています(p5)。交際費が法人にとって管理可能なものであることや、課税側・納税側双方に解釈等の長年の習熟がある分だけ、安易な増税策が取られやすかった―としています(p5)。

【引用】 森田著「交際費・リベート等の税務と会計」 p3
● 交際費の代替課税について(p3)
(ポイント)
 代替課税交際費課税の副次的な目的だから、代替課税の有無によって交際費に該当するかどうかを判断することはできない。
 代替課税の考え方は、特に昭和45年通達改正で創設されたもの―交際費と売上割戻し、販売奨励金、取引開始に当たっての金銭・事業用資産の交付等の区分―について、濃厚に反映されていますが、これは本来の交際費課税の目的に適ったものではなく、あくまで副次的なものとしています(p4)。また代替課税自体についても、「接待、供応等によって経済的な利益を受ける者の租税負担を支出側に転嫁するもので、正当な課税方法とはいえない」(p5)、「接待、供応等によって経済的利益を受ける個人に対する課税が甘くなっているのではないか」(p7)と述べています。
 
 
 一方、武田先生の書籍では次のように述べています。
 
即答交際費課税―理論と実務即答交際費課税―理論と実務
(2004/11)
武田 昌輔

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【引用】 武田著 「本質究明版 即答 交際費課税」 pp18~19
5 交際費課税の特殊性
 交際費等は、他の費用項目とは異なっている点が認められる。すなわち、接待、供応等の費用の支出については、第一に経営者の判断にある程度まかされていることである。この点では、寄附金に類似している。第二は接待、供応等は、個人(会社の役員等)的費用ともみられる項目が存することである。もちろん、完全な個人的費用は本来経費とならないことはいうまでもないところであるが、これらの接待、供応のなかには個人的費用が含まれているということである。
 (中略)
 交際費等は、このような複雑な性格を有しているところから、課税上何らかの損金性を否認することはやむをえない措置であるといえる。
 一般に交際費といっても、きわめて広範な範囲を扱います。その主たるものとしては、「①食事費、②スポーツ等への招待、③ギフトであろう」として、「他の隣接費用と密接な関係を有することとなる」として次のような隣接費用との関連を上げています。
 
①個人的費用との関連、②福利厚生費との関連、③寄附金との関連、④広告宣伝費との関連、⑤ギフト(贈与)との関連、⑥「相手方が所得のなかに含めていても、交際費等に当たることとなる費用」(例:談合金、総会屋に対する利益供与、損失補てん金等である)
 
 ⑥については、本来、「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」とは異なるものとし、アメリカ税法では原則としてその受け入れた納税者の所得とされるものは、交際費等から除外することとされていることからも、「わが国特有」の論点としています(p20)。
 
 また「交際費課税が、このなかに個人的費用が含まれていることによるものであるとするならば(いわゆる代替課税)、その支出された金額が納税者の課税所得とされるものは、交際費等から除外すべきものと考える」とし、「以上のようにわか国の交際費課税は、租税特別措置法において定められているが、昭和29年以来50年継続されてきており、これを純化した形で取り入れて本法たる法人税法において規定することとすべきである」(p21)と述べています(「第60回」の内容とは違った印象ですね…)。
 
6 交際費等の規定の解釈の基本的姿勢 pp22~23
[1] 交際費は、本来は法人の費用であるから課税所得の計算上は、これを損金不算入とすることは適当でないと考える。このような費用を損金不算入とすると、結局は、資本に対して課税することとなるからである。このことは、例えば、利益がゼロである会社が1,000万円の交際費の支出があったとすれば、その1,000万円に対して法人税が課されることになり、資本に対して課税されたことになるからである。

 もちろん、交際費課税は、すでに交際費課税の趣旨並びに沿革においてみたように、政策目的を有するものであるから、この制度そのものについては、その政策の合理性あるいは合目的性の問題である。

 そして、もし、この交際費課税が税法における資本蓄積のための優遇税制に対する負の税制であるとすれば、現在のように、いわゆる企業優遇税制が縮減合理化されている状況の下では、交際費課税の縮減について検討すべきであることになろう。

 この点はともかくとして、交際費課税は、その交際費等といわれているもののなかに個人的費用が存することに対するものであるということを前提とすれば、交際費等の全額課税(一定規模以下の法人には、定額控除はあるが)することは、いかにも不合理であるように思えてならない。この点は再検討すべきである。


[2]
 次に、交際費課税に関する規定の解釈適用についての基本的姿勢についてである。
 これは単に交際費課税に限られることなく、税法の規定についての全般的な解釈適用についての問題であるが、私は、課税するについては、できるだけ消極的な態度によることが妥当なものであると考えられている。基本的に私有財産制度の認められているわが国においては、財産権の侵害についてはできるだけ慎重であるべきだと考えるからである。もちろん、誤解をさけるために断わっておくが、なんでも課税しない方向でよいとか、疑わしきは課税しない、ということを述べているわけではない。要するに、十分な確信がないときは、課税しないという態度がのぞましいと考えるのである。

[3]
 特に上述したように、交際費課税は、資本に対する課税であって、本来の所得課税の立場からみれば、妥当でないといえる。また、同じく、罰金等の損金不算入と異なり、いわゆる豪華な接待、供応を別にすれば、これを損金に算入しないことの特段の社会的要請が強いともいえないものである(全く個人的なあるいは恣意に基づくものは別)。

 この点からは、法人の支出した費用を、できるだけ「交際費等」に取り込むという態度は、妥当なものではないと考える。

 (中略)

 要するに、交際費課税制度は、自助努力の促進策であって、悪を懲らしめるという制度ではない点に留意すべきである。
 

3. 代替課税論・個人的費用との隣接性に関して~フリンジ・ベネフィット課税の問題
 森田先生、武田先生の両書籍から引用したものは、「代替課税」論や「個人的費用との隣接性」を示す、「交際費」のナイーブなところが含まれています。この点については、今日的な課題として「フリンジ・ベネフィット」に対する課税問題とも関連します。

 八ッ尾順一先生の「交際費(第3版)」(中央経済社)では次のように記されています。

交際費―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ)交際費―税務処理・申告・調査対策 (法人税実務問題シリーズ)
(2007/11)
八ッ尾 順一

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※写真は第5版です。

【引用】 pp5

フリンジ・ベネフィット

1 フリンジ・ベネフィットの性格

 最近では、交際費との関係で「フリンジ・ベネフィット」に対する課税についてしばしば言及されるようになった。

 このフリンジ・ベネフィットは、経済発展に伴って、労働者側の環境改善という名目のもので給付されることが次第に多くなっている。

 

 そして、大企業に属する者ほどこの恩恵に浴することが多く、また、企業内での地位の高い者ほどその利益を享受しているという。個人レベルでは考えられないような高級料亭や会員制レジャークラブ、そして相撲の升席、歌舞伎のチケット、グリーン車席、社用車の使用、豪華な社宅またはリゾートの保養所などがその例としてあげられる。

                 

 このような「現金給付以外の付加給付」の企業間格差については、賃金格差よりも大きいといわれている

 

 「新総合経済政策」で、従業員のリクリェーション旅行の非課税が政策減税として取り上げられた。こでまで「現地34日」となっていた社員旅行の非課税枠の日程基準が1日延長となり、「4泊5日」となった(管理者註)これにより、ハワイやアメリカ西海岸、オーストラリアまで旅行先を広げることが可能となってといわれているが、このような本来「個人的なたのしみ」であるものについてまで、社会の習慣とはいえ、なにゆえに「社業」とみて、それを非課税としているのであるか、という批判がある

 

 個人生活が企業社会の中に入りこんだ日本特有の現象であろうが、このような考え方がある限り、フリンジ・ベネフィットによって生じる企業の支出の曖昧さは消えることはない思われる。

 

 サラリーマンの場合、給与ばかりでなく、交際費や交際費以外の経済的利益を得ているのであるが、この恩恵が中小企業よりも大企業のほうが大きいことは次頁(当ブログでは下図)の図1に示すとおりである。

 71-image1.jpg


 そして、給与に関してはサラリーマン個人が課税を受けているが、それ以外の交際費や経済的利益についてはなんら課税されていないのである。

 

 交際費課税についても検討しなければならないが、フリンジ・ベネフィットに対しても交際費と同様に議論しなければならない。

 

 「フリンジ・ベネフィットに対して、その課税を行う場合、享受者側に行うという方式(労働者課税)と、給付者に対してなす方式(企業課税)に分けることができる。フリンジ・ベネフィットについては、その利益を享受する者のそれぞれの主観的な価値がまちまちであることから、享受者に課税する場合、その評価基準がきわめて困難であり、これに対して、法人(雇用者)を納税義務者として、交際費課税と同様な課税方式を採れば、フリンジ・ベネフィットを個別的に捕捉して評価する必要はなく、法人(雇用者)が給付するすべてのフリンジ・ベネフィットの給付自体を抑制し、課税上の不公平の拡大を防止することが容易にできるであろう」(p11)と指摘しています。

 

(管理者註) 「新総合経済対策」とは、バブル崩壊後の内需復興・景気回復(主に公共事業の拡大)対策として平成54月に実施された施策であると思われます。これを受けて平成55月に個別通達が改正(平成5531日課法8-1(例規)、課所4-5により改正)されました。

 

【参考】

所得税基本通達3630(課税しない経済的利益・・・・・使用者が負担するレクリエーションの費用)の運用について(法令解釈通達)



4. 感想等

 どちらも先生も現行の交際費制度には、「言いたいことがある!」という感じでしょうかね。ここまで、「担税力を超えた課税がなされうる」「資本課税と変わらない部分がある」―というような交際費課税の釈然としない部分、特に代替課税論・個人的費用との隣接性(事業関連性)・フリンジ・ベネフィットの議論の中に、それが見られるのでは―というところを記してきました。次回はこの続きを記したいと思います。
 
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